「壁」「砂の女」で知られる安部公房が1973年に発表した同名小説をもとにした本作。人間が望む最終形態であり、すべてから完全に解き放たれた存在の“箱男”は、ダンボールを頭からかぶって都市を徘徊し、のぞき窓から一方的に世界をのぞき、ひたすら妄想をノートに記述する。街で偶然目にした箱男に心を奪われたカメラマンの“わたし”は、数々の試練と危険が襲いかかる中、自らも段ボールをかぶって本物の箱男になることを目指す。
「箱男」は1997年に映画の製作が決定していたが、不運にもクランクイン前日に撮影が突如頓挫し、幻の企画となっていた経緯がある。27年を経て実現した本作には、永瀬のほか
このたび到着した映像には、同映画祭のレッドカーペットでサインに応じる石井や、監督・キャスト陣によるワールドプレミア後の舞台挨拶、彼らが現地のメディアからインタビューを受ける様子が映し出される。続く本編映像には、「蔑まれるのはお前たち。こっちは何でもお見通し」というナレーションとともに、小窓から都市を見つめる箱男の姿が収められた。
「箱男」は2024年に全国で公開。なお、安部は本日3月7日で生誕100周年を迎えた。
映画「箱男」本編映像&ベルリン国際映画祭ダイジェスト
永瀬正敏 コメント
ドイツの地でクランクイン前日
僕の目の前で撮影中止が宣告され、全身の力が抜け去って、何も考える事が出来なくなったあの日から、27年の月日が流れました
その間も何度も何度も「わたし」が復活しそうになっては、僕の前から消えていってしまっていました
でも、石井岳龍監督は32年前のあなたとの約束を決して諦めていませんでした
非常に奇天烈で、しかし本質をずばり突いているこの素晴らしい原作を、長い時間をかけ映像化した石井監督は、満員の観客の皆さんの前で「新しいマジカルミステリーツアーをお楽しみ下さい」と上映前に挨拶されました
上映が終わり、僕は思わず、お隣の石井監督の手を渾身の力で握り締めていました(後で聞くと本当は手じゃなかったみたいですが、、、)
深夜のドイツ・ベルリンの会場に響いた歓声と鳴り止まぬ拍手の音は届いていたでしょうか?
この夏、日本の皆さんへ、やっとやっと、やっと!
27年かかった「新しいマジカルミステリーツアー」を体感していただけます
どうか天国から見守っていてください
安部公房さん
「箱男」を残してくださりありがとうございました
そして100歳のお誕生日、おめでとう御座います!
「わたし」こと 永瀬正敏より
石井岳龍 コメント
小説「箱男」は読者の数だけ内容の解釈が違ってくるような、とても摩訶不思議で実験的な純文学作品ですが、原作者ご本人からは「映画にするのであれば娯楽にして欲しい」という予想もできなかった謎かけ難題をいただき、32年にわたり映画化の試行錯誤を重ね続けてきました。
今回、遂に完成作品が世界に放たれるのは、非常に優れたプロデュースチーム、非常に優れた俳優チーム、非常に優れたスタッフチームの大いなる創作努力の集積の結果ですし、「箱男」世界が時代にシンクロする事が感慨深いです。
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石井岳龍の監督作「箱男」ベルリン映画祭での永瀬正敏ら捉えた映像&本編の一部解禁 https://t.co/vkr79tyoSi
原作:安部公房『箱男』新潮文庫