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「東京干潟」村上浩康が新藤兼人賞の金賞に、「100歳でもドキュメンタリーを」

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2019年度新藤兼人賞の授賞式の様子。左から河村光庸、村上浩康、田中征爾。

2019年度新藤兼人賞の授賞式の様子。左から河村光庸、村上浩康、田中征爾。

2019年度新藤兼人賞の授賞式が、本日12月6日に東京・如水会館で開催された。

1996年に設立された本賞は「この監督と組んで仕事をしてみたい」「今後この監督に映画を作らせてみたい」というプロデューサーたちの観点から、その年度でもっとも優れた新人監督を選出する映画賞。本年度は2018年12月から2019年11月に劇場公開された新人監督による長編作品230本が選考対象となった。

金賞は「東京干潟」「蟹の惑星」を手がけた村上浩康のもとへ。村上は「ところどころでいろんな方のご協力はいただいたんですが、この映画は私が基本的に1人で作って1人で公開しました」と話し、「この2つの映画は1人でなければ撮れなかったと思います。『東京干潟』では多摩川の干潟に住むホームレスのおじいさんを取材しましたが、1対1で向き合ったからこそ人間関係が深まり、心を開いて撮らせてくれた」と振り返った。また新藤兼人の作品への思い入れを明かし、「『ある映画監督の生涯・溝口健二の記録』というドキュメンタリーを20歳の頃に観てすごくびっくりした記憶があります。溝口監督は画面に出てこないんですが、彼の人間性や映画観や芸術観がものすごく立ち上がってきたんです。ドキュメンタリーはこういうこともできるんだと印象的でした」と述べる。100歳まで生きた新藤になぞらえ「100歳でドキュメンタリーを撮った人はいないと思うので、そこを目指してがんばっていきます」と挨拶を終えた。

銀賞を手にしたのは「メランコリック」の田中征爾。「2017年3月にプロデューサーの皆川(暢二)くんに声を掛けられ、磯崎(義知)くんと同い歳の男3人で作り始めた映画です」と田中は説明し、「すでに今までの上映挨拶で4~5回は『今日で映画監督としてスタートラインに立てたような気持ちです』と言っているんですが、今日もそういう気持ちです」と笑顔を見せる。「今年の賞のノミネートラインナップは、ここに名前が載っただけでもよかったなと思えるくらいの作品ばかりでした。なので、銀賞受賞の連絡をいただいたときはちょっとびっくりしましたね」と回想。「劇場公開作を作ったのは今回が初めてなので反省点もありますが、今後よりいい作品を作れたら」と意気込む。

そして優秀な作品のプロデューサーや企画者をたたえるプロデューサー賞は「新聞記者」の河村光庸に贈られた。まず河村は「作ってはいけない映画、禁断の映画を評価していただいてありがとうございます」と笑顔で挨拶。続けて新藤の監督作「裸の島」を挙げて「セリフがまったくない作品なんですが、無言のまま何かに向かって反骨している。それで私は新藤監督を反骨の人と思っております」と述懐した。「リスクマネジメント、コストパフォーマンス、コンプライアンス。この3つが会社で徹底的に教育されていると思います。ハイリスクを避け、同調圧力があり、お金をすべての基準にして物の価値を考える。こうしたことで社会全体が委縮させられ、不寛容で不自由な時代になりつつあると感じています」と語り、「そういったものを徹底的に無視した映画を作りたいと思っていました」と製作のきっかけを明かす。最後に「この映画に対して圧力はびっくりするほどなかった。そしてネットでも騒がれなかった。堂々と作っていけばそういったことは実は起こらない。幻想に対しておびえているような社会であることを実感しました」と述べて、「そういったことも含め反骨の人の記念すべき賞をいただき大変光栄に思います」と締めた。

「東京干潟」「蟹の惑星」は東京・ポレポレ東中野で12月21日から28日、神奈川・横浜シネマリンで2月15日から21日にアンコール上映が行われる。「メランコリック」は全国の劇場、「新聞記者」は栃木・宇都宮ヒカリ座で上映中。

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