PFFアワード2023で「リテイク」がグランプリに、チョーキューメイ麗の出演作

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第45回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)のコンペティション、PFFアワード2023の表彰式が本日9月22日に東京のコートヤード・マリオット銀座東武ホテルで開催。中野晃太が監督、チョーキューメイの麗(うらら)とタカノ アレイナが出演した「リテイク」がグランプリを獲得した。

左からPFFアワード2023で審査員を務めた石井裕也、グランプリを獲得した「リテイク」監督の中野晃太、キャストの麗とタカノ アレイナ。

左からPFFアワード2023で審査員を務めた石井裕也、グランプリを獲得した「リテイク」監督の中野晃太、キャストの麗とタカノ アレイナ。

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自主映画のコンペティションを中心に、“映画の新しい才能の発見と育成”をテーマに掲げて1977年にスタートした同映画祭。自主映画を対象としたコンペティション・PFFアワード2023では、557本の応募作品から22本が入選した。入選作を手がけた監督の平均年齢は26.1歳で、最年少は20歳、最年長は35歳。分数は平均40分で、最短4分、最長110分だ。本アワードの最終審査員は石井裕也石川慶、岸田奈美、國實瑞惠、五月女ケイ子が務めた。

「リテイク」場面写真

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「リテイク」では、思いを寄せる遊に自主映画のカメラマンを頼まれた景と、その仲間たちが映画作りをするさまが描かれる。石井は「映画、時間、青春との戯れ方が面白かったです。それが不思議な魅力につながったのかなと思います。その面白さが続いて、ドキドキしながら最後まで観ることができました。虚実入り乱れる物語構造もさることながら、一番の魅力は俳優の躍動です。プロが狙ってもできない配役とバランスで、これが自主映画の魅力だと。この作品は僕が推しました」と太鼓判を押した。

PFFアワード2023でグランプリを獲得した「リテイク」監督の中野晃太。

PFFアワード2023でグランプリを獲得した「リテイク」監督の中野晃太。[拡大]

PFFアワード2023でグランプリを獲得した「リテイク」キャストの麗。

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PFFアワード2023でグランプリを獲得した「リテイク」キャストのタカノ アレイナ。

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「信じられないです」と笑顔を見せた中野は「高校で映像制作を教えていたんですが、その終了制作で麗が大作を作っていて触発されました。この作品では麗は出番が多く、しんどかったと思います。アレイナはムードメイカーで、彼女が現場にいるとみんな安心するんです。2人のおかげでこの作品が生まれたし、映画作りを支えてくれました」「ほかのキャストのみんなも、相談しながらシナリオを書き加えてくれてすごくうれしかった。改めて感慨深く思うし、支えてくれたいろんな方に深くお礼を申し上げます」と述懐。麗はPFFに作品を応募した経験があり「1次審査を通過した思い出があります。今回中野監督がPFFアワードのグランプリを受賞ということで、めちゃくちゃうれしい気持ちです。でも(作品タイトルの通り)本当にリテイクが多くて、私とアレイナは早くしてくれないかなと思っていました(笑)」と冗談を飛ばして笑いを起こす。アレイナも「賞を獲れなくては許せないというくらい時間が掛かりましたが、賞をいただけたので……許します。ありがとうございました」と乗って、チームの仲の良さを垣間見せた。

「ふれる」場面写真

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準グランプリは高田恭輔の監督作「ふれる」に決定。作中では数年前に母を亡くした小学生・美咲が、陶芸工房で遊ぶうちに喜びを感じるようになっていく様子が映し出される。國實は「ある程度人生経験がある方だと思ったら、21歳だと知って驚きました。コロナ禍ではこういった繊細な人間関係を撮るのは大変だったのではないでしょうか。(主演の)鈴木唯ちゃんを発見したことが大勝利につながったのだと思います。触れることによって彼女が成長していく、心が回復していくことがとても丁寧に描かれていました。準グランプリというより監督賞だと言いたいくらいです。これからも人間の機微を大事に、私たちの琴線に触れるような作品を作り続けてください」と激励する。

PFFアワード2023で準グランプリを受賞した「ふれる」監督の高田恭輔。

PFFアワード2023で準グランプリを受賞した「ふれる」監督の高田恭輔。[拡大]

高田は脚本には出来事だけを記し、セリフは現場で俳優とともに考えるスタイルで今作を生み出した。「実は上映初日の直前でコロナにかかってしまって、開催期間のほとんどを自宅療養していたんです。そのとき、一人なんだとすごく感じました。こういう映画制作の仕方をするようになったのも、コロナ禍で部屋に一人でいて、誰とも話せなかったことがきっかけです。主人公の女の子に掛けたい『一人ぼっちじゃないよ』という言葉も、本当は自分自身に言いたかったことなんじゃないかと」と振り返り、「なぜ映画を作るのか考えると、一人は寂しくて孤独でつらいから。コロナのときに自分を支えてくれたのは、映画を通して出会った人たち。彼らとの時間を思い返して気持ちが和らぎました。これからも『一人じゃない』と言うために映画を作っていきます」と語った。そのほかの受賞結果は下記の通り。

審査員を務めた石川慶。

審査員を務めた石川慶。[拡大]

総評で石川は「大学時代に自主映画を何本か撮りました。あの頃は長編デビューはPFFでスカラシップを獲得してというのが唯一の方法で、映研のみんなもそれを目指していて。でも僕は送れなかったんです。人に見せていろいろ言われるのが怖かった。送れなかったことがずっとコンプレックスで、僕はぴあ的(な監督)でないと自虐していたんですね。だから今回皆さんの作品を観てうらやましいと思ったし尊敬します。映画を人に観てもらうとすごく心無いことを言われることもあるんですが(笑)、それだけ入り込んでくれたということ。鉄を鍛えるように、映画は観てもらってどんどん強くなっていく。皆さんもどんどん作って見せていってほしいです」とエールを送った。

審査員を務めた石井裕也。

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PFFアワード2023表彰式の様子。

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また石井は「(6月に)亡くなった中島貞夫さんは僕の学生時代の先生でした。中島さんから『卒業制作は、世界に対する最初の所信表明』と言われて武者震いしたのを覚えています」「応募作品の中には意味のよくわからない珍品もあったかもしれないですが、それでいいんです。作家の切実な問題意識や表現欲求があるなら、たとえ誰にも理解されなくてもそれが存在すべきだと思う。表現者の皆さんには、自分が面白いと思う感性を信じてほしいです」と総評を結んだ。

第45回ぴあフィルムフェスティバルは明日9月23日まで東京・国立映画アーカイブで実施されたのち、10月14日から22日まで京都・京都文化博物館でも開催される。入選作はDOKUSO映画館、U-NEXTで10月31日まで配信。またグランプリを受賞した「リテイク」は10月23日開幕の第36回東京国際映画祭で上映される。

※高田恭輔の高は、はしごだかが正式表記

第45回ぴあフィルムフェスティバル2023

2023年9月9日(土)~23日(土)東京都 国立映画アーカイブ
2023年10月14日(土)~22日(日)京都府 京都文化博物館
※いずれも月曜休館

PFFアワード2023 受賞結果

グランプリ

「リテイク」(監督:中野晃太)

準グランプリ

「ふれる」(監督:高田恭輔)

審査員特別賞

「うらぼんえ」(監督:寺西涼)
「鳥籠」(監督:立花遼)
「リバーシブル/リバーシブル」(監督:石田忍道)

エンタテインメント賞(ホリプロ賞)

「完璧な若い女性」(監督:渡邉龍平)

映画ファン賞(ぴあニスト賞)

「じゃ、また。」(監督:石川泰地)

観客賞

「移動する記憶装置展」(監督:たかはしそうた)

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