LiSA「ReawakeR(feat. Felix of Stray Kids)」|澤野弘之&フィリックスとの超強力タッグで生まれた世界照準曲

2024年はデビュー13周年を記念した日本武道館2DAYS(「LiVE is Smile Always~i SCREAM~」)に始まり、「魔法科高校の劣等生」「NieR:Automata Ver1.1a」「シャングリラ・フロンティア」という3作品とのタイアップ曲のリリース、初の国立代々木競技場第一体育館公演を含む全国アリーナツアー「LiSA LiVE is Smile Always~COCKTAiL PARTY~」の開催、さらに野外ロックフェスへの出演など怒涛の日々を送ったLiSA。しかし彼女は2025年に突入してからも、その勢いを落とすつもりはないようだ。

2025年の幕開けとともにLiSAから届けられたのは、Stray Kidsのフィリックスをフィーチャリングゲストとして迎え、澤野弘之が作編曲を手がけたハイボルテージな新曲「ReawakeR(feat. Felix of Stray Kids)」。韓国発の人気作品「俺だけレベルアップな件」アニメシリーズのシーズン2オープニング主題歌として書き下ろされた1曲だ。LiSA、フィリックス、澤野弘之という強力すぎるタッグはどのように生まれたのか? 2024年のハイライトとなった「COCKTAiL PARTY」でLiSAは何を手にしたのか。そして、2025年は何を企んでいるのか。本人に話を聞いた。

取材 / 臼杵成晃文 / 中野明子撮影 / YURIE PEPE

「素晴らしくない日も重ねて」の真意

──先日「COCKTAiL PARTY」の代々木公演を拝見しましたが、LiSAさんがひたすら楽しそうで(参照:LiSAが酸いも甘いも味わった東京で「COCKTAiL PARTY」、刺激たっぷり“SOUR”編レポート)。今までのLiSAさんの大きめのライブというと、お客さんを楽しませるのは大前提でありながら、その手前に「己との戦い」があるという印象だったんです。ところが今回はそれがなく、「とにかくここにいる全員を楽しませてやる」という姿勢を感じました。

アリーナツアーなので、会場の隅々まで、一番遠くの人まで楽しめるようなライブにしたいという心意気ではいました。アリーナでのライブは、派手なセットだったり、演出だったり、段取りがすごく必要なライブではあるけれど、歌への集中力が切れないように意識しましたね。LiSAに思い入れがある人もそうでない人も、全員が楽しめるよういろいろ配慮して。

──演出的にも盛り盛りで、「GL」でお客さんの1人をステージに上げてパフォーマンスするところなんか「楽しませる」の最たるものですよね。あの演出は全会場で?

「LiSA LiVE is Smile Always~COCKTAiL PARTY~」2024年12月1日開催の東京・国立代々木競技場第一体育館公演より。(撮影:平野タカシ)

「LiSA LiVE is Smile Always~COCKTAiL PARTY~」2024年12月1日開催の東京・国立代々木競技場第一体育館公演より。(撮影:平野タカシ)

はい。とにかく置いてきぼりになる人が出ないように、セットリストに懐かしい曲も入れたし、ツアーが始まった頃はまだリリースしてなかった「QUEEN」も組み込んで、みんなを連れていけるように意識しました。

──その“みんな”を連れていく意識が芽生えたのはアリーナツアーだから?

そんなこともなくて、単純にこれまでと比べてギアの入れ方が上手になった感じ。前は全曲に全力を込めないとお客さんに伝わってる手応えがなかったというか、それしか楽しませ方を知らなかったんです。みんな、私が痛々しく血を流している姿を楽しんでくれていると思い込んでた。でも、楽曲も自分の表現方法も増えてきて、それぞれの曲でお客さんが何を楽しもうとしてくれているのか、何を私に求めているのかがきちんと見えるようになって。初日の「SWEET」だと「Rising Hope」「ROCK-mode'18」「一斉ノ喝采」なんかは、心の中では戦っているものの、ファンのみんなに楽しんでもらうことを一番に考えてるんです。もちろん自分の身を削って、LiSA自身がLiSAと戦っている楽曲もありますけど。

──「全力を込めない曲」も、力を抜いているというわけではないんですよね。

私としては手を抜くのではなく、ちゃんとエンタテインメントをやろうと思ってライブに臨んでますね。アリーナ会場ではお客さんとの距離を埋めるために、演出があったりとか、ダンサーさんがいたりとか、衣装替えが何回もあったり、いろんなものの力を借りるんですけど、だからと言って毎回余裕でゴールしてるかと言ったらそうでもないんです。けっこう挑戦的なメドレーを用意するとか、昔の曲をきちんと歌うとか、自分に課していたことも多くて。お客さんを楽しませることを前提にしつつ、ちゃんと挑戦をできるセットリストを心がけたつもりです。

LiSA
LiSA

──そもそも、代々木体育館でライブをするのが初めてだったとか。それが意外でしたけど。

お客さんとして行ったことはありましたけど、ステージに立つのは初めてで。私、代々木体育館で初めて観たライブがゆずさんで、そのときは「アーティストとお客さんの距離が近いな」と感じたんです。それがちょうど自分の初めての日本武道館ライブの前で。そこでアリーナライブの作り方を学んだので、自分もやっとあのときのゆずさんと同じステージに立てたんだと思うとうれしかったですね。ただ演者側としては、代々木体育館ってめちゃくちゃ音が反響するから歌いづらいんですよ(笑)。バンドメンバーもすごく苦労したと思うけど、お客さんとの距離が近いもんだから、みんなそれに乗せられてすごく楽んでましたね。

──終盤のMCで「素晴らしい日を重ねて、素晴らしくない日も重ねて、またみんなに会いたい」とおっしゃってましたが、LiSAさんにとっては「素晴らしくない日も重ねる」ことが重要なんだろうなと思いました。

そうですね。ツアーで各地を回ってからの代々木公演だったから、いつも以上に東京という場所への思い入れみたいなものが強く出ちゃって。私はずっと東京で戦ってきて、今では東京のど真ん中でやるライブにもたくさんの人が来てくれる。こんな素晴らしい日もあるし、素晴らしくない日も前を向いてこれた。そう思ったら、ああいう言葉が出てきました。

LiSA
LiSA

LiSA×澤野弘之×フィリックス(Stray Kids)の三つ巴

──そんなアリーナツアーを経て、1月にはさっそく2025年一発目の新曲「ReawakeR(feat. Felix of Stray Kids)」が配信されます。この曲は2023年にリリースされた「Social Path」に続く再タッグであるとともに、ひさしぶりの澤野弘之さん提供曲でもあって。

澤野さんとは「narrative」(2018年にリリースされたSawanoHiroyuki[nZk]:LiSA名義の楽曲。参照:澤野弘之×LiSA対談)以来ですね。

──新曲の情報発表の際、LiSAさんは「楽曲を澤野弘之さん、そしてfeat.にStray Kidsのフィリックスさん。それぞれの道を切り開き戦うお二人とお届けします」とコメントしていました。どういう流れでこの3者のコラボに至ったのでしょうか?

まず「俺だけレベルアップな件」シーズン2のタイアップのお話をいただいて。澤野さんがシーズン1のオープニングテーマ(「LEveL」)を手がけられていたのと、LiSAとして今はいろんな人たちと一緒に手を組んで音楽を作りたいという気持ちだったので、まずはひさしぶりに澤野さんとご一緒できたらと考えました。加えて「俺レベ」は韓国発の作品で、国を超えて愛されている作品だから、日本のアニメを好きな韓国のアーティストとご一緒するのはどうかな?と。以前「Social Path」でStray Kidsの皆さんに呼んでいただいたから、次はこちらからお声がけしようということになり。今回はフィーチャリングアーティストにStray Kidsのフィリックスさんを迎えました。

LiSA
LiSA

──この三つ巴のコラボレーションが発表されたときの反響はものすごかったですね。何年か前までは、LiSAさん、澤野さん、フィリックスさんの三者が結び付くなんて考えもしなかったですけど。

これは本当にご縁ですね。「俺レベ」のプロデューサーさんとお話ししたときに、シーズン1のオープニングテーマより疾走感のある、ダンサブルな楽曲が欲しいと言われて。「こういう熱量の曲で、四つ打ちのリズムはこんな感じ」「フィリックスさんが入るならラップが欲しい」と話し合った結果、この「ReawakeR(feat. Felix of Stray Kids)」ができあがりました。