東京国際映画祭で「ザ・ビースト」がグランプリ・監督賞・男優賞の3冠

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第35回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが本日11月2日に東京・東京国際フォーラムで行われ、各部門の受賞結果が発表された。

左から東京都知事の小池百合子、ロドリゴ・ソロゴイェンに代わって登壇したラテン・ビート映画祭プログラミングディレクターのアルベルト・カレロ・ルゴ、ジュリー・テイモア。

左から東京都知事の小池百合子、ロドリゴ・ソロゴイェンに代わって登壇したラテン・ビート映画祭プログラミングディレクターのアルベルト・カレロ・ルゴ、ジュリー・テイモア。

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ロドリゴ・ソロゴイェンによるビデオメッセージ。

ロドリゴ・ソロゴイェンによるビデオメッセージ。[拡大]

コンペティション部門の東京グランプリ / 東京都知事賞に選ばれたのは、スペインの人里離れた山間の村を舞台に、農耕生活を始めたフランス人の中年夫婦と地元の有力者とのあつれきを描いた心理スリラー「ザ・ビースト」。審査委員長のジュリー・テイモアは同作を「心理スリラーであり、深く感動的なラブストーリーであると同時に、階級の格差、外国人排斥、都市と農村の隔たりについてを重層的に解説する並外れた映画。まさに傑作です」とたたえる。

ドゥニ・メノーシェによるビデオメッセージ。

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「ザ・ビースト」(c)Arcadia Motion Pictures, S.L., Caballo Films, S.L., Cronos Entertainment, A.I.E, Le pacte S.A.S.

「ザ・ビースト」(c)Arcadia Motion Pictures, S.L., Caballo Films, S.L., Cronos Entertainment, A.I.E, Le pacte S.A.S.[拡大]

また同作からはロドリゴ・ソロゴイェンが最優秀監督賞、ドゥニ・メノーシェが最優秀男優賞に選出。メノーシェはビデオメッセージで「また日本に行くことを楽しみにしています。いつか日本で映画を作りたいと思います。ありがとうございます」と喜び、ソロゴイェンも「2つの賞を受賞できることを心より光栄に思います。授賞式に参加できないのは残念ですが、『ザ・ビースト』や映画祭、そして素晴らしい東京という街を楽しんでいただければと思います。どうか皆様、良い夜を」と来場者にメッセージを贈った。

マーサ・ヘジャーズィ

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審査委員特別賞は「第三次世界大戦」に。第2次世界大戦を扱った映画のヒトラー役の俳優が降板し、エキストラで参加していた日雇い労働者が代役に抜擢されるブラックコメディだ。授賞式に登壇したキャストのマーサ・ヘジャーズィは、監督のホウマン・セイエディのメッセージを代読。セイエディは「あなた方と一緒にいられなかったこと、あなた方の文化や伝統に触れられなかったのはとてもつらいことです。しかし私はもう何年も前から皆さんの声を聴いているのです。俳句を詠むたびに、村上春樹やカズオ・イシグロの本を開くたびに、黒澤映画を観るたびに、私は皆さんのことを理解できます」と日本の観客に向けてコメントした。

今泉力哉

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野上照代

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最優秀女優賞はマヌエラ・マルテッリ監督作「1976」のアリン・クーペンヘイム、最優秀芸術貢献賞は「孔雀の嘆き」がそれぞれ受賞。そして観客賞は稲垣吾郎の主演作「窓辺にて」へ。監督の今泉力哉は稲垣が新型コロナウイルスに感染して授賞式に登壇できなかったことに触れながら「戦争だけじゃなく、コロナもそうですし、世界にはいろんないろんな問題がありますが、そこにある小さな喜びとか、そういうものについてこれからも自分なりにできることを考えていこうと思います」と述べた。

また今年は、特別功労賞が野上照代に贈られた。野上は1950年、黒澤明の「羅生門」にスクリプターとして参加。その後も「生きる」以降の全黒澤作品に、記録、編集、制作助手として関わった。黒澤明賞が復活した今年、長年の映画界への貢献が評価されての受賞だ。野上は「映画という表現をこれまで続けてくれた人たちに感謝しますよ。いろんな表現があるけど、やっぱり映画ほどリアルで具体的で、真実に迫る、素晴らしい表現はないと思いますね」と挨拶した。

最後にテイモアが総評として「経験豊かなフィルムメーカーたちがコロナの中で、そして資金集めが容易ではない状況でも、想像力を駆使して新たな作品を制作されていることを素晴らしいと感じます」と述べる。映画祭チェアマンの安藤裕康は、映画祭への来場者が昨年の倍以上になったことを来場者に報告しつつ、「いろいろな場所でイベントを実施させていただき、映画祭としての存在感、華やかさを増すことができたのではないかと思います」と振り返り「今、日本は国力が弱くなっているのではないかとか、自信をなくしている状況でございますけど、私は芸術文化に関する限り、まだまだ日本は世界で勝負できるというふうに思っております。東京国際映画祭は、映画を通じて世界との架け橋になりたい。これからも飛躍していきたいと思っております」と映画祭を締めくくった。

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第35回東京国際映画祭 受賞結果

コンペティション部門

東京グランプリ / 東京都知事賞

「ザ・ビースト」(監督:ロドリゴ・ソロゴイェン

審査委員特別賞

「第三次世界大戦」(監督:ホウマン・セイエディ) 

最優秀監督賞

ロドリゴ・ソロゴイェン「ザ・ビースト」

最優秀女優賞

アリン・クーペンヘイム「1976」

最優秀男優賞

ドゥニ・メノーシェ「ザ・ビースト」

最優秀芸術貢献賞

「孔雀の嘆き」(監督:サンジーワ・プシュパクマーラ)

観客賞

窓辺にて」(監督:今泉力哉

アジアの未来部門

アジアの未来作品賞

「蝶の命は一日限り」(監督:モハッマドレザ・ワタンデュースト)

Amazon Prime Videoテイクワン賞

該当なし

特別功労賞

野上照代

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読者の反応

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🌏️elikotta エリコッタ🍢@ PugetSound🌊🌲🚢🍀🕊️ @erikottafambam

#東京国際映画祭 最終日

#東京グランプリ
#最優秀監督賞
#最優秀男優賞
3冠に輝く🏆️
#ザ・ビースト

美しい自然の中の不穏な気配に終始緊張😅
夫婦愛 兄弟愛 親子愛…💕
それぞれの正義追及が細やかで
激論シーン良かったです🥰🥇🙏

https://t.co/nFKWgQk9li

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#TheBeasts https://t.co/IZ9uQKS4wT

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