HIRØ×Zeebra×KenKen鼎談|年越し「NYRF」開催直前!3人が明かすロックレジェンドたちのエピソード

2024年の最後をロックで締めくくる、年越しイベント「52nd NEW YEAR ROCK FESTIVAL 2024-2025」の開催がいよいよ間近に迫ってきた。

創始者の内田裕也が2019年3月にこの世を去ってからは、HIRØ(湾岸の羊~Sheep living on the edge~、カイキゲッショク)がプロデューサーを務めているNYRF。昨年に続いて東京・渋谷ストリームホールを舞台に行われ、ラウドロックからヒップホップまで内田裕也のロック魂を受け継いだ面々が、1年の総決算となるステージを繰り広げる。

音楽ナタリーではプロデューサーHIRØと、出演者であるZeebra、KenKen(RIZE)の鼎談を実施。かつてNYRFに出演していたロックレジェンドたちのさまざまなエピソードを交えつつ、彼らにとってNYRFとはなんなのかについて語ってもらった。

さらに最終ページには、今年の出演者であるICE BAHN、WAYNYS、KYONO、J-REXXX、Showy、原田喧太(MOUNTAIN MAN)、RIZE、呂布カルマ、REDZ(湾岸の羊~Sheep living on the edge~)の意気込みコメントを掲載する。

取材・文 / 秦野邦彦撮影 / 入江達也

公演情報

52nd NEW YEAR ROCK FESTIVAL 2024-2025

2024年12月31日(火)東京都 渋谷ストリームホール
OPEN 18:00 / START 19:00

「52nd NEW YEAR ROCK FESTIVAL 2024-2025」タイムテーブル

「52nd NEW YEAR ROCK FESTIVAL 2024-2025」タイムテーブル

出演者

ICE BAHN / 湾岸の羊~Sheep living on the edge~ / KYONO BAND / J-REXXX / Showy / MOUNTAIN MAN / 呂布カルマ / Zeebra / RIZE / WAYNYS

公式サイト

HIRØ×Zeebra×KenKen 鼎談

両親も参加していたNYRFに、世代を越えてRIZEとして参加できてうれしい

──今年も「52nd NEW YEAR ROCK FESTIVAL 2024-2025」が東京・渋谷ストリームホールにて開催されます。2019年に内田裕也さんが逝去。翌年はコロナ禍で無観客配信を余儀なくされるなど大変な中、ここまで続けてこられたのはプロデューサーHIRØさんの尽力あってこそだと思います。

HIRØ 1回ばっくれようとしたんですけど、Zeebraに首根っこをつかまれちゃいまして。「逃がさないぞ」と(笑)。

Zeebra (笑)。

左からZeebra、HIRØ、KenKen。

左からZeebra、HIRØ、KenKen。

──今年も素晴らしい顔ぶれが大晦日の夜に集結します。

HIRØ 昔は20バンドくらい出演していた時期もあったんですけど、新生NYRFは出演者を絞る代わりに1グループごとに充実した時間を充てたいなと。今回とにかく、RIZEがついに参戦ですからね。JESSEはカイキゲッショクやThe BONEZで出演してくれたことがありますけど、ついにあっくん(金子ノブアキ)とKenKenの金子兄弟が初参加。NYRFにはお母さんの金子マリさん(4回、41回)、お父さんのジョニー吉長さん(27回、28回)も出演されてますから。

KenKen NYRFについてはよく存じ上げてたので、僕らなんか入る余地がないと思っていたんです。でも、HIRØくんが続けてくれたおかげで出演できることになった。去年もお話をいただいてたんですけど、RIZEもやってる時期とやってない時期があるので、タイミング的にはこれでも最速で参戦できたほうかなと思っております。

HIRØ 2022年にロシアとウクライナの戦争が始まったとき、活動休止中のRIZEが集まってスタジオライブで「heiwa」を1曲だけやったんです。

HIRØ 僕はRIZEは当分活動しないものだとばかり思っていたから、観た瞬間「この『heiwa』は絶対、今年50周年を迎えるNYRFで鳴らさなきゃ!」と、すぐJESSEに連絡したんです。そしたら「KenKen次第だ」と。

KenKen みんな俺のせいにするんだから(笑)。

HIRØ とにかくKenKenに会わなきゃと思って、コロナの名残がまだある中、渋谷のクラブに行って話をしたんだよね。

KenKen うちの実家がある下北沢にも一度来ていただきました。

HIRØ マリさんもいて、昔のNYRFの話もいっぱいしてもらってね。考えてもらった結果、KenKenから「RIZEの活動再開はまずファンクラブの人がみんな来られる環境でやりたい」って。

KenKen 2017年から7年間活動してなかったんですけど、それでも何千人と待ってくれてるファンがいたので、俺だけの意見じゃないですけど、まずはそこが先なんじゃないかって話がありまして(RIZEは2024年6月5日から7月5日まで全国7カ所をめぐるツアー「RIZE LIVE TOUR 2024 "SOLU"」を開催)。

HIRØ あの頃はKenKenとあっくん、あまり会ってなかったの?

KenKen もともとRIZEのメンバーは家族すぎて、「遊ぼうぜ」みたいなことはあんまりないんです。会うのは法事くらい(笑)。

HIRØ その後、JESSEから「NYRFの件でHIRØくんがKenKenに会いに行ってくれてから、みんなで話すようになって、RIZEが具体的に動くことになりました」と連絡が来て。「絶対NYRFは出るから、少し待っててほしい」と言われて、じゃあわかったと。

HIRØ

HIRØ

KenKen ずっと気にかけていただいてありがとうございます。ジブさんも僕がRIZEに入る前の2001年に1曲参加していただいて(Zeebra meets RIZE「I CAN'T LIVE WITHOUT MY RADIO」)20年以上前からお世話になっているので、今年RIZEとしてNYRFに参加できて、すごくうれしいです。

裕也さんたちが非国民扱いされながら続けてくれてたおかげで

──Zeebraさんはカイキゲッショク(HIRØとMOTOAKIを核として、ジャンルに囚われず各界からオリジネイターが集結して結成された音楽集団)のメンバーとして2009年からNYRFに参加されています。そもそもカイキゲッショクにはどういうきっかけで参加することになったんですか?

Zeebra ちょいちょい夜、みんなで会うことが多くなってた時期だよね。

HIRØ Zeebraとは10代からの仲間なので。

Zeebra そこで「俺たちの周りには面白いやついっぱいいるから、とんでもないバンド作れたら面白いよね」みたいな話になって。実際やってみたら、まあ大変だった(笑)。

HIRØ それこそ結成のときはRIZEからJESSEがいて、MAD CAPSULE MARKETSからMOTOKATSUがいてね。

KenKen カイキになる直前ぐらいの頃、HIRØくんとMOTOAKIくん、よくイベントやってましたもんね。俺もMIYAVIと一緒に1回出させてもらったこと覚えてます。下北沢の駅前にでっかい看板が建ってて、実家からめっちゃ見えたんですよ。朝起きてベランダに出るとHIRØくんとMOTOAKIくんの顔が。

HIRØ 「勘弁してくれよ」って?(笑)

KenKen いやいや(笑)、すごいなと。NYRFも、同じ下北沢仲間のSHEENA & THE ROKKETSの鮎川誠さん、シーナちゃんという生まれたときから世話になってた人たちがやっていたイベントなんですよ。それがHIRØくんのプロデュースのもとで続いていくことは音楽の一番のあるべき形。ロックフェス自体ものすごく増えたから、こういう筋があるものが残っていくことはすごく大事なことだと思うんです。NYRFを絶やさないことはHIRØくんだけじゃなく、みんなでやらなきゃいけないことなので。そこにRIZEが今年から参加できるのはありがたいなと思っております。

Zeebra それこそ裕也さんがやってたときも、本当にカッコいい先輩方が出てるっていう感じだったじゃない? だからそういう意味で「誰でも出られるものではないフェス」であってほしいと思う。

Zeebra

Zeebra

HIRØ 間違いない。僕、NYRFのステージで年を越すのが今年でちょうど30年目なんですけど、この30年間、ステージ、出演者を見てきて、あるとき、まったく知らないような人が出てたりとか、スポンサーや協賛やメーカーのバーターでよくわかんない人たちがいっぱい出てた時代もあったんです。そこに僕はずっと文句を言い続けて。「ここは思い出のステージじゃねえんだ」って。「ここは1年どんだけ走ってきたか、その集大成を最後に競い合うステージなんだ」って話をずっと俺は裕也さんにしてたんです。「そんなこと言ってもな、HIRØ」「いや、でも裕也さん! 実際そうじゃないですか!」って言い合いながら。裕也さんが亡くなる前の数年間は陣内孝則さん、仲野茂さん、PANTAさん、どんどん昔の人たち、一線で走り続けてる人たちだけが戻ってきました。そして47+1から参加してくれているのは、やっぱり本当にカッコいい人たち。あとすごく俺が大事にしたいなと思うのは、ある種のニオイというか、不良性の香り。NYRFは昔からそうなんですけど、そこだけは俺が引き継いでからも守ってこれてるのかなとも思うんです。

KenKen わりと手軽にミュージシャンになれる時代になってきたけれど、昔はミュージシャンって世捨て人みたいなものだったじゃないですか(笑)。世論とかあんまり関係ない、仲間をまず守って、みんなで一緒に生きていく。そういうのを俺らも子供の頃から見てて、そこにすごく憧れてたんで、HIRØくんが意志をもってそういう人たちを集めて、今の時代にそのメッセージを届けているのはめちゃめちゃ大事なことだなと思いますね。

HIRØ KenKenはいろんな人と一緒にやってますから。遠藤ミチロウさんと一緒にTHE STALIN Zもやってたよね(Vo:遠藤ミチロウ、Dr:中村達也、G:百々和宏、B:KenKen)。

KenKen ミチロウさんが還暦を迎えた年ですね

HIRØ あれ、俺はすごいことだと思ってて。遠藤ミチロウって、わかる人にしかわからないアーティストじゃないですか。ザ・スターリンを家で聴いていると、うちの奥さんにも「音ちっちゃくして。胎教に悪い」とか言われるし(笑)。でも、遠藤ミチロウの世界観を最後に完成させたのはKenKenだと思ってるんです。あれはびっくりした。

KenKen THE STALIN Zのライブ中にダイブしてきたのが、今年もNYRFに出演するKYONOさん(笑)。めちゃめちゃテンション上がってて。それはすごく印象に残ってる。

HIRØ だからRIZEもですけど、このKenKenという存在がNYRFに何かまた新しい血を入れてくれるんじゃないかなってすごく期待してるんです。

KenKen 最近はパッとできるものになっちゃったけど、昔のロックバンドは裕也さんのところでやる以外、ライブをやる手段がなかったですからね。裕也さんたちががんばってくれたから今こんだけ俺らがやりやすくなってるけど、あの人たちが非国民扱いされながら音楽を続けてくれてなかったら、ロックは一大産業になんなかったかもしれない。そういう系譜を知ったうえでロックをやることはすごく大事だと思ってて。温故知新じゃないけど、やっぱり過去を知らずに新しいことをやろうとすると結局また同じことの繰り返しになっちゃったりするので、全部を知ったうえであえて、やる / やらないの選択肢をみんなに持ってほしいなと思う。最近のロックバンドはすごく健全だから。普通の人ががんばってそれっぽくしてるパターンがすごく多い。昔は「どうかしてる人をもっとどうかしてる人が観に来る」だったのに。

KenKen

KenKen

HIRØ ロックバンド、いい子ちゃんばっかりになっちゃって、不良性のある子はみんなヒップホップに行くよね。今の不良の子たちは楽器持たないのかな? それでもKenKenに憧れてベース持つ子、多いじゃないですか?

KenKen ありがたい。

HIRØ 不良はどうしても簡単なほうというか……。

Zeebra 何もなくてもできるほうを選ぶ(笑)。

HIRØ その流れを作ったのは絶対Zeebraでしょ(笑)。

KenKen ヒリヒリした空気感は練習してゲットするものじゃないから。今までの生活から出るものであり、その人自体のパワー。あと、仲間を守る感覚も大事なこと。今やちょっとしたことでバンドをクビになる時代だけど、俺らからしたら意味がわからない。俺もいろいろとやらかしてますけど、ありがたいことに音楽に助けてもらって、またこうやって一緒にバンドをやれています。