坂本龍一がライゾマとコラボでピアノコンサート、刻々と変化する風景の中で代表曲を次々に

15

1074

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 85 436
  • 553 シェア

坂本龍一が無観客のオンラインピアノコンサート「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」を昨日12月12日に開催。ライブ演出をRhizomatiks、撮影監督をZakkubalanが担当し、都内のスタジオから生配信を行った。コンサートの模様はMUSIC/SLASHによって世界同時配信され、さらに最大96kHz/24bitのハイレゾ音質でストリーミングを行う動画配信サービス・MUSIC/SLASH Premiumがこの公演で国内ローンチとなった。

「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」の配信画面。

「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」の配信画面。

大きなサイズで見る(全14件)

開演時間になるとまず、Rhizomatiksの真鍋大度への、新型コロナウイルス感染拡大防止のための自粛期間についてのインタビューが上映された。コロナ禍になってすべてバーチャルになり、物質性がない状態がずっと続いたと振り返る真鍋。彼はこれから始まるコンサートについて「映像越しで観てもらうので、肉眼では観ることができない配信ならではのことができたら」と意欲を示した。

真鍋はその後、ボストン・ダイナミクス社の4足歩行ロボット「SPOT」の上に、自分を映したタブレットを設置。そのロボットは歩いて部屋を出て、アメリカ・ニューヨークから東京に到着して2週間の隔離中である坂本のもとに向かう。ロボットが坂本の部屋に到着すると、タブレットの画面を介して坂本と真鍋のリモート対談がスタート。坂本はコロナ禍のニューヨークの現状を説明しつつ「先進国で生の音楽が一定期間消えてしまった。これだけ長期にわたって生の音楽がないのはルネサンス以来初めて初めてだと思う。それくらい大ごとなので、僕たちは音楽の楽しみ方を考え直さなきゃけない」「生の音楽とデジタル情報としての音楽は違うけど、生が本物でデジタルは偽物だとは簡単に言えない。どれが正解なのかという回答は僕の中にもないけど、隣でピアノを弾いているような身体性はデジタルでも感じられるのかもしれない。せっかくこういう貴重な機会を与えられたので、エンタテインメントのあり方をもう一度考えたい」と、今の自分がするべきことについて述べた。

「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」の配信画面。

「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」の配信画面。[拡大]

約30分におよんだインタビューパートが終わって次に画面に映ったのは、無人のコンサートホールでピアノに向かって座る坂本の姿。彼はカメラの向こうの視聴者に向けて「いつもは即興的な部分も多いですが、今日は最近のコンサートよりも、よく知られている曲を多く演奏します」と説明し、誰もいない客席を背景に、静かにゆっくりと「andata」を弾き始めた。しかし曲が終わると、彼の周りに見えていた広いコンサートホールが消失し、陽が差し込む大きな縦長の窓がある、くすんだ灰色の壁の部屋に変わった。坂本とピアノ以外のそこにあるすべてのものは、Rhizomatiksがリアルタイムで合成したCGだったのだ。

「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」の配信画面。

「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」の配信画面。[拡大]

坂本が物悲しい音色とともに「美貌の青空」を奏でると、曲中でさらに場面が変わって、水平線の見える波打ち際に。続けて「Aqua」を弾くと砂浜に雨が降り始めた。その雨は曲の終盤に空中で制止し、坂本は浮かぶ水滴に囲まれながらピアノを弾き続けた。その後も坂本は、長いキャリアの中で発表してきた代表曲を出し惜しみなく披露する、オールタイムベストとも言えるようなセットリストでコンサートを進行。1音1音の響きをしっかりと味わうように、抑制したスローテンポな演奏を繰り広げた。

「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」の配信画面。

「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」の配信画面。[拡大]

曲に合わせて光るランプシェードに囲まれながら真っ暗な空間で「Perspective」を弾いた坂本は、続く「energy flow」では車や人々がせわしなく行き交う都会のビル街に登場。この曲が使われた21年前の「リゲインEB錠」のテレビCMを思わせる演出の中、ピアノを弾く坂本の指から光の粒が発生してゆらゆらと空に立ち上っていった。

「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」の配信画面。

「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」の配信画面。[拡大]

ともにベルナルド・ベルトルッチ監督映画の主題歌である「The Sheltering Sky」「The Last Emperor」では、荒涼とした草地で坂本は朽ちた建造物を背にピアノを演奏。映画「戦場のメリークリスマス」サントラの収録曲で、これまであまりライブで演奏されていない「種子と種を蒔く人」が始まると、場面は夜の森の中のような場所に切り替わった。そしてその流れから坂本は「Merry Christmas Mr. Lawrence」を力強く弾き、コンサートはクライマックスに。さらに、まだ音源化されていない無印良品のCMソング「MUJI2020」を初めて演奏し、曲が終わると坂本は髪を掻き上げながら席を立った。

「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」の配信画面。

「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」の配信画面。[拡大]

そして坂本は、割れた陶器の皿の破片をこすり合わせて音を鳴らしたり、チベット密教法具・ティンシャを叩いたり、ピアノの弦を直接触ってこすったりといった演奏を開始。それまでの即興性の低いライブとは打って変わっての前衛的なインプロビゼーションが、映像演出なしで繰り広げられた。この短めな即興演奏が終わると、無音のままスタッフロールが流れてコンサートは終幕。配信画面には坂本からの「May the silence be with you.」(沈黙があなたとともにありますように)というメッセージが表示された。

なお坂本は3月30日に、税込み22万円のボックスセット「2020S」を300点限定で発売。これは彼が2020年に制作・発表した楽曲を12inchアナログ5枚と7inchアナログ2枚にまとめたもので、坂本が絵付けした陶器の皿を割った音を使った新曲も収録される。また、その皿の断片は「陶片のオブジェ」としてボックスに同封される。

2020S

坂本龍一「2020S」

この記事の画像・動画(全14件)

「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 12122020」2020年12月12日 セットリスト

01. andata
02. 美貌の青空
03. Aqua
04. aubade
05. 青猫のトルソ
06. 水の中のバガテル
07. Before Long
08. Perspective
09. energy flow
10. The Sheltering Sky
11. The Last Emperor
12. 種子と種を蒔く人
13. Merry Christmas Mr.Lawrence
14. MUJI2020

全文を表示

読者の反応

玉置泰紀 エリアLOVE Walker総編集長 @tamatama2

【ライブレポート】坂本龍一がライゾマとコラボでピアノコンサート、刻々と変化する風景の中で代表曲を次々に(写真13枚) https://t.co/IIvy5Y39n1

コメントを読む(15件)

リンク

関連商品

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャの音楽ナタリー編集部が作成・配信しています。 坂本龍一 / 真鍋大度 の最新情報はリンク先をご覧ください。

音楽ナタリーでは国内アーティストを中心とした最新音楽ニュースを毎日配信!メジャーからインディーズまでリリース情報、ライブレポート、番組情報、コラムなど幅広い情報をお届けします。