吉沢亮・河合優実ら喜びと決意を語る、日本映画批評家大賞の受賞者が集結
2025年6月9日 22:35
7 映画ナタリー編集部
第34回日本映画批評家大賞の授賞式が本日6月9日に東京・東京国際フォーラムで行われ、作品賞、監督賞、俳優賞など各賞の受賞者が出席した。
1991年に水野晴郎が発起人となり、映画批評家たちが映画人に贈る賞として設立された日本映画批評家大賞。本年度は2024年公開の日本映画作品の中から16賞・18組に授与され、選考委員には代表の島敏光のほか、伊藤さとり、新谷里映、中村梢、松崎健夫、安田佑子が名を連ねた。
作品賞
作品賞は、耳が聞こえない両親のもとに生まれ、コーダ / CODA(Children of Deaf Adults)として育った青年を主人公とした「ぼくが生きてる、ふたつの世界」。監督の呉美保は“思い入れのある映画賞”での受賞を喜ぶ。また壇上には母親役・忍足亜希子、父親役・今井彰人が再集結し、主演の吉沢亮は「家族がそろいましたね!」と声を弾ませた。
監督賞
監督賞は「あんのこと」の入江悠に。機能不全の家庭に生まれドラッグに溺れた少女・香川杏を主人公とした同作と向き合い続けてきた入江は「まだ答えは出てないんですけど、観客の方の感想を聞きながら探す旅をずっと続ける感じがします」と今の思いを伝えた。
主演賞
「あんのこと」で主演女優賞に選ばれた河合優実は「自分が誰かを演じることが、映画を作ることが、世界にとっていい働きかけになっていたらうれしい」と演じることの意義に言及する。
主演男優賞は「ぼくが生きてる、ふたつの世界」の吉沢亮。「このうえない喜びを感じます。賞に恥じないように一生懸命お芝居と向き合っていきたいと思います」と志を新たにした。
助演賞
助演女優賞を獲得したのは、「ぼくが生きてる、ふたつの世界」で主人公の母親を演じた忍足亜希子。「このように賞をいただけて感無量です」と笑顔を見せ、息子役・吉沢亮が習得した手話について「今でも鳥肌が立つくらい素晴らしかったです」と絶賛した。
助演男優賞は「ミッシング」の森優作、「まる」の綾野剛が受賞。「ミッシング」で、石原さとみ扮する主人公の弟をミステリアスに演じた森は「(演じた役に対して)こういった形で光を与えてもらえるのは、ひとつの希望だなとうれしく思います」と感謝する。綾野は撮影のため授賞式を欠席。ビデオメッセージを通し、自分が演じた役について「何かしら豊かな未来があったら良いなと思う“彼”に、このような賞をいただけて感謝しています」と口にした。
アニメーション作品賞
藤本タツキのマンガを映像化した「ルックバック」がアニメーション作品賞を受賞。監督の押山清高は「アニメーションという表現では、(実写と違って)『偶然映り込んだもの』は存在しないとされています。でも、僕自身がアニメーターとして制作していると、机に向かって絵を描くことって、まるでアスリートのように体の感覚がそのまま絵に表れているような気がするんです」と述べ、「この作品も、さまざまな感情が画面に残ればいいなと思って作りました。そうした“無意識”の部分が作品によい影響を及ぼせていたらうれしいです」と観客に語りかけた。
ドキュメンタリー賞
ドキュメンタリー賞は「大きな家」が受賞。児童養護施設で暮らす子供たちに密着し、不安と葛藤を抱えながらも成長していく彼らの日常を映し出す作品だ。監督の竹林亮は「僕が代理でトロフィーをいただいていますが、子供たちと日々向き合い続けている施設の皆さん、そして素敵な子供たちの賞だと思っています」と感謝の言葉を丁寧に紡ぐ。そして「撮影から2年経ち、子供たちも大きくなって、それぞれのストーリーは今も続いています。この会場にもみんな駆け付けて来てくれたんですけど、そんな映画になったことをうれしく思います」とまっすぐに伝えた。
新人監督賞
河合優実が主演を務めた「ナミビアの砂漠」で、山中瑶子が新人監督賞に輝いた。何に対しても情熱を持てない21歳のカナがもがく姿が描かれた同作。山中は「実際に世の中にはいると思うけど、映画の主人公としてあまり見たことがないタイプ」とカナのキャラクターについて説明し、「自分でも今後どういう映画を作っていくかわからないですが、マイペースにがんばっていきたいと思います」と自然体に宣言する。
新人俳優賞
新人女優賞(小森和子賞)には「愛のゆくえ」の長澤樹が選出された。孤独な心を抱えた少年少女を、同じく主演の窪塚愛流とともに演じた長澤。自身初の受賞ということで、トロフィーの重みを実感するように「この賞に恥じない女優を目指してこれからもがんばっていきます。これからも応援よろしくお願いします」と真摯に述べた。
新人男優賞(南俊子賞)を授与されたのは「カラオケ行こ!」の齋藤潤と、「十一人の賊軍」の本山力。変声期に悩む合唱部部長の中学生を演じた齋藤は「自分にとって大きすぎる賞ですが、この大きな力をお借りして、明日からも全身全霊で作品に向き合っていきたいです」と決意を表明。また主演・綾野剛との撮影について「剛さんは現場で会うたびに『体調どう?』『朝ごはん何食べた?』と聞いてくださり、僕が楽しくできる環境作りをしてくださいました」と感謝を込めて振り返る。
剣術家・爺っつぁん役で鮮烈な印象を残した本山は「齢55、今年で56歳になりますが、新人賞受賞の連絡が来て、いろんな意味でびっくり。生まれてきて賞なんてもらったことがないので素直にうれしいです」と胸の内を明かした。
ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞)、ダイヤモンド大賞(淀川長治賞)
ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞)に選ばれた根岸季衣。白石晃士のホラー映画「サユリ」にて“ばあちゃん”役で熱演を見せた根岸は「脚本をいただいたとき、途中で『古いロックが流れる』と書いてあって。ジャニス・ジョプリンにしましょうよと提案して遊べたのがよかったです」と裏話を披露する。
ダイヤモンド大賞(淀川長治賞)に決定した「九十歳。何がめでたい」の草笛光子は、手紙を司会者が代読することに。1953年に銀幕デビューし、川島雄三、成瀬巳喜男、市川崑ら名だたる監督たちと組んできた草笛。「今回の受賞は、これまでお世話になった監督、共演者、作品を楽しんでくださった観客の皆さんのおかげです。これからも日本の映画界がますますにぎわってくれることを願っております」としたためていた。
そのほか脚本賞は「徒花-ADABANA-」の甲斐さやか、編集賞(浦岡敬一賞)は「ぼくが生きてる、ふたつの世界」の田端華子、松永文庫賞(特別賞)は東映剣会に授与された。
岩嵜 修平 @shu_iwasaki
授賞式タイミングが遅すぎる気もするけど、良い感じのラインナップだ。『ぼくが生きてる、ふたつの世界』はマジで傑作だし、素晴らしい試みもしていた。
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