映画「
瀬尾まいこの小説を映画化した本作では、パニック障害とPMS(月経前症候群)を抱えた者同士が、少しずつ互いの殻を溶かし合っていくさまが描かれる。パニック障害を患い、さまざまなことをあきらめている山添くんを
撮影中に印象に残ったエピソードを問われた三宅は「山添くんが発作を起こしてしまう場面は、撮影していてつらかったんです。監督は泣いたり笑ったりしてはいけないんですが、非常につらくて、撮影を止めて帰ろうよと思ってしまうぐらい。切羽詰まっているときに足立智充さんがぽんと肩に手を置いてくれて、すごいなと。主演のお二人もスタッフも、どういう感じでみんなが働いているかな?というのを見守っている現場でした」と振り返る。
主演を務める松村と上白石の自然な演技が印象に残ったという観客から「それは2人の役作りによるものなのか、演出によるものなのか?」という質問が飛ぶと、三宅は「99.8%ぐらい彼ら2人の役作りによるものです」と回答し、「お二人には事前に丁寧に役を研究していただきました。ただ準備すればするほどいくつかの選択肢の中でどれがベストなのかわからなくなる。そこを最後に一緒に相談させてもらう形でした。あの2人でなければ、自然で身近に感じられるような映画にならなかったと思います」と賛辞を贈った。
前作「ケイコ 目を澄ませて」では聴覚障害者のボクサー・小河ケイコ、本作ではパニック障害、PMS(月経前症候群)を抱えた山添くんと藤沢さんを描いた三宅。両作に取り組もうと思ったきっかけを尋ねられると「ケイコの耳が聞こえないから、山添くんと藤沢さんがパニック障害とPMSを抱えているから取り組もうと思ったわけではありません。3人の主人公に自分もそうありたいな、素敵だなと思える魅力を感じたので、それに引っ張ってもらって映画を作りました」と真摯に語り、「藤沢さんは山添くんがパニック障害だと知って、じゃあ何かできることがあるんじゃないか?と小さなアクションを起こしていく。そのアクションが場合によっては間違っていたりして、そこにチャーミングさも感じました」と述べる。そして「瀬尾さんの書かれるおしゃべりは面白いんです。それぞれが思ったことをしゃべっていく中で、どんどん伸び伸びしていく。会話の多い作品を撮ってこなかったんですけど、チャレンジしてみたいと思いました」と述懐した。
イベント中盤には「小説では過去のこととして書かれていることが映画では現在のこととして描かれているため、より生々しく感じた」という感想が飛んだ。三宅は「小説の場合だと時制があちらこちらに飛んでも、現在として読める。ただ映画の場合は“ここから回想シーンです”というのをやらなくてはならない。そういうもので温度や鮮度が失われる、苦しみが見えなくなるのはもったいないと思いました」と意図を明かす。
最後に三宅は「パニック障害を抱えた山添くんは映画館に行けない人物。じゃあどういう映画を作ろうかというのが大きなポイントでした」と回想。「あらゆる人が映画館に来れるわけではないですが、周りの友人で最近映画館に行ってないという方がいたら、『この作品は映画館で観たほうがいいよ』と言っていただければ」と呼びかけ、イベントの幕を引いた。
「夜明けのすべて」は2月9日より全国でロードショー。なお本作は、現地時間2月15日から25日までドイツ・ベルリンで開催される第74回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門に正式出品される。
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