書籍「アニメーションと国家」発売、プロパガンダ作品から現代の事象まで分析

5

102

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 22 45
  • 35 シェア

書籍「アニメーションと国家──戦うキャラクター、動員されるアニメーター」が、明日3月26日にフィルムアート社から発売される。

「アニメーションと国家──戦うキャラクター、動員されるアニメーター」書影

「アニメーションと国家──戦うキャラクター、動員されるアニメーター」書影

大きなサイズで見る(全8件)

アニメーションと国家──戦うキャラクター、動員されるアニメーター

雪村まゆみ「アニメーションと国家──戦うキャラクター、動員されるアニメーター」
Amazon.co.jp

「アニメーションと国家──戦うキャラクター、動員されるアニメーター」中面

「アニメーションと国家──戦うキャラクター、動員されるアニメーター」中面[拡大]

「アニメーションと国家──戦うキャラクター、動員されるアニメーター」中面

「アニメーションと国家──戦うキャラクター、動員されるアニメーター」中面[拡大]

年間300本以上のアニメーション作品が放映される日本。1963年に放送が始まった「鉄腕アトム」以降、日本のアニメーション業界は大量生産が可能な体制を確立していく。その原動力となったのが分業体制の導入であり、大量生産に不可欠だったのがアニメーターだった。この分業体制の確立と、専門職としてのアニメーターの誕生は戦時中までさかのぼる。そして、そこで制作されたのはプロパガンダ映画だった。

本書では、国家の文化政策、アニメーターという職業の誕生、配給システムの変化、戦時下に制作された「桃太郎 海の神兵」をはじめとする作品の分析を通して、アニメーションが国民文化となっていく過程を浮き彫りに。その流れの中で、より深くアニメーションと日本の関係を捉え直していく。

日本だけでなく、戦時下のフランスのアニメーションについても論じられている。国家の介入による制作体制確立だけでなく、植民地へのまなざしの変化、自国文化の優位性の確保、敵国人の描き方など、日本との共通性を明らかに。加えて、高畑勲宮崎駿が影響を受けたポール・グリモーの「やぶにらみの暴君王と鳥」にも触れ、戦時中から続くアニメーションにおける空間表現の特質を照らし出す。

さらに、アニメーションの舞台を巡る“聖地巡礼”や、現代のアニメーターの労働状況、宮崎の監督作「君たちはどう生きるか」に言及。現代におけるアニメーション文化の展開についても考察する。編著は社会学者の雪村まゆみ、装画は西島大介が担った。価格は税込2860円。

※宮崎駿の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記

「アニメーションと国家──戦うキャラクター、動員されるアニメーター」目次

序章 アニメーションの制度化と戦争──空間の再編成の表現様式

  1. アニメーション史における戦争
  2. 戦争と文化──国家、大衆そして他者
  3. 空間の再編成
  4. 本書の構成

第1章 戦前のアニメーションとその社会的位置──個人制作から集団制作へ

  1. 日本におけるアニメーションの黎明期
  2. トーキー漫画映画の発明
  3. 日本初の長編アニメーション「桃太郎の海鷲」の上映
  4. 軍部とアニメーション

第2章 文化政策に動員されるアニメーション──他者への認識と文化の序列化

  1. 国家と映画
  2. アニメーションの文化的価値
  3. 文化による識別──国民の誕生
  4. アジア・太平洋の諸民族に対する他者像の構成
  5. 影絵に見出された文化の同一性
  6. アメリカ製アニメーションと日本文化
  7. 他者の二類型

第3章 アニメーターの誕生──アニメーション産業の基盤の胚胎

  1. アニメーション制作の分業体制
  2. まぼろしの軍事教育映画への手がかり
  3. 軍事教育映画に従事するアニメーター
  4. 飛行するアニメーター、視聴する兵士

第4章 境界と他者の二類型──「桃太郎 海の神兵」における空間の再編成

  1. 「桃太郎 海の神兵」における他者
  2. 同一性としてのかわいい動物キャラクター
  3. 立ち現れる第二の境界
  4. 空間の生産とアニメーション

第5章 フランスにおけるアニメーションと国家──植民地および連合国へのまなざし

  1. ヴィシー政権の樹立
  2. アニメーション制作に乗り出すポール・グリモー
  3. フランス芸術としてのアニメーション
  4. 変化する植民地へのまなざし
  5. 包摂する他者、排除する他者──「魔法の夜」
  6. 三つの空間の表象──「解放されたナンビュス」

第6章 拡張する空間とアニメーション──国家、他者そして宇宙

  1. 戦時下日仏の共通性
  2. 世界から宇宙へ
  3. アニメーションの制度化の契機

第7章 聖地巡礼による空間価値の創出──背景美術と能動的オーディエンス

  1. アニメーションの二層構造
  2. 聖地巡礼へのまなざし
  3. 背景美術の躍進
  4. アニメーションをめぐるアート・ワールド
  5. 「聖地」の創出
  6. 地域社会における新しい中心

第8章 現代日本のアニメーション産業とアニメーター──戦争を経て現在に

  1. 日本は例外か?
  2. アニメーターの再結集
  3. 現代のアニメーターの労働とその有機的つながり
  4. 日本のアニメーション産業はいかに維持されているのか

終章 受け継がれる「漫画映画(アニメーション)の志」──グリモー、高畑勲から宮崎駿へ

  1. 「やぶにらみの暴君」からの出発
  2. 垂直的空間表現の誕生──塔と鳥
  3. 「君たちはどう生きるか」に秘められたグリモー、高畑の存在
  4. 空間を越えるキャラクター
  5. 両義的他者としての鳥
  6. さようなら、戦争

あとがき

索引

この記事の画像(全8件)

読者の反応

  • 5

ティグレ @Masked_Tigre

書籍「アニメーションと国家」発売、プロパガンダ作品から現代の事象まで分析 https://t.co/osnrjDsIzW

コメントを読む(5件)

リンク

関連商品

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャの映画ナタリー編集部が作成・配信しています。 桃太郎 海の神兵 / やぶにらみの暴君 / 王と鳥(デジタルリマスター版) / 君たちはどう生きるか / 宮崎駿 / 高畑勲 / ポール・グリモー / 西島大介 の最新情報はリンク先をご覧ください。

映画ナタリーでは映画やドラマに関する最新ニュースを毎日配信!舞台挨拶レポートや動員ランキング、特集上映、海外の話題など幅広い情報をお届けします。