藤田晋

サイバーエージェント藤田晋が考える配信ライブの可能性

ABEMA PPV ONLINE LIVEでオンラインライブのある日常を作っていく

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10月末にサイバーエージェントの2020年度通期決算が発表され、連結の売上高は過去最高の4785億円を記録した。そのうち、テレビ&ビデオエンターテインメント・ABEMAを中心としたメディア事業の売上は前年比22.6%増の570億円だ。そのABEMAの最近のトピックの1つとして、6月に実装された「PayPerView」(ペイパービュー)機能が挙げられる。

コロナ禍でリアルなライブが中止を余儀なくされる中、多くのアーティストが配信ライブに舵を切り、そのためのプラットフォームがいくつも確立された。ABEMA PPV ONLINE LIVE(アベマペイパービューオンラインライブ)もその1つで、6月20、21日のオンライン音楽フェス「LIVE HUMAN」を皮切りに、Da-iCE、サザンオールスターズ、ももいろクローバーZ、Perfume、Official髭男dismらさまざまなアーティストのライブを配信している。またLDHとは「LIVE×ONLINE」というシリーズでタッグを組み、いずれも大成功を収めた。コロナ禍でも成長を続けるサイバーエージェントの藤田晋代表取締役社長は、PPVの手応えや今後の展望についてどう考えているのか、話を聞いた。

取材・/ 丸澤嘉明 撮影 / 須田卓馬

PPVに非常に手応えを感じている

──開局4周年を迎えた今年4月に、名称をAbemaTVからABEMAに変えるなどのリニューアルを行いましたが、今のABEMAの状況をどう捉えていますか?

順調に拡大している最中だと思っています。開局当時から言っているんですけど、目指すは視聴習慣の獲得なんです。メディアの視聴習慣は一朝一夕でできるものではないので、積み重ねが非常に重要になってくる。そういう意味では強いコンテンツがあるときだけの一過性の盛り上がりではなく、着実にベースが拡大しています。

──そんな中、配信ライブなどをコンテンツごとに購入するPayPerView機能が6月中旬にリリースされました。もともとやる予定で準備していたのか、コロナ禍の状況でオンラインライブが増えたことを踏まえてローンチしたのか、どちらでしょうか?

コロナは関係なく準備していました。かなり早い段階で収益を増やす部門からPPV機能を作ってほしいという話は出ていたんですけど、僕があまり乗り気ではなくて。ゆっくり開発をしていたら、たまたまこのタイミングになったという経緯ですね。ただやってみて、非常によいものができたという自負はあります。例えば、音楽ライブではないですけど、3DCGを使った「Tokyo Virtual Runway Live by GirlsAward」。何もない会場なのに、すごく広い豪華なステージでやってるように見えてモデルの皆さんが見栄えする。あれはびっくりしました。

──PPVの実装を反対されていた理由は?

ABEMAはユーザー数を伸ばすフェーズだと思っていて、PPVだとクローズドになってしまうので。収益よりもサービス拡大を優先したかったということですね。

──ABEMAは広告収入と有料プラン「ABEMAプレミアム」による月額課金が収益の2本柱ですが、PPVが第3の収入源になるだろうという思惑はあったのでしょうか?

いや、なかったです。ただ6月中旬にABEMA PPV ONLINE LIVEを出して、7~9月の四半期で25億円売り上げました(※ABEMA PPVとCyberZが手がけるOPENREC.tvとの合算値)。年商で言うと100億円ペースです。いきなり100億円の商売が生まれるということは普通はありえないので、手応えは感じています。

藤田晋

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生であることに価値がある

──Netflixなどの動画配信サービスはABEMAのライバルではないと過去に発言されていますが、Streaming+といったほかのライブ配信サービスは意識されていますか?

僕自身が他社のサービスを細かく研究しているわけではないですが、類似サービスに対してはかなり強く意識するように専門の部署に言ってます。“ユーザーを集められる”ことと“決済機能”というのがプラットフォームの2大要素なんですけど、まず集客力のところでABEMAが負けていては話にならない。あと当然機能の面でもどれ1つとっても劣ってはならないということで、競合表を作って万全を期すようにしています。

──では、さまざまなライブ配信サービスがある中で、ABEMAの強みはどんなところにあるとお考えでしょうか?

総合的なサービスの質はトップクラスになっていると思います。最初の最初は他社と比べて若干機能落ちしている面も否めなかったんですが、ものすごい勢いで対応したので。それに加えて、ABEMAでやることによる集客力。単純にABEMA独占でやったほうがプラットフォームをいくつも選ぶよりもプラスであることが証明できればABEMAにコンテンツが集まってくるわけですから、課金の総額が増えるように強く意識しています。必ずしもすべてがそうなってるわけではないですが、LDHとの取り組みはうまくいってると思いますし、そういったものを増やしていきたいと思っています。

──LDH所属アーティストによるライブシリーズ「LIVE×ONLINE」は大きな話題を呼びましたね。

・LDHの新たなエンタメ施策が始動!7月に有料配信、8月以降にドームでソーシャルディスタンスライブ検討 
・LDH配信ライブ第2弾はバリボ、Happiness、スダンナユズユリー加え8夜連続で
・ジェネ、ランペ、ファンタ、バリボが「LIVE×ONLINE」第3弾でハロウィンライブ 

券売の実績を我々から言うことはできないですが、すごい数が売れましたし、1回目より2回目のほうが大きく上回ったので安心しました。やはり恐れがあったので。

──恐れというのは?

要は、初めてやったときはしばらくライブが観られなかった枯渇感と物珍しさがあって売れた可能性も否定できなかったということですね。それが2回目が初回を大きく上回る結果になったというのは非常に大きな自信になりました。LDHのオンラインライブにおけるパフォーマンスの質がすごく高くて、その質とプロ意識がリピートにつながっている感じがします。

──豪華なセットや、ストーリー性のある演出など見どころ満載でした。

なによりすごいのが、あれらのライブを生でやったということです。オンラインライブはディレイ放送、つまり事前に収録したライブが多くなりつつありますが、我々はABEMAをやっているので、生放送とそうじゃないものの価値が全然違うことをよく知っています。やはり生放送に価値がある。収録するとどうしてもライブDVDを観ているような感覚になってしまいます。ただ、多くのアーティストは生でライブをやることを嫌がるんですね。失敗したらそれもそのまま流れてしまうので。LDHとも最初は収録という話があったんですが、生でやることを決断してくれて、あのクオリティのライブをやってくれました。

──その話で言うと、アーカイブ配信も本来であれば必要ないとお考えですか?

いえ、PPVを買った方はかなりの確率で2回3回と観るので、アーカイブ配信は必要だと思っています。生で素晴らしいものを観て感動したら、翌日もう1回観たくなるんですよね。2000円なり3000円なり払っているので少しでも元を取ろうという気持ちもあるのかもしれません。ただ、それくらい価値あるコンテンツを提供できているということだと思います。面白くなければお金を払っていても繰り返し観ないので。

──アーティスト側としては、リアルのライブと別の体験を提供するために、事前に作り込んだライブを収録するというケースもあるのではと思います。

ミュージックビデオのような仕上がりの収録ライブもあって、それはそれでもちろん素晴らしいですが、そういうものはYouTubeで無料のMVを観ればいいと思ってしまいます。もちろんアーティストが収録でやると言えば了承しますけど、ABEMAをずっとやってきた立場としては、生であることに価値があると感じています。

アーティスト側の気持ちを考えた取り組み

──「LIVE×ONLINE」をPPVで配信したあとにCL(※LDHとサイバーエージェントが設立した合弁会社・CyberLDHが提供する動画配信サービス)にてメンバーがコメントするといった連携もありましたね。

本来であればライブの配信もCLでやるべきなんですが、CLにPPV機能ができてなかったのでそういう形になりました(※CLは6月15日のプレオープン時にはPPV機能はなかったものの、8月1日のグランドオープン時には実装された)。

──ほかにもNMB48の吉田朱里さん卒業コンサートの直前にABEMAで「NMB48吉田朱里あさって卒コン!さよならアイドル…卒業直前のアカリン独占60分」を、乃木坂46の白石麻衣さんの卒業コンサート直前に「乃木坂46白石麻衣卒業コンサート直前!『みんなで、じゃあね。』生放送SP」を放送したりと、ライブ本編の配信にとどまらない連携をされています。

プラットフォームを選ぶアーティスト側の気持ちを考えると、ABEMAで配信したらすごく宣伝してもらえたり、盛り上げてもらえたりしたらうれしいですよね。そういう取り組みが独占につながればいいと思っています。

──ABEMAはSNSを活用した宣伝も非常に上手で、例えばTwitterのフォロワーは181万人、公式YouTubeチャンネルの登録者数も150万人います。

我々はそもそもネットマーケティングの会社としてスタートしているので、ここは当然日本で一番強くなければいけない。専門の部署の話を聞くとトレンドをちゃんと把握していて、僕も驚くような知識がたくさんあります。そこはかなり戦略的にやっています。

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