音楽ナタリー編集部が振り返る、2024年のライブ

音楽ナタリー編集部が振り返る、2024年のライブ

中島みゆき、ATEEZ、柴田聡子、Dos Monos、吾妻光良&バッパーズ、藤井フミヤ、澤部渡×街裏ぴんく、眉村ちあき、炙りなタウン、RYUTist

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語り継がれるような名演が各地で繰り広げられ、たくさんのオーディエンスがライブに熱狂した2024年。本稿では、この1年のさまざまなライブの中から音楽ナタリーの編集部員たちが“個人的に印象に残ったもの”を各々3本ずつ挙げ、その思い出を振り返る。

中島みゆきの圧倒的なコンサートで感じた“体温”

文 / 丸澤嘉明

印象に残っているライブ3本

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圧倒的歌唱力。圧倒的表現力。圧倒的存在感。そして圧倒的なかわいらしさ。

中島みゆきさんのコンサートを観た感想について語るとき、“圧倒的”という言葉がしっくりきます。ある人はその姿をカリスマと呼び、ある人はスターと呼び、またある人は神様と呼ぶのでしょう。印象に残った曲はいくつもありますが、個人的には昨年発売されたアルバム「世界が違って見える日」の収録曲「体温」を聴けてうれしかったです。「生きてるだけでも奇跡(きせき)でしょ / こんなに危(あぶ)ない世の中で」という歌詞は、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻を想起させ、普段の生活が決して当たり前ではないことを教えてくれます。また「体温だけがすべてなの」の歌詞部分には「The warmth of you means the world to me」という英訳があてられています。つまり体温は自分のではなく、“目の前にいるあなたの体温”のこと。公演中に中島みゆきさんはこう言いました。「先を案じて今を粗末にするのが私の悪い癖。今はここにいてうれしい、そのことだけを思って過ごしたいと思います」。僕もまた、歌い手と観客がお互いの体温を感じ合えるのがライブの醍醐味だと改めて思いつつ、圧倒的なパフォーマンスからとてもお茶目なMCまで存分に堪能し、至福の時を過ごしたのでした。

なお、このコンサートの模様は現在「中島みゆきコンサート『歌会VOL.1』 劇場版」として全国の劇場で公開されており、再び観てきました。本編ラスト的な位置付けの「心音(しんおん)」で中島みゆきさんが右手を高く突き上げると同時に演奏がブレイクし、一瞬の静寂。そして「未来へ 君だけで行(ゆ)け」と力強くメッセージを発して彼女はステージを去っていきました。この演出は一度観ていたはずなのに鳥肌が立ち、年の瀬に改めて"神様"の偉大さを痛感しています。

鳥籠からタワーまで

文 / 固い熊猿

印象に残っているライブ3本

  1. 「2024 ATEEZ WORLD TOUR [TOWARDS THE LIGHT : WILL TO POWER] IN JAPAN」2月3日・4日 埼玉・さいたまスーパーアリーナ
  2. P1Harmony 1st Zepp Tour in Japan - Love & P1ece -」8月30日 神奈川・KT Zepp Yokohama
  3. 「2024 MAMA AWARDS」11月22日・23日 大阪・京セラドーム大阪
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P1HarmonyのZepp公演、「2024 MAMA AWARDS」でのG-DRAGONおよびBIGBANGの復活ステージなど、いくつも印象的なライブが浮かびますが、今年2月に行われたATEEZの日本公演は特に心を揺さぶられるものでした。

4月にK-POPボーイズグループ初となる「コーチェラ」出演を果たし、夏には北米でのスタジアム公演も成功させるなど、ATEEZにとってまさに飛躍の年となったであろう2024年。そんな輝かしい1年の始まりに行われたこのライブには、彼らが“舞台職人”と称される理由が凝縮されていました。壮大でコンセプチュアルな演出にも埋もれない圧倒的な表現力、演技力、パフォーマンス力(そして体力)。演技パートが多数盛り込まれるなど、世界観が緻密に作り込まれた公演でしたが、ライブならではの一回性も常にそこにある。群雄割拠のK-POP界でも揺るがない、唯一無二の強みを持つグループであることが強く実感させられました。ソンファさんの翼がもがれたのち、純白の羽に包まれたヨサンさんが鳥籠の中から現れるシーンは鳥肌が立ちましたし、さらなる進化を遂げたクラーケン討伐シーンは圧巻のひと言。のちの「コーチェラ」では、「KINGDOM : LEGENDARY WAR」でタッグを組んだPLAN Aが舞台演出を手がけたそうですが、ワールドツアーにも関与されているのでしょうか。

来年からヨーロッパツアーがスタートするとのことですが、メンバーの皆さんがケガなく駆け抜けられることを陰ながらお祈りしています。そしてATEEZはもちろん、すべてのアーティストとファンの方々にとって、2025年が健やかで実り多い1年になりますように。

爆走

文 / 三浦良純

印象に残っているライブ3本

ライブレポート

海風に髪を乱された赤いマフラーの女性が、メガネの奥からこちらに視線を投げかけている。

映画のワンシーンのような彼女のその写真を多くの人が今SNSに投稿している。写真とともに発表された彼女の作品が、みんなの“Favorite”になったからだ。誰も彼もがその人の話をした。ありとあらゆる言葉で褒め称えた。その人の周りに見たことのないような人だかりができた。その人がなんだか遠くに行ってしまったように感じる自分もいた。

と言っても、もともと近くにいたわけでもなんでもない。少し前から、その人の歌が好きでよく聴いていただけだ。ギターをかき鳴らして歌う、その人の声と言葉に心を動かされ、年に数回程度ライブに足を運んでいただけだ。「後悔」という歌が特に好きだった。多くのファンと同じように。

状況は大きく変わったが、幸運にもその人が歌う姿を今年も何度か観ることができた。その人は自身を一気に飛躍させた作品によって、本当に生まれ変わったようだった。いつも抱えていたギターに縛られることなく、その人はステージを歩き回って新しい曲を歌った。踊った。飛び跳ねた。

より自由になった彼女の体からは、歌うことの喜びがあふれ出ていた。それが客席にも伝わって大きな歓声が上がると、彼女は「ありがとう」と笑い、もっとうれしそうに歌った。そんなステージとフロアの交感から、これまでにない熱気が生まれた。

そこで彼女が歌い始めたのは、犬が迷子になったという歌だった。近所に住む犬がいなくなって、なぜかヒマラヤで見つかったのだという。「遠すぎるよ」と叫びながらも、その人は迷子の犬を追いかける。なりふり構わず全力で走り回る。

気付けば、爆走する彼女に引き寄せられる形でどんどん人が集まっている。自分もその中の1人だ。わけもわからず、みんなで走る。そうして犬を追う集団の狂騒は、加速しながら熱を帯び、膨らみ続け、ついには爆発した。

残響が続く中、何かの欠片が光を放ちながら宙を舞う。みな惚けた様子で笑みを浮かべている。次の瞬間、火照った体の底から沸き上がってきた言葉が、そのまま口から飛び出した。

「すごい」

なんの捻りもない感想だったが「そうだよね」と柴田さんは笑ってくれた。

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Dos Monos、吾妻光良 & The Swinging Boppers、藤井フミヤのライブを振り返る

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澤部渡 / スカート @skirt_oh_skirt

ナタリーさんが街裏ぴんくさんとのツーマンを振り返ってくれている……これはうれしい。来年もやれたらいいな〜 #ぴんくスカート https://t.co/g6Qz9KLeap

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