8月9日と10日に東京・Zepp Haneda(TOKYO)でライブイベント「UKFC on the Road 2025‐15th ANNIVERSARY‐」が開催された。この記事では2日目のFRONTIER STAGEの模様を中心にレポートする。
今年で開催15周年を迎える「UKFC on the Road」は、UK.PROJECTのレーベル部門とプロダクション部門が総力を結集して行う夏のイベント。FONTIER STAGEとFUTURE STAGEという2つのステージで、UK.PROJECTを牽引するアーティストや、縁の深いアーティストがステージを繰り広げる。2日目は2011年と2012年にツアー形式で開催された「UKFC」で全国を巡った
お祭り隊長TOTALFATの帰還
2日目のFRONTIER STAGEのトップバッターを務めたのは、実に5年ぶりの出演となるTOTALFAT。Jose(Vo, G)の「お祭り隊長TOTALFAT! ただいま戻りました!」という自己紹介をきっかけに、3人はさっそくキラーチューン「PARTY PARTY」で、会場をお祭りムードに包み込む。ラインナップ発表で両者のファンは期待したであろう、TOTALFATの高校時代から後輩・BIGMAMAとのコラボも実現。金井政人(Vo, G)と東出真緒(Violin, Key, Cho)を呼び込んで「晴天」を披露し、外の雨雲を晴らすように高らかに歌声を響かせた。さらに金井と東出は「夏のトカゲ」にも参加。はんなりとしたメロディと激しいロックサウンドがぶつかり合うこの曲に、東出のバイオリンが祭り囃子のごとく軽やかで華やかなエッセンスを加えた。
UK.PROJECTのお祭りに欠かせない男と言えば、the telephonesの岡本信明(Syn, Cowbell, Shriek)だ。舞台袖でTOTALFATのステージを楽しんでいた岡本もステージに飛び込み、TOTALFAT流のお祭りソングを全力で楽しむ。岡本は「夏のトカゲ」の進化版とも言える「夏ノ大蜥蜴」(なつのおおとかげ)のステージにも参加。祭太鼓のようにBunta(Dr)がフロアタムを打ち鳴らすこの曲で、今度はthe telephonesの石毛輝(Vo, G, Syn)も引き連れて「酒持ってこい 酒持ってこい」と歌うTOTALFATのもとへウイスキーを差し入れた。Shun(Vo, B)は「どんなときも居場所をくれた。離れてからも居場所をくれたUK.PROJECTは最高の場所だ」と語り、最後に「Place to Try」を披露。「またお邪魔しまーす!」とさわやかな笑顔でステージを去った。
最新のBIGMAMAを堪能…ラストは「Look at me」
「ただいまUKFC」──金井の言葉がオーディエンスを沸かせたように、TOTALFATと同じく5年ぶりに「UKFC」に帰ってきたBIGMAMAのステージは「MUTOPIA」で幕開け。バケツをかぶったドラマー・Bucket Banquet Bisの前に竿ものメンバー4人が並び、5人の奏でる音が一丸となって、“音楽の楽園”へと導くファンファーレのように鳴り響く。5年ぶりの「UKFC」とあって、当時ライブで披露していた名曲がちりばめられたステージになるかと思いきや、意外にもセットリストは近年リリースされた楽曲で構成されていた。どんな逆境にも立ち向かい、いつだって前を向いて新たな道を模索して進化し続けてきたBIGMAMAは、その姿勢をホームとも言える「UKFC」でも貫くことを選んだ。
パワフルでダイナミックなドラミングを軸にスリリングな演奏を繰り広げる「化学 | Utsu2」や「現文 | 虎視眈々と」といった、洗練されたBIGMAMA印の楽曲の数々にオーディエンスは熱狂し、その盛り上がりは最新曲「旋律迷宮」でさらに加速していく。金井の「先輩! 好きにやってもらっちゃっていいですか?」という呼び込みに答えたのはもちろんTOTALFAT。金井のお面を装着したShunとJoseは「金井政人3人体制でいかせていただきます」と宣言し、金井とともに「美術 | ESORA」を熱唱した。「中央大学附属高校でした! 押忍!」と去っていく先輩2人を見送ったBIGMAMAは「物理 | Time is like a Jet coaster」をスピーディに駆け抜ける。そして「UK.PROJECTへ愛を込めて」と、UK.PROJECT加入後初めてリリースした1stミニアルバム「short films」よりデビュー曲にあたる「Look at me」のギフトでステージを締めくくった。また東出は、金井が1stアルバムをプロデュースしたLAYRUS LOOPのステージにゲスト参加。ゆかりのある後輩のバンドにバイオリンの演奏でエールを送った。
銀杏BOYZは11年ぶりに登場、相棒はぴーちゃん
前回銀杏BOYZが「UKFC」に出演したのは、安孫子真哉、チン中村、村井守が脱退した2013年の翌年2014年。前身バンドGOING STEADY時代からの仲間がバンドを去り、1人きりになった峯田和伸は赤いスポーツパンツ一丁でアコースティックギターを抱えて「UKFC」のステージに立った。あれから11年。峯田はサポートメンバーたちとアメリカ西海岸ツアーや7年ぶりのバンド編成のライブツアー「昭和100年宇宙の旅」を成功に収めるなど、精力的にライブ活動を行っている。長年UK.PROJECTに所属しながらも2回目の出演となる「UKFC」に峯田は相棒とも言えるギタリストのぴーちゃんこと加藤綾太(G, Cho)を引き連れて登場。いつも夜ふかしばかりで、この日もまだ起きたばかりだという峯田は「早い時間もたまにはね」と加藤と雑談を交わすと、アコースティックギターを弾きながら「新訳 銀河鉄道の夜」を歌い始めた。がなるような峯田の声に加藤のエレキギターのアルペジオがきらめきを与え、会場は静寂に包まれた。「一緒に歌っても、シカトしても、踊っても大丈夫です。どうかそれぞれの楽しみ方で」と峯田が言うと、堰を切ったように客席から「峯田ァ!」という声が上がる。2人のしゃがれた声に相反するような、クリーンなギターサウンドが新鮮なアレンジで届けられた「NO FUTURE NO CRY」では、サビでシンガロングが巻き起こった。
「この日本においてロックは死んでなんかない」と語り始めた峯田は、忌野清志郎をはじめとするレジェンドたちの名前を挙げながら「銀杏BOYZのライブはロックをよみがえらせる儀式、全部、全員この会場によみがえらせる」と願いを込めて「GOD SAVE THE わーるど」を歌唱。祈るように歌う峯田に加藤が歌声を重ね、2本のギターが奏でる音色と2人のハーモニーが会場を満たした。ロックファンなら誰もが知る名曲「BABY BABY」で大合唱を巻き起こした峯田。最後はアコギのボディを叩いてリズムを取りながら「DO YOU LIKE ME」を歌い、「どうもありがとう」とマイクを投げ捨て、振り返ることなくステージを去った。
結成20周年のThe Novembers、圧巻のステージでカムバック
真っ黒な衣装に身を包んだ長身の4人がステージに立つ。ポップなラインナップとなった2日目の「UKFC on the Road 2025」の中で異色を放つ、今年結成20周年を迎えるバンド・The Novembersの登場だ。小林祐介(Vo, G)がギターをかき鳴らし、4人はアルバム「The Novembers」の1曲目「BOY」で演奏を開始した。吉木諒祐(Dr)の怒涛のドラミングを軸に小林、ケンゴマツモト(G)、高松浩史(B)が積み重ねる美しくも凶暴なバンドアンサンブルでオーディエンスを圧倒していくThe Novembers。マツモトのアグレッシブなギタープレイが目を引く「Rainbow」では、耳をつんざくような轟音の中で小林の咆哮が響き渡った。地鳴りのごとく響くベースの音と祭太鼓のようなフロアタムのリズム、そしてバイオリンの弓で弾くギターというトリッキーな演奏を小林は全身で受け止めながら「楽園」を熱唱。映画「AKIRA」のテーマ曲「KANEDA」のThe Novembers流カバーでは、「ラッセーラ ラッセーラ」という祭りの掛け声で、じんわりじんわりとフロアを高揚させていく。強靭なリズムがグルーヴを生み出し、点滅する照明と音の洪水の中でオーディエンスが踊り狂ったこの曲は、間違いなく今回の「UKFC」のハイライトの1つとなった。
2007年からUK.PROJECTに所属し、2013年に独立したThe Novembers。「改めまして出戻りのThe Novembersです」と自己紹介した小林は淀みのない言葉でUK.PROJECT、競演者たち、そして来場者への感謝の言葉を述べる。そしてラストソング「Morning Sun」へ。UK.PROJECT、そして「UKFC」の未来へ思いを馳せるように、開放感あふれるこの曲を晴れやかな表情で届けると、壮絶な余韻を残して颯爽と舞台から姿を消した。
WurtS、デビューから4年でメインステージへ
2021年にUK.PROJECTにオリジナルレーベルW's Projectを設立して本格的に活動を開始したWurtSは、2024年に日本武道館公演までたどり着くなど、瞬く間にスターダムを駆け上がったソロアーティスト。ギター、ベース、ドラム、そしてウサギのDJを従え、アーティストビジュアルと同じく目深なキャップをかぶってFRONTIER STAGEに登場したWurtSは、昨年リリースした「ソウルズ」でライブをスタートさせた。「Talking Box (Dirty Pop Remix)」や「僕の個人主義」といったアップテンポな楽曲の数々でフロアをさっそく踊らせるWurtS。80'sサウンドの「タイムラグ!」や、ウサギがDJブースを飛び出しダンスを踊る「SWAM」といった楽曲で、会場をさらなる盛り上がりに導いていく。
デモテープを送ったことをきっかけにUK.PROJECTに加入したWurtSは、自分がこの事務所を初めて知ったときに[Alexandros]が所属していることから安心感を得たように、「WurtSがいるなら大丈夫だと思ってもらえるアーティストになりたい」と語る。WurtSが広く知られるきっかけとなった楽曲「分かってないよ」では、表情は見えないながらも楽しげに演奏する姿が印象的で、オーディエンスとのコール&レスポンスも楽しんでいた。最後にWurtSはテレビアニメ「ダンダダン」の第2期エンディングテーマ「どうかしてる」をプレイ。オーディエンスはタオルを回し、WurtSの最新ナンバーを味わった。
the telephones&POLYSICSはFUTURE STAGEで熱演
右脛腓骨骨幹部の骨折のため、ライブ活動を休止していたthe telephonesの松本誠治(Dr)は「UKFC」が復帰後初ステージに。松本は石毛と岡本に支えられるようにして、小さなミラーボールがぶら下がるFUTURE STAGEにたどり着いた。彼らはライブアンセム「Monkey Discooooooo (2024)」をはじめとする“DISCO曲”の連発でフロアを沸かせる。7月にリリースしたばかりの新曲「SUPER DISCO!!!」では、石毛と観客が阿吽の呼吸で「DISCO!!!」と絶叫。ラストの「Love & Disco (2024)」ではTOTALFATのShunが酒を入れたショットサイズの紙コップをトレーに乗せて持ち込み、the telephonesメンバーに次々と飲ませたのち、岡本を真似て上半身裸になり「Love & Disco!!」と叫んでいた。
FUTURE STAGEのトリを務めたのはPOLYSICS。おそろいの黄色いつなぎで現れたPOLYSICSは代表曲「シーラカンス イズ アンドロイド」で、すし詰め状態のフロアを熱狂させる。イベント冒頭からバルコニー席でライブを観覧していたハヤシヒロユキ(G, Vo, Syn, Programming)は「いいバンドばっかでしょう?」と誇らしげで、懐かしい面々との競演を喜びながら「15周年おめでTOISU!!」と「UKFC」の15周年を祝福した。
UKFCと“同い年”[Alexandros]が大トリ
そして2日間の大トリを務めたのは、今年デビュー15周年を迎えた[Alexandros]。「UKFC」と“同い年”の彼らはおなじみのオリジナルSE「Burger Queen」から生演奏に切り替えるオープニングで、さっそく会場を爆発的に盛り上げる。4人が1曲目に選んだのは2010年にリリースした1stフルアルバム「Where's My Potato?」の収録曲「For Freedom」。過去の楽曲のライブアレンジを今の自分たちらしく常にブラッシュアップしている彼らはより骨太に、切れ味が鋭くなった楽曲の数々でオーディエンスを圧倒した。百戦錬磨とも言える盤石なバンドアンサンブル、そして絶好調な川上洋平(Vo, G)の歌声は会場全体を掌握するも、川上は「いい感じだけど、the telephones石毛のほうがもっと声出てましたよ!」と観客を焚きつける。人気曲「Starrrrrrr」が披露されるとこの日一番のシンガロングが巻き起こる。今年4月にリリースされた3年ぶりのフルアルバム「PROVOKE」で新境地を示した新曲「WITH ALL DUE RESPECT」では、ほかの楽曲に比べてまだなじみが薄い楽曲にもかかわらず、客席が波打つほどの盛り上がりに。ヒット曲「Kick&Spin」では、リアド偉武(Dr)が叩き出す躍動感あるビートに乗せて3本のフライングVがエッジィなサウンドを奏で、オーディエンスを大いに沸かせた。
誰にも負けないナンバーワンを目指し、この15年間を駆け抜けてきた[Alexandros]。川上は「先輩も同期もいて、今では後輩も出てきました。本当にかわいい後輩ですけど……ムカつきますね。僕らは先輩にもFUCK、後輩にもFUCKですから(笑)。ステージに立ったら戦いだと思っているので、仲間が増えないんです。それでも戦うようなライブができることがうれしい。みんなめちゃくちゃいいやつらですけど、ステージでは生意気でいさせてください! すみません、ハヤシさん!」とPOLYSICSのハヤシへ名指しで謝罪して会場を笑わせる。そして「まだイキってていいですか? 過去のもいいけど、もっともっと未来へ行こう!」と、ソングライターとしての手腕も評価されている、アニメ「ウマ娘 シンデレラグレイ」のオープニングテーマ「超える」を披露。さらに劇場アニメ「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の主題歌で、現体制で初めてリリースした思い出の曲でもある「閃光」をドロップすると、川上のきらめくようなボーカルに導かれるようにオーディエンスも歌ってみせた。「愛してるぜ、UKFC!」の言葉を残して[Alexandros]は退場。アンコールを受けて再びステージに姿を現すと、愛すべき後輩WurtSとともにコラボ曲「VANILLA SKY 2 (feat. WurtS)」を届けた。
川上洋平「もっとでっかくしましょうよ、遠藤社長!」
WurtSを送り出した川上は「もっともっとこれからデカいところにいきたいですよ。でもそれをやるのは事務所じゃなくてアーティストだと思うので我々が連れていきたいと思います。みんなももっとでっかい光景見たいじゃん? もっとでっかくしましょうよ、遠藤社長!」と、UK.PROJECTの遠藤幸一社長にメッセージを送る。そして最後に代表曲の「ワタリドリ」と「city」を披露。王者の貫禄とも言える圧巻のステージで、2日間にわたって繰り広げられてきた「UKFC on the Road 2025‐15th ANNIVERSARY‐」を締めくくった。
全組のセットリスト
𝐁𝐈𝐆𝐌𝐀𝐌𝐀 @BIGMAMAofficial
【#UKFC ライブレポート】
8/10 Zepp Haneda(TOKYO)にて開催されたUKFC on the Road 2025のライブレポートが音楽ナタリーに掲載されました
ぜひご覧ください
https://t.co/C7ijBQ5MH1
#UKFC2025 https://t.co/bUkIRdGyO5