コンサートシリーズ「billboard classics」の武部聡志プロデュース公演「billboard classics『川崎鷹也 Premium Orchestra Concert』~produced by 武部聡志」に川崎鷹也が出演する。
3月31日に東京・すみだトリフォニーホール 大ホール、4月3日に兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホールで行われる本公演。これまでもライブやカバーアルバムなどで共演してきた川崎と武部が、フルオーケストラ編成でライブを繰り広げる。
音楽ナタリーでは公演を前に、川崎と武部にインタビュー。お互いの印象や、フルオーケストラ公演への意気込みを語ってもらった。
取材・文 / 森朋之撮影 / 石阪大輔撮影協力 / Amazon Music Studio Tokyo
公演情報
billboard classics「川崎鷹也 Premium Orchestra Concert」~produced by 武部聡志
- 2025年3月31日(月)東京都 すみだトリフォニーホール 大ホール
OPEN 18:00 / START 19:00 - 2025年4月3日(木)兵庫県 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
OPEN 18:15 / START 19:00
チケット販売
受付期間:2024年12月25日(水)10:00~
新しい音楽を生み出すのは若い人
──武部さんと川崎さんは何度も共演し、川崎さんのカバーアルバム「白」を武部さんがプロデュースするなど、音楽的な交流が続いています。武部さんが思う、シンガーソングライター・川崎鷹也の魅力とは?
武部聡志 最初に会ったのはテレビ番組だったのですが、まず声質に惹かれました。声がいいというのはシンガーソングライターにとって第一の武器だし、歌声に導かれるようにピアノを演奏できた記憶があるんです。僕らミュージシャンにとって、歌に引っ張られて演奏できるのはすごく気持ちいいし、「この若さで、こんな歌が歌えるんだな」と。その後もステージやレコーディングを重ねる中で、非常に吸収力があることもわかりました。いろんな人との出会いや聴いている音楽を自分に取り入れて、どんどん成長してる。頼もしいボーカリストに成長してくれて、うれしい限りです。
川崎鷹也 確かにこの数年はいろんな経験をさせていただきましたね。予期せぬ出来事、自分の力だけでは乗り越えられないこともたくさんあったんですが、武部さんをはじめいろんな方々の協力によって、ここまで来られた。自分は1人じゃない、皆さんが応援してくれるんだという実感が、1つの強みになっているかもしれないですね。
武部 鷹也のパブリックイメージは「優しいお兄さん」「笑顔」という印象かもしれないけど、実はすごく芯が強くて、男気がある人間だと思っていて。彼が作る歌や歌詞にもそれが出ていますよね。
──川崎さんは、武部さんとの交流を通じてどんなことを得てきたのでしょうか?
武部 まず遅刻しないこと(笑)。
川崎 そして予定より巻いて終わること(笑)。武部さんから学ばせてもらったことはたくさんあります。その中でも一番大きいのが、“ライブ感を大切にする”という事ですかね。ただ練習したものを披露するのではなく、お客さんを前にしたときの感覚や、会場の空気感によってその場でいろいろ変化をつける。生の空気感やライブ感を大切にすること。そうやってお客さんと一緒に作り出す空間を楽しむ感覚を得られたのはすごく大きいし、自分のツアーにも生かせていると思います。
武部 ステージでもレコーディングにおいても、僕はきらめきが大事だと思っているんです。緻密に作り込むというより、きらめく瞬間が訪れたらそれでいい。そのときに生まれるバイブレーションや波動はお客さんにも連鎖するし、ライブでもそういう瞬間を作っていきたいんですよね。
──「その瞬間、何を表現できるか」という緊張感もありそうですね。
川崎 ある意味プレッシャーでもあるんですけど、深いところで僕のことを信じてくれている、頼ってくれているというのがステージ上でわかるんですよ。武部さんにおんぶに抱っこではなく、僕にしかやれないことがあると思えるし、そこをしっかり見せたいなと。本番でリハと違うことをされたときも、「あ、信じてくれてるんだな」と思いますね(笑)。
武部 ハハハ。僕はこれまでにたくさんのアーティストとステージをともにしてきましたが、いつも「音楽は自由であるべきだ」と思っているんです。音楽は生き物だし、その生き生きとした感じをお客さんも待ち望んでいるんじゃないかなと。歪なもの、整っていないものでも、そういうものが皆さんの心を揺らすんだと思います。
──川崎さんは、歌謡曲、J-POPの潮流をしっかり受け継いでいる印象があります。
武部 最初に会ったときから、僕らが作ってきた音楽、僕らの世代のミュージシャンに対してのリスペクトをすごく感じました。日本のポップスの大きな流れを受け継ぐ、正統な後継者という見方をしています。
川崎 僕、音楽はもともとコミュニケーションツールとして生まれたものだと思っているんです。音楽のすべてを理解できるとは思っていないし、音楽をやらせてもらっていること、歌を歌わせてもらっていることに常に感謝していて。もちろん武部さんをはじめとする先輩方が積み上げてきたものもあるし、それに背くようなことしたくない。つまり音楽が好きなんですよね。
武部 僕らも若い人たちから刺激をもらっていますね。新しい音楽を生み出すのは若い人たちだし、若いアーティストやミュージシャンと交わることで学びを得て、若くいられるんです。
“鷹也節”がある
──2023年9月には、Billboard Live TOKYOでお二人の公演(「Billboard Live presents Piano Duo Session #3 川崎鷹也×武部聡志」)がありました。そのときの手応えは?
武部 鷹也はシンガーソングライター以前に、ミュージシャンなんだなとすごく感じましたね。彼自身も楽器(アコースティックギター)を弾くし、ミュージシャンシップにあふれているんだなと。自分としてもそれがとてもうれしかったし、その姿勢はずっと持ち続けてほしいですね。
川崎 そう思っていただいてうれしいですね。僕もそうありたいと常に思っています。自分の曲の場合はアレンジにも関わって、歌詞や歌以外の部分でも「リスナーにどう聞こえるか?」ということを気にしているので。武部さんとご一緒するときにいつも思うのは、「この2人にしかできないアレンジを突き詰めたい」ということなんです。「このセクション、武部さんならどういう感じになるだろう?」と考えたり、それを超えるようなアレンジが生まれて「すごい!」と驚いたり。そうやってブラッシュアップしたものをお客さんに届けたときの感動ももちろんあるし、ビルボードライブは客席との距離が近いから、それを直に感じ取れるんですよ。見せ方も気にしますけど、もっと根本の部分、音楽的なこだわりを大事にしたいと思っています。
──2人でライブをやるときは、どんなふうに準備を進めるんですか?
武部 まずセットリストを決めるところからですね。2人でやるときはピアノと歌とギターしかないですから、それぞれの曲の中でどういう役割を担うのかを話して、アレンジを考えて。あとはショーとして飽きないように、起伏を付けるようにしたり。歌詞が届いたかどうかというのも、1つの基準になっています。技術的にうまくいったかどうかよりも、歌が届いたかどうかのほうが大事なポイントですし、打ち合わせやリハーサルのときもそこを一番に考えています。特に鷹也の曲にはメッセージやストーリー、思いがしっかり込められていますからね。音数が少ない編成のほうが届きやすい場合もあるんですよ。
川崎 そうかもしれないですね。アコギとピアノの編成はすごく繊細だし、緊張感もあって。僕はミスも好きと言いますか(笑)、あまり気負ってはないですけどね。さっきの話と同じで、その瞬間に出せるものをお届けできたらいいなと。
武部 アコギにも歌と同じように“鷹也節”があるんです。彼ならではのフレージングや音の鳴らし方があるし、それを生かしたいというところもありますね。
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