映画「
本作の舞台は、ウイルスの蔓延で人口が激減し、延命措置として上層階級の人間だけに自分と同じ見た目の“それ”の保有が許された世界。劇中では、死が身近に迫る新次が、自分と同じ姿だが異なる内面を持つ“それ”に心を乱されていくさまが描かれる。井浦が新次を演じ、水原が臨床心理士のまほろ、三浦が謎の「海の女」、斉藤が新次の母、永瀬が新次の担当医に扮した。
井浦は甲斐から本作の構想を聞いた際のことを振り返り「物語をかいつまんでお話しいただいたんですが、確実に1人2役を演じることになるなと。当時はまだそういった経験がなかったので、絶対にやりがいしかないだろうなと思いました」と述べ、「前作の『赤い雪 Red Snow』に出演したときにも思ったんですが、監督の作品の世界に没入するのは俳優として幸せなこと。苦しくて、具合が悪くなってもすべてが喜びへと変わっていく。『徒花』のお話を伺ったときは、不安も感じつつ、監督のもとでむちゃくちゃやらせてもらえるうれしさも感じました」と率直に語る。これを横で聞いていた甲斐は「新さんが楽しそうにいろんなお芝居の提案をしてくださって。イメージ力がすごいんです。話している間にヒントをいただいて、これは形にしようと思いました」と続いた。
水原はまほろを演じるにあたり、複数の臨床心理士にインタビューをしたそう。「本当に大変なお仕事なんです。患者さんと近くなればなるほどディープな話になっていくし、それをどこまで受け止めて、寄り添って、お仕事としてまっとうするのか? 距離感が絶妙だと思いました」と言葉に力を込める。初共演となった井浦については「もう天使です!」と口にし、「まほろちゃんは複雑な子だったので、自分の中でも葛藤があったりして。私があからさまに不安そうにしていたら井浦さんが横に来て『大丈夫、大丈夫だよ』って。それで力を抜くことができました」と感謝。一方の井浦は「希子さんは本当に真面目です。初めての顔合わせのときも、臨床心理士についての話が止まらなかった。熱いなーって思いました。現場を最大限楽しみながら苦悩していて素晴らしかった」とたたえる。
また井浦は撮影を回想し「ラッキーなことにほとんどの方と共演するシーンがあったんです。ただ斉藤さんとはどうすることもできなかった。いてもたってもいられなくて、撮影現場に向かっていました」と明かす。斉藤は「あー、いるー!ってびっくりしました。お会いできると思ってなかったのでうれしかったです」と声を弾ませ、「私が演じた母親は、新次の人間形成に深く関わる、幼少期の彼に傷を与えてしまった存在。心の中で痛い思いをしながら撮影に臨みました」と思い返した。三浦は本作の脚本を初めて読んだ際のことを振り返り「心を問われているような鋭さがあって、体温が変化していく感覚がありました」と伝え、「(海の女を演じるにあたり)いっぱい考えましたけど、現場の雰囲気からいただいたものでできあがっていきました」と言及する。
永瀬は出演者としてだけではなく、オフィシャルカメラマンとして本作に参加した。「役をまとった皆さんをカメラで収められたのは幸せでした。次回もスチルとして呼んでください!」と甲斐に声をかける。甲斐は「永瀬さんがスチルで入っているのを知らないスタッフが、まるで甲斐組のスタッフのように指示しちゃったりして(笑)。なのに優しいんです」と申し訳なさそうに、裏話を披露した。
最後に井浦は「監督の問いかけは、鋭くて、刃で突き刺してくるような衝撃がある。もちろん痛みや苦しさもありますが、痛みを超えたその先に、素敵なものが必ず待っているんじゃないかと思います。甲斐ワールド、全身で浴びてください」とメッセージを贈る。甲斐は「このキャストの皆さんが出ていなかったら、まったく違う映画になっていたと思います。今、撮ることができて本当によかった。お芝居のすごさに衝撃を受けてもらえると思います。スクリーンと対話して、思ったことを教えていただいたらうれしいです」と呼びかけた。
「徒花-ADABANA-」は、10月18日よりテアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテほか全国で順次公開。
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