左からK-POPゆりこ、土岐麻子。

土岐麻子の「大人の沼」 ~私たちがハマるK-POP~ Vol.10(前編) [バックナンバー]

韓ドラは後半で面白くなる作品が多い? 注目したいバイプレイヤーは?

韓国通ライター・K-POPゆりこと韓国ドラマを語り尽くす

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シンガー土岐麻子が中心となり、毎回さまざまな角度からK-POPの魅力を掘り下げている本連載。第10回では土岐と日々韓国エンタメについて語り合う仲であり、韓国カルチャーに明るいライターのK-POPゆりこをゲストに招き、韓国ドラマをテーマとしたトークをお届けする。前編では好きな作品はもちろん、韓国ドラマならではの特徴や、知っておくと韓国ドラマをより楽しめるバイプレイヤーについて語ってもらった。

取材・/ 岸野恵加 撮影 / 曽我美芽

大変な日々を韓国ドラマに支えられ渡韓

土岐麻子 私とは日々頻繁に連絡を取り合っていますが……ゆりこさん、まずは読者の方に向けて自己紹介していただいていいでしょうか?

K-POPゆりこ よろしくお願いします! 韓国エンタメに関する情報を発信するフリーランス主婦ライターとして活動しております、ゆりこです。

土岐 韓国に関係するお仕事を始めたのが10年前くらいでしたっけ? 韓国に住まわれていた期間もあったんですよね。

K-POPゆりこ はい。20代の頃韓国に住んで、ソウルのイベント会社で働きながら語学の勉強をしていました。韓国カルチャーのライターとして初めてのお仕事をもらったのもその頃です。大学卒業から数年間は韓国エンタメと無関係の会社で働いていました。ハードな環境で徹夜も多く、大変な日々を支えてくれたのが韓国ドラマだったんです。ボロボロで家に帰ってきて、ドラマで夜更かししちゃってまたボロボロになって会社に行く、みたいな毎日を送っていましたね(笑)。

土岐 そこから一念発起して会社を辞めて、韓国に渡ったんですね。すごい決意だと思います。韓国語はもともとできたんですか?

土岐麻子

土岐麻子

K-POPゆりこ 大学生のときに韓国映画にハマって、在日韓国人の友達に韓国語を教えてもらってたんです。社会人になってからも毎週レッスンを受けていたので、韓国に行く前も少しの会話程度はできる状態でした。

土岐 そんなゆりこさんと私が出会ったのは約2年前でしたね。西寺郷太(NONA REEVES)さんのPodcastに一緒にゲストとして招いていただいたのがきっかけで(参照:西寺郷太の「GOTOWN Podcast」で土岐麻子の半生を深堀り、愛するK-POPトークも)。

K-POPゆりこ はい。私はそもそも土岐さんの大ファンで……高校時代からずっと好きだったので、郷太さんから共演者として土岐さんのお名前を聞いたときは「私、夢見てるのかな」って思いました(笑)。

土岐 あはは(笑)。そのときに連絡先を交換させてもらって、一緒にごはんに行かせてもらったり、以前担当していたAuDeeの音声配信番組にゆりこさんにゲストで出ていただいたり。今では日々LINEで韓国エンタメのことをやりとりする仲です。何かわからないことがあるときは、ゆりこさんに聞けば絶対に的確な答えが返ってくるんですよ。もう、私の師匠です。

K-POPゆりこ いえいえ、恐れ多すぎです。土岐さんから教わることも多いですよ。

土岐 ちなみにお名前に「K-POP」と付けるほどだからもちろんK-POPもお好きだと思うんですが、K-POPアーティストだと誰が推しなんでしょう?

K-POPゆりこ デビュー時からEXOが好きで。そしてBTSは仕事で関わらせてもらったこともあって応援してますし、ヨジャグル(女性グループ)だとMAMAMOOも好きです。いわゆるアイドル以外も好きで、HYUKOHやSe So Neonといったバンド、HeizeやHoody、パク・ジェボムなどソロアーティストの曲もよく聴きますね。パッと聴いただけで「あの人の声だ」とはっきりわかるような、特徴あるボーカルの曲が好きです。

土岐麻子

土岐麻子

いつ、どのくらいの頻度でドラマを観る?

K-POPゆりこ 今日の取材のために、土岐さんがここ数年で観た韓国ドラマのリストを作って事前に送ってくださったんですけど、「逆に私のほうがいろいろ勉強させてもらいたい」と思わされる量でしたよ。50作品くらい? すごいなと思いました。

土岐 昨年アルバムをリリースしたときのナタリーさんのインタビューでもお話ししたんですけど(参照:土岐麻子「Twilight」インタビュー)、ステイホーム期間に、家にいて穏やかに時間が過ぎていくけど、一方で感情の起伏があまりなくなったことで、作詞作業が捗らなくなってしまい。映画やドラマは日常に戻ってこれなくなる気がしてそれまではあまり観てこなかったんですが、「インプットが必要だから、今こそ観るべきなのでは」と思い、そこから観始めました。そのとき話題になっていた「梨泰院クラス」「愛の不時着」(ともに2020年)の2作品から始めましたね。

「愛の不時着」より。(Netflixシリーズ『愛の不時着』独占配信中)

「愛の不時着」より。(Netflixシリーズ『愛の不時着』独占配信中)

K-POPゆりこ 土岐さん、すごくお忙しいと思うんですが、どのくらいの頻度でドラマを観てますか?

土岐 リアルタイムで配信されるものは、最新話が公開されたら毎週就寝前に1話ずつ観ます。だいたい3、4作品を並行して観てますね。過去作品の場合は、お休みの日にイッキ見してます。

K-POPゆりこ すごいです! 私は週末にまとめ見してますね。20代の頃は徹夜も全然苦ではなかったので、深夜3時くらいまで毎日のように観ていましたけど、あれがつらいことを乗り越えるために燃料になってたんだろうなと感じています。「いつか韓国関連の仕事をしたい」という思いもあったので、そのためにもたくさん観ておこうという気持ちがありました。

土岐 その「燃料」になっていた時期に心に残っている作品を挙げるとすると、何になりますか?

K-POPゆりこ 筆頭は「宮~Love in Palace」(2006年)ですね。「Perhaps Love」っていうOST(オリジナルサウンドトラック。韓国ドラマにおいては主に劇中歌を指す)もすごくよくて。現代の韓国に王室制度が存在したら……という大胆なストーリーなんですが、そこにもこの曲がぴったり合っていました。あとは「ドリームハイ」(2011年)も好きでしたね。

土岐 タイトルは聞いたことがあります。

K-POPゆりこ 2PMのテギョンとウヨン、当時miss Aだったスジ、T-ARAのウンジョン、IUといったK-POPスターがたくさん出ていた作品です。芸能高校に通うアーティスト志望生たちのストーリーなので、劇中で実際に彼らが歌った曲を収めたOSTがすごくヒットして、日本でもかなり売れていた記憶があります。「サイコだけど大丈夫」(2020年)のキム・スヒョンの出世作でもありますね。

前提をクドいくらい丁寧に描く韓国ドラマ

K-POPゆりこ ちなみに今はサブスクのおかげで膨大な作品数を手軽に観ることができますけど、土岐さんは配信サービスは何を使っていますか?

土岐 私はNetflixとディズニープラスに入ってます。

K-POPゆりこ 今はいろんな会社が韓国ドラマに力を入れていますよね。その中から観る作品をどう選んでいますか? キャストはもちろん、好きな制作会社だったから観るとか、知人が薦めていたからとか、いろんな入り口がありますよね。

土岐 私は配信ラインナップをまず眺めて、その中からあらすじや予告、ビジュアルの雰囲気で決めることが多いです。でも、ビジュアルに関しては基準にしすぎてもよくないなと思うこともあって。どうしてもキャピキャピしたラブコメは避けがちなんですけど、「元カレは天才詐欺師♡~38師機動隊~」(2016年)っていうドラマが、タイトルもそうですしピンクを基調としたビジュアルから「自分からは一番遠いラブコメなんだろうな」と思ってたんです。でも観てみたら全然印象が違って。青年と中年の男性が世の悪と対峙していくバディもので、すごく面白かったんです。そこから、「タイトルやビジュアルのインスピレーションだけで観る作品を決めるのは損しているかも」と思うようになりました。

K-POPゆりこ 日本向けのビジュアルは、本国と違ったクリエイティブにされるケースが多いですからね。SNSでも定期的に話題に上がりますが……。「パラサイト 半地下の家族」(2019年公開の映画)のときもまさに話題になっていましたね。

土岐麻子

土岐麻子

土岐 「元カレは天才詐欺師♡~38師機動隊~」は、日本のビジュアルではソ・イングクさんとヒロインのスヨンさん(少女時代)だけが写っていて、バディの片割れを演じるマ・ドンソクさんがいませんでした。パッと見てラブコメだと思ってこれを観たら、想像と違って驚いちゃいそうですね。そんなこともあったので、とりあえずどんなドラマでも1話は絶対最後まで観ることに決めています。1話を観終わってから、2話以降も観たいかを正直に自分に聞く。でも途中で視聴しなくなることは、私はそんなにないですね。

K-POPゆりこ ドラマの中盤からめちゃくちゃ面白くなることもよくありますからね。

土岐 「イカゲーム」(2021年)も、1話で参加者がだるまさんがころんだをするシーンでもう観るのをやめたくなっちゃったんですよ。あまりにも残虐的で、つらいなと思っちゃって。でも「これだけ注目されている作品なのだから、この向こう側には絶対に何かがあるはずだ」と思って観続けたら、やっぱりその通りだった。韓国ドラマは長い作品が多いですけど、話が進んでいくうちに作品のメッセージが徐々にわかっていく作品が多いので、そこが面白いですよね。女性の友情ものだと思っていたら後半でミステリーになっていくとか、ガラッと主題が変わるものもあるし。

K-POPゆりこ 1話だけだと「え?」っていう作品もけっこうあるじゃないですか。韓国ドラマあるあるだと思ってるんですけど、1話からぶっちぎりで面白い作品ってあまりなくて、途中から面白くなっていく作品が多い。なので私は、5、6話くらいまでは必ず観るようにしてます。それでも面白くなかったら視聴をやめちゃうこともあるんですけど。韓国ドラマって少なくても12話、多いと20話以上あって、前提を丁寧に描くんですよね。主人公たちの関係性や物語の背景をとても細かく、時にはお腹いっぱいになるぐらい見せてくれるので、悪い言い方をすればちょっとクドいくらい(笑)。だから最後に全部つながったときに鳥肌が立つ。そこが韓国ドラマの魅力の1つだと思いますね。その反面、本題が始まる前に離脱しちゃう人もいるかもしれませんが。

「イカゲーム」より。(Netflixシリーズ『イカゲーム』独占配信中)

「イカゲーム」より。(Netflixシリーズ『イカゲーム』独占配信中)

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視聴者の厳しい目

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土岐麻子とスタッフ @tokiasako_staff

ナタリー連載、今回はゆりこさん @yurikpop0327 とドラマについて語りました!まずは前編です。 https://t.co/nFXVGolIse

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