中国映画「
ドラマ「長安二十四時」「風起洛陽~神都に翔ける蒼き炎~」などの原作者として知られるマー・ボーヨン(馬伯庸)の小説を映画化した本作。唐の天宝年間に実在した“ライチ使”の伝説をもとに、下級官吏・李善徳が南方の嶺南から数千km離れた都・長安まで新鮮なライチを届けるという前代未聞の任務に挑むさまが描かれる。監督を務めた
拍手に迎えられ登場した磯。本作の感想を問われると「中盤までのライチ運送計画はハラハラして、手に汗握る展開。最後は無常を感じさせて深みがある。面白い作品だと思いました」と述べ、「ダーポンは映画『熱烈』や、現代中国映画祭で限定公開された『いいひと』などで知られていて、すごく“熱烈”な人。原作者のマー・ボーヨンは現代にも通じるような人間関係のひだや、社会風刺を歴史ものに巧みに交える作家さんです。『長安のライチ』はそんな2人の才能が見事に合わさった作品だと思います」と言及した。
司会から、物語の時代背景を紹介してほしいとリクエストが飛ぶと、磯は「映画の最後に安禄山が反乱を起こし、長安が落ちたということが語られます。安史の乱が起こったのは史実上では755年。そこからだいたい1年前にライチ運送計画が始まるので、754年から755年までの物語なんだろうということがわかります。この時代は玄宗皇帝の治世。前半は開元の治と呼ばれる唐代の絶頂期。でも、そこに楊貴妃が現れて、彼女に入れ込んだ皇帝は政を顧みなくなる。
映画「小さき麦の花」で字幕翻訳家デビューを果たした磯。唐代の作品を翻訳したのは本作が初めてだったそう。工夫した部分を問われると「この映画は、漢文調のセリフの中にいきなり住宅ローンの話が出てきたり、現代的な言葉が突然登場するんです。そこがこの脚本の面白さ。翻訳する際には、時代がかった雰囲気を交えつつ、現代的な部分を入れていこうと、いろいろ考えながら訳していきました」と回想する。
字幕翻訳は基本的に1秒4文字というルールがあり、字幕制作は字数との闘いだという。イベント中には、中国語のセリフに含まれていたニュアンスについて磯が語る場面もあった。「例えば、役人たちが魚をいじっているシーンで『魚いじりは楽しい』といったことを言いますが、中国のスラングで『魚をいじる(摸魚)』というのは、さぼるという意味。だから『魚いじりは楽しい』というのはさぼるのが大好きということなんです」と紹介。また「運送と開運という言葉は、中国語では同じ転運という言葉を使います。だから占い師が『開運の品だ』と言う部分は、2つの意味がかかっているセリフなんです」と言及した。
司会から「ナンのようなパンが出てきますが、あれはどういった食べものなんでしょうか?」という質問が飛ぶと、磯は「あれはパンなんですが、中国語では“餅”と言います。日本語には『絵に描いた餅』という言葉がありますが、中国語にも話を広げるものの、実際には実現できないような絵空事を指す『大きな餅を描く(画大餅)』という言葉があるんです。だからパンが大きすぎて食べられないというシーンは、『大きな餅を描く』をイメージしている場面。ただ、どう見てもパンなので『絵に描いた餅』とは訳せなかったんです。でもこのニュアンス、観客の方に伝われ!と願っていました」と明かし、会場を和ませた。
ダーポンは唐の詩人・杜牧の詩の一節「一騎紅塵妃子笑」をイメージして、映画を構成したという。「映画を鑑賞し、詩から受けた影響をどのように感じたか?」と聞かれると、磯は「この詩はライチ使に関する詩なんです。『煙を上げて一騎の馬がやって来て、楊貴妃がほほえむ。しかし、誰もライチが来たとは知らない』といったような意味です。監督は馬が来て、楊貴妃が笑うという部分にインスピレーションを受けたと語っている。ですから、馬が疾走するシーンや楊貴妃の笑う口元だけ映し出す場面はこの詩をイメージしているのだと思いました」とコメント。さらに、本作に詩人・杜甫(杜少陵)が登場することに触れつつ「彼を登場させたのは、杜甫の『國破れて山河在り』という句を連想させたい意図があったのではないかと思いました」と口にした。
「長安のライチ」は全国で上映中。劇場の詳細は映画公式サイトで確認してほしい。
映画「長安のライチ」予告編
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YUKI KUROYANAGI @yukinaco05
2回目の『#長安のライチ』応援鑑賞。今作の字幕翻訳の磯さんのトークショーがとても良かった。映画にまつわる歴史や文化、Wミーニングのセリフ(言葉)の意味など、目から鱗で尚且つ貴重でとにかく素晴らしかった✨心地よい時間でした👏👏👏 https://t.co/vWVAt9FKU6