是枝裕和がホアン・シーとトーク、台湾でのゲリラ撮影に「東京では絶対無理」

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トークシリーズ「『アジア交流ラウンジ』ホアン・シー × 是枝裕和」が本日11月2日に東京都内で行われた。

「『アジア交流ラウンジ』ホアン・シー × 是枝裕和」の様子。左から是枝裕和、オンラインで参加したホアン・シー。

「『アジア交流ラウンジ』ホアン・シー × 是枝裕和」の様子。左から是枝裕和、オンラインで参加したホアン・シー。

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第33回東京国際映画祭の新企画であり、アジア各国・地域を代表する映画監督と日本の第一線で活躍する映画人が語り合う場としてスタートした「アジア交流ラウンジ」。2回目となる今回はホウ・シャオシェンの監督作「黒衣の刺客」に助監督として参加し、「台北暮色」で長編監督デビューを果たしたホアン・シー是枝裕和のリモートトークが実現した。

ホアン・シー

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是枝は「ホアン・シーさんとお話ししたいと思ったのは『台北暮色』が本当に素晴らしかったからです」と述べ、「もう1つは2人でホウ・シャオシェンのことを話したいと思ったから」とコメント。一方のホアン・シーは「是枝監督が私の映画を観てくださったと知り、ドキドキしています」と笑みをこぼした。

是枝裕和

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東京フィルメックスで上映された際には「ジョニーは行方不明」という原題に近いタイトルが付いていた「台北暮色」。是枝に「タイトルが変更になったことをどう思いますか?」と問われたホアン・シーは「素敵なタイトルだと思いました。ホウ・シャオシェン監督も、エドワード・ヤン監督の『台北ストーリー』から発想したタイトルじゃないか?とおっしゃっていました」と回答する。是枝は「僕も海外で自分の作品がかかるときに経験したのですが、考案されたタイトルがオリジナルの題名以上に本質を指すことがあるんです。タイトルに『暮色』という色を示す漢字が入っている。観終わったあとに、監督が描きたいものを『台北暮色』というタイトルがよく表していると気付きました」と伝えた。

「台北暮色」で一番印象に残ったシーンとして是枝は、リマ・ジタン演じるシューが逃げたインコを探しながら街を歩く場面を挙げ、「カメラが引いて、すごくたくさんの緑の中でシューが歩く姿を見せていく。街に響いている音が聞こえてきて、この映画は何を観るべき映画なのか、すごく納得感があった」と感想を語る。ホアン・シーは「普段は木の高さを意識しませんが、あのアングルから木を捉えると人間がとても小さく見える。とても好きなシーンです」と返した。是枝は「この映画の特徴は光とともに、音なんですよね。乗り物の音、生活の音、遠くから聞こえてくる人形劇の楽器の音。遠近感の設定が見事だなと思いました」と話し、「主人公がどういう音に出会うのか、どれぐらい脚本に書かれていたんですか?」と疑問を投げかける。ホアン・シーは「ベーシックなものは脚本の中にありました。ただ、映画を撮り終えて、ミキシングの段階で台湾の音を改めて発見しました」と言及した。

「台北暮色」では車がエンストを起こし、後続車両が進めなくなる場面が描かれる。「あれは許可を取ったんですか? ゲリラ撮影ですか?」と興味津々の是枝。ホアン・シーが「ゲリラで、5テイク撮りました」と答えると、是枝は驚いた様子を見せ「絶対1テイクだと思った。5回って! いい街ですね。東京では絶対無理だな(笑)」とこぼし、「参考にします!」と付け加えて会場に笑いを起こした。

自身の父親が台湾で生まれたという是枝。「台北は路地を一歩入ると将棋をしている人やお茶を飲んでいる人がいて、家と外の境が明確ではない場所がある。一方で中心部は大都市。いろんな顔を持っていて、それが魅力だと思っています」と言い、「台湾は僕にとって父親の生まれ故郷であるだけでなく、何か安心する場所なんです。それが見事に作品の中で表現されていて感動しました」とたたえた。またホアン・ユエン演じるリーが自転車で水たまりの中を走り回るシーンが好きだという是枝が「あれは脚本の中になく、その場で撮ったと聞きました。僕の経験上、そういうシーンは残さない。だから同業者として感心しました」と述懐すると、ホアン・シーは撮影監督のヤオ・ホンイーのアイデアだったことを明かし「ヤオさんはホウ・シャオシェン監督の現場を知っている人なので、撮らなければいけないものを体でわかっている人なんです」と説明する。

イベント中盤では2人でホウ・シャオシェンについて語り合う場面も。彼から受けた影響に関してホアン・シーは「若い頃は監督が現場でしていることの意味がわからなかったんです。でも『台北暮色』を撮り終えた際に、ずっと影響を受け続けていたことに気付いたんです。作品が完成したときに、自分の作品はこんなに文芸路線だったのかとショックを受けました」と笑う。そして「ホウ・シャオシェン監督は『アクション』を言わない。なんとなく始まるんです。待ち時間もすごく長い。なぜそんなことになるのか若い頃はわかりませんでした(笑)」と裏話を披露した。これには是枝も笑いながらうなずき「1993年頃、台湾でCMの撮影現場を見学したんです。そのときもいつ始まったんだかわからないまま撮影が終わっていました」と回想した。

なおイベントのオンライン配信後には、2人が記者からの質問に答える時間も設けられた。リモートで映画祭を開催する利点は何か?と質問が飛ぶと是枝は「今回もイタリアから感想が届いている。こういうのはいいことですね」と返答しながらも、「映画祭というのはその街に行って、人に会って、ごはんを食べて、匂いを感じるもの。映画祭は街の記憶とともにあるものなんです。だから東京国際映画祭ももっと匂いのする映画祭にしたいと考えています」と意気込んだ。

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