クラブハイツは1973年のオープン以来35年にわたって営業を続ける日本最大規模のキャバレー。中央に燦然と輝く巨大シャンデリアをはじめとした格調高いゴージャスな内装で知られ、最近ではPerfumeが出演したポルノグラフィティ「痛い立ち位置」のPVなどでロケに使用されているが、歌舞伎町再開発のため隣接する新宿コマ劇場などとともに今年いっぱいで営業を終了する。
バンドネオン、ピアノ、ベース、パーカッション、弦楽四重奏、ハープという他に類を見ない編成のバンドメンバーがステージに登場し、まずは菊地の指揮による挨拶代わりの即興演奏がスタート。そのまま「南米のエリザベス・テーラー」の収録曲「京マチ子の夜」が始まると、エキゾチックでムーディーなバンドサウンドと菊地による官能的なサックスの音色、昭和の遺産とも呼ばれる会場の雰囲気が相まって、観る者にまるで30年前にタイムスリップしたような錯覚を覚えさせる。
「孔雀(組曲「キャバレー・タンガフリーク」)」の妖艶でスリリングな演奏を経て、いよいよここでニューアルバム「記憶喪失学」からの楽曲を初披露。曲間を短いインプロビゼーションでつなぐというかたちで映画音楽のメドレーが行われ、「バターフィールド8」「アルファビル」といった新作収録の映画音楽や、前作の冒頭を飾った「はなればなれに」が続けざまに演奏された。
メドレー終了後にバイオリンやビオラ、チェロなどの弦楽メンバーは一斉にチューニングを開始。チューニングによる持続音の上でパーカッションやピアノなどの楽器が音を重ね始め、そのままWHEATHER REPORTのカバー「プラザ・レアル」に突入する。その後も彼らはフリーキーな即興演奏「航空会社のTVCMの悪夢」と「儀式(組曲「キャバレー・タンガフリーク」)」のメドレー、早川純の哀愁たっぷりなバンドネオンソロから始まる「ルペ・ベレスの葬儀」など、この夜ならではの構成で楽曲を披露。そして最後に「記憶喪失学」にも収録される映画「8 1/2」の楽曲を演奏し、ニーノ・ロータおよびフェデリコ・フェリーニの世界をステージで再現した。
アンコールで改めて登場した菊地は初めてのMCとして、新しくなったぺぺ・トルメント・アスカラールのメンバーをひとりひとり“誰のそっくりさんか”を交えて紹介。軽妙なトークで観客の笑いを取りつつ、バンドは最後にハダメス・ニャターリのカバー「メウ・アミーゴ・アントニオ・カルロス・ジョビン」、菊地自身が歌うこの日唯一のボーカル曲「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ」をなまめかしく演奏し、取り壊し前のキャバレーでのノスタルジックで優雅な一夜を締めくくった。
なお、この日のライブ音源の一部がiTunes Store限定で「Live Session (iTunes Exclusive) - EP」として配信リリースされることが決定。配信のスタートは11月12日に予定されている。ここでしか聴くことのできない貴重音源となっているので、当日参加できなかったファンはダウンロードして彼らの恍惚のパフォーマンスを追体験してみよう。
菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール 歌舞伎町クラブハイツ公演 セットリスト
01. 導入の即興
02. 京マチ子の夜
03. 孔雀
04. O.S.T.&即興メドレー
・映画「バターフィールド8」~バターフィールド8のテーマ
・エアコンディショナーのTVCMの悪夢
・映画「はなればなれに」~はなればなれに
・クイズ番組のTVCMの悪夢
・映画「アルファビル」~悲しきワルツ
05. プラザ・レアル
06. ダンスメドレー
・航空会社のTVCMの悪夢
・儀式
07. ルペ・ベレスの葬儀
08. 映画「8 1/2」 ~ それから‥‥(ワルツ)より
<アンコール>
09. メウ・アミーゴ・トム・ジョビン
10. ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ
関連商品
菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール「Live Session (iTunes Exclusive) - EP」
[音楽配信] 2008年11月12日発売 / EastWorksEntertainment
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クラブハイツのライブ、もう14年前なんだ。とてもいい時間だった。
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