書籍「アニメーションと国家──戦うキャラクター、動員されるアニメーター」が、明日3月26日にフィルムアート社から発売される。
年間300本以上のアニメーション作品が放映される日本。1963年に放送が始まった「鉄腕アトム」以降、日本のアニメーション業界は大量生産が可能な体制を確立していく。その原動力となったのが分業体制の導入であり、大量生産に不可欠だったのがアニメーターだった。この分業体制の確立と、専門職としてのアニメーターの誕生は戦時中までさかのぼる。そして、そこで制作されたのはプロパガンダ映画だった。
本書では、国家の文化政策、アニメーターという職業の誕生、配給システムの変化、戦時下に制作された「
日本だけでなく、戦時下のフランスのアニメーションについても論じられている。国家の介入による制作体制確立だけでなく、植民地へのまなざしの変化、自国文化の優位性の確保、敵国人の描き方など、日本との共通性を明らかに。加えて、
さらに、アニメーションの舞台を巡る“聖地巡礼”や、現代のアニメーターの労働状況、宮崎の監督作「
※宮崎駿の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記
「アニメーションと国家──戦うキャラクター、動員されるアニメーター」目次
序章 アニメーションの制度化と戦争──空間の再編成の表現様式
- アニメーション史における戦争
- 戦争と文化──国家、大衆そして他者
- 空間の再編成
- 本書の構成
第1章 戦前のアニメーションとその社会的位置──個人制作から集団制作へ
- 日本におけるアニメーションの黎明期
- トーキー漫画映画の発明
- 日本初の長編アニメーション「桃太郎の海鷲」の上映
- 軍部とアニメーション
第2章 文化政策に動員されるアニメーション──他者への認識と文化の序列化
- 国家と映画
- アニメーションの文化的価値
- 文化による識別──国民の誕生
- アジア・太平洋の諸民族に対する他者像の構成
- 影絵に見出された文化の同一性
- アメリカ製アニメーションと日本文化
- 他者の二類型
第3章 アニメーターの誕生──アニメーション産業の基盤の胚胎
- アニメーション制作の分業体制
- まぼろしの軍事教育映画への手がかり
- 軍事教育映画に従事するアニメーター
- 飛行するアニメーター、視聴する兵士
第4章 境界と他者の二類型──「桃太郎 海の神兵」における空間の再編成
- 「桃太郎 海の神兵」における他者
- 同一性としてのかわいい動物キャラクター
- 立ち現れる第二の境界
- 空間の生産とアニメーション
第5章 フランスにおけるアニメーションと国家──植民地および連合国へのまなざし
- ヴィシー政権の樹立
- アニメーション制作に乗り出すポール・グリモー
- フランス芸術としてのアニメーション
- 変化する植民地へのまなざし
- 包摂する他者、排除する他者──「魔法の夜」
- 三つの空間の表象──「解放されたナンビュス」
第6章 拡張する空間とアニメーション──国家、他者そして宇宙
- 戦時下日仏の共通性
- 世界から宇宙へ
- アニメーションの制度化の契機
第7章 聖地巡礼による空間価値の創出──背景美術と能動的オーディエンス
- アニメーションの二層構造
- 聖地巡礼へのまなざし
- 背景美術の躍進
- アニメーションをめぐるアート・ワールド
- 「聖地」の創出
- 地域社会における新しい中心
第8章 現代日本のアニメーション産業とアニメーター──戦争を経て現在に
- 日本は例外か?
- アニメーターの再結集
- 現代のアニメーターの労働とその有機的つながり
- 日本のアニメーション産業はいかに維持されているのか
終章 受け継がれる「漫画映画(アニメーション)の志」──グリモー、高畑勲から宮崎駿へ
- 「やぶにらみの暴君」からの出発
- 垂直的空間表現の誕生──塔と鳥
- 「君たちはどう生きるか」に秘められたグリモー、高畑の存在
- 空間を越えるキャラクター
- 両義的他者としての鳥
- さようなら、戦争
ティグレ @Masked_Tigre
書籍「アニメーションと国家」発売、プロパガンダ作品から現代の事象まで分析 https://t.co/osnrjDsIzW