高嶺のなでしこが社会科見学!「日本橋川に青空を」首都高速道路日本橋区間地下化事業を学ぶ

「日本橋川に青空を」──そんな合言葉とともに、首都高日本橋区間に地下ルートを整備し、高架橋を撤去する大規模なリニューアル工事が行われていることをご存じだろうか。1964年の東京オリンピック前に建設され、開通から60年以上が経過している日本橋川上空の首都高。この区間は、1日当たり約10万台以上の自動車が走行する過酷な使用状況にあるため、構造物の損傷が激しく、更新が必要となっている。

首都高速道路日本橋区間地下化事業は、そういった高齢化に対する抜本的な対策として現在実施されているが、周囲の景観や環境の改善も同時に実現する、“まちづくり”と一体となったプロジェクトでもある。長らく日本橋エリアを象徴してきた“高架橋がある風景”は、工事の完了が予定されている2040年頃には、青空が広がるまったく新しい街並みへと生まれ変わる予定だ。

しかしこの取り組みの意義や重要性についてはおろか、工事が行われていること自体も一般には広く認知されていない。そこで、特に若い世代への認知拡大を図るべく、“若者代表”として女性アイドルグループ・高嶺のなでしこから籾山ひめり、橋本桃呼、城月菜央のメンバー3名を招き、本工事の背景や現状について学ぶ社会科見学ツアーを体験してもらった。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / はぎひさこ

社会科見学ツアー

1. なんで地下化するの? たかねこに基礎をレクチャー

首都高速道路株式会社のオフィスを訪れた高嶺のなでしこの籾山ひめり、橋本桃呼、城月菜央は、まず首都高の社員から首都高速道路日本橋区間地下化事業について座学形式でレクチャーを受けることに。慣れない体験にやや緊張の面持ちを浮かべる3人の前に現れたのは、この日彼女たちをアテンドする若手社員チームのリーダー的存在である島越貴之氏。にこやかに「肩肘張らずに楽しくやりましょう」と声をかけた島越氏は、さっそくプレゼンテーションスライドを大型モニタに表示させながら解説を始めた。

首都高速道路株式会社のオフィスを訪れた高嶺のなでしこの橋本桃呼、城月菜央、籾山ひめり。

首都高速道路株式会社のオフィスを訪れた高嶺のなでしこの橋本桃呼、城月菜央、籾山ひめり。

講義はまず「そもそも首都高とは?」という基礎知識の領域からスタート。1950年代に始まったモータリゼーションの急速な進展とそれに伴う交通渋滞に対応すべく、迅速な自動車専用道路の整備が求められたこと、スムーズな用地確保のために川や道路といった公共用地をベースにルートが形成されていったことなどが説明され、たかねこの3人は興味深そうに耳を傾ける。現在の首都高が「首都圏の大動脈」と呼ばれるほどに交通の要衝を担う重要な存在であることが、普段車を運転しない彼女たちもしっかりと理解できたようだ。

解説の合間には要所要所でクイズが出題され、「首都高における大型車両の交通量は一般道の何倍?」「首都高が管理する道路のうち、トンネルや高架などの構造物が占める割合は?」といった問題に対し、「3倍くらい?」「6割とか?」などと積極的に回答を試みる3人。彼女たちの前のめりな姿勢は、首都高の社員たちを漏れなく笑顔にした。ちなみに正解は前者が「約5倍」、後者が「約95%」。首都高はその大部分を構造物が占めており、それが日々酷使されているということだ。これまでも補強や修繕を繰り返してきたが、歴史を積み重ねてきたことで構造物や設備の高齢化が深刻化。抜本的な対策を講じるべき時期に差しかかっており、大規模なリニューアルプロジェクトが進行中なのだという。

首都高日本橋区間地下化事業と再開発地区。

首都高日本橋区間地下化事業と再開発地区。

日本橋区間の地下化事業もその一環。高架を撤去して地下トンネルを開通させることで、安全性や耐久性、維持管理性の向上が図られる。そしてそれは同時に、日本橋エリアの上空に青空を取り戻すことにもつながる。たかねこの3人は「同じ道路を作り直すよりも大変な作業になるけど、みんなが幸せになるためにがんばってらっしゃるんですね!」と感心しきりだ。

2. 日本橋川に青空を──工事後の風景をバーチャル体験

続いて3人は首都高製作のVRコンテンツを体験。VRヘッドセットを装着した状態で、日本橋周辺エリアを3Dグラフィックスで再現したソフトウェアを起動し、バーチャル日本橋へとダイブする。

仮想空間へ飛び込んだメンバーは、バーチャルな日本橋川をまたぐバーチャルな日本橋の上に立ち尽くしていた。この仮想空間では、現在の様子と工事完了後の様子を瞬時に切り替えて景観の違いを比較体験することができる。おもむろに社員がパソコンを操作すると、頭上を覆っていた首都高の高架橋が魔法のように消え去り、青い空と白い雲があらわに。3人は「お空になった! すごい!」と大興奮だ。

VR空間で工事完了後の日本橋の風景を眺める籾山ひめりと城月菜央。

VR空間で工事完了後の日本橋の風景を眺める籾山ひめりと城月菜央。

次にVRの視点は、日本橋川を見下ろせる上空へ。そこでは、空中にホバリングしているような状態で、眼下に位置する首都高および周辺の街並みを見渡すことができる。メンバーは足元を覗き込みながら「え、こわ! 下に何もない!」と騒ぎつつも、首都高の高架橋が姿を消したのちの滔々と流れる日本橋川の鳥瞰を満喫した。

さらに彼女たちは仮想空間の中で、日本橋川を航行する船のデッキへ移動。船は川をぐんぐん進んでいくが、頭上を蓋するように首都高の高架橋の橋桁が覆っており、水面にはそれを支えるいくつもの橋脚が設置されている。しかしワンクリックで首都高の高架橋が霧散すると、青空の広がる一望千里がお目見え。メンバーは思わず「わあ! きれいですね!」と感嘆の声を上げた。

VR空間で工事完了後の首都高日本橋区間を走行する橋本桃呼。

VR空間で工事完了後の首都高日本橋区間を走行する橋本桃呼。

最後に、工事完了後の首都高日本橋区間を車で走行する疑似体験も。ついついハンドルをエアーで握る動作をせずにいられない彼女たちは、約1.8kmの地下トンネルを軽やかに駆け抜ける。本工事によって日本橋地区がいかに新しい街に生まれ変わるのかを実感できた様子で、ヘッドセットを外しながら互いに顔を見合わせて「VR、楽しいね!」「工事が終わったあとの日本橋がイメージしやすい!」「地下化するとこんなに景観がよくなるんですね!」と顔をほころばせていた。

首都高日本橋区間地下化後のイメージ。(再開発の計画は現時点の情報を基に作成したイメージです)(提供:首都高速道路株式会社)
首都高日本橋区間地下化後のイメージ。(再開発の計画は現時点の情報を基に作成したイメージです)(提供:首都高速道路株式会社)

首都高日本橋区間地下化後のイメージ。(再開発の計画は現時点の情報を基に作成したイメージです)(提供:首都高速道路株式会社)

3. たかねこ、出航! 工事エリアを船上視察

続いて、たかねこの3人は日本橋のたもとにある船着場へ移動し、先ほどVRで仮想体験した日本橋川クルージングをリアルに体験する。首都高ロゴの刻まれたワークジャケットに身を包んだ3人がいそいそと船に乗り込み、先頭付近の一角に仲良く並んで着席すると、その前方にはガイド役を務める首都高社員、大嶋健太氏と杉原航平氏がスタンバイ。2人は事前に用意されたフリップや小道具を駆使しながら、軽快な話術で工事の概要を解説していく。船上は常に笑い声に包まれ、途中で見かけた工事作業員らにたかねこメンバーが笑顔で手を振りながら「がんばってくださーい!」と声をかけるなど、クルージングは終始和やかなムードで進行した。

実際に日本橋川を訪れた城月菜央、橋本桃呼、籾山ひめり。

実際に日本橋川を訪れた城月菜央、橋本桃呼、籾山ひめり。

大嶋、杉原両氏の解説によると、日本橋区間の地下化事業は大きく3つのフェーズに分けられ、フェーズ1(出入口の撤去工事)はすでに完了。現在はフェーズ2(本体トンネル工事)に移行している段階だという。ちなみにフェーズ3が既存の高架を撤去する工程だ。船がフェーズ1の工事現場を通過する際には「この上にあった高架がすでに撤去されていて、一部空が見えるようになっています」との解説がなされ、3人は一斉に上を向いて「ホントだー! ここ、前は空が見えなかったんだ?」と目を丸くしていた。

現在進行中のフェーズ2は前述の通りトンネルを掘る工程だが、その工事を行うためにさまざまな事前工事が必要になるのとのこと。既設の橋や高架の基礎部分に工事と干渉する箇所があるため、それらに影響しない形で工事を進められるように新たな設備を構築したり、あるいは工事中に川の水位が上昇して災害につながるおそれを回避するため、川幅を広げる工事や、工事中の川の状況を再現した模型による水理実験で水位上昇を抑えられるかを確認することも必要なのだそうだ。

首都高日本橋区間の工事エリアを船上視察する橋本桃呼、城月菜央、籾山ひめり。

首都高日本橋区間の工事エリアを船上視察する橋本桃呼、城月菜央、籾山ひめり。

3人は逐一「なるほどー」と真剣な表情で頷きながら、時折飛び出す「アンダーピニング工法」や「ハーモニカ工法」「ラーメン構造」といった専門用語にも大いに興味を惹かれていた。中でも彼女たちが最も驚いていたのは、交通を止めることなく新ルートへ移行するために一時的な迂回路を新たに構築する工事についてだった。新ルートができあがった暁にはその迂回路は撤去される。そのことを聞いた彼女たちは「すごい!」「いろんな制約がある、難しい工事にチャレンジされているんですね.……!」と感嘆の声を上げていた。

現在の首都高日本橋区間の風景。 (提供:首都高速道路株式会社)

現在の首都高日本橋区間の風景。 (提供:首都高速道路株式会社)

そんな中、日本橋をくぐる際に籾山がふと「龍がいた!」と声を上げる。橋の中央に鎮座する彫刻を指しての発言だったが、「あれは龍ではなく麒麟ですね」と説明を受け、メンバーの口から「麒麟ってけっこう筋肉質!」という独特な感想が述べられた。さらに船着場をつなぎ止めている杭の上端にかたどられた擬宝珠にちなんで、社員チームがクイズを出題。1枚の写真を提示して「この擬宝珠はある有名な建物の屋根の上についているものです。さてその建物とは?」と尋ねると、橋本以外の2人は即座にピンと来た様子。1人だけまったく見当もつかずにキョトンとしている橋本に対し、籾山が「ほら、うちらも目指してがんばってるじゃん!」と助け舟を出すと、ようやく橋本も「あー! わかったわかった!」と声を弾ませる。そして3人全員で「せーの、日本武道館!」と元気よく回答した。