「音楽」岩井澤健治が想像したバンドの音は独ロック、松江哲明は作中オマージュ明かす

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長編アニメ「音楽」のトークショーが11月3日に北海道・新千歳空港ターミナルビルにて開催中の第6回新千歳空港国際アニメーション映画祭で行われた。登壇したのは監督の岩井澤健治とプロデューサーの松江哲明

長編アニメ「音楽」トークショーの様子。左から松江哲明、岩井澤健治。

長編アニメ「音楽」トークショーの様子。左から松江哲明、岩井澤健治。

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「音楽」メインビジュアル

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岩井澤健治

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大橋裕之のマンガを原作とする長編アニメ「音楽」は、楽器を触ったこともない不良学生たちが思い付きでバンドを組むところから始まる“ロック奇譚”。原作マンガでは、奏でられる音楽は“ボボボボボ”という擬音で表現されている。岩井澤から本作の企画を持ちかけられた松江は「ここが映像になったときに、マンガとは違う形が見えてくるんじゃないかという勝算がありました」と振り返った。“ボボボボボ”という音のイメージは、アニメーション制作を進めていくうちに湧いてきたという岩井澤。「ジャーマンロックというジャンルのCANというバンドがありまして。彼らの曲のイメージをミュージシャンに共有して音を再現したんです」と明かした。

ロトスコープによる制作過程のスライド。

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ロトスコープによる制作過程のスライド。

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ロトスコープによる制作手法の説明を交えながら、岩井澤が「最初は僕もモデルをやっていたんです」と説明。ベースとなる実写映像のキャストにはキャラクターと体型の近い人物を選んでおり、松江によるワークショップの参加者たちも出演したという。また劇中に登場する音楽オマージュに話題が及ぶと、「観ている方の音楽偏差値がわかりますね」と松江が笑顔を浮かべる。続けてアビーロードやザ・フーのアルバムジャケットを例に挙げながら、「森田くんの幻想シーンも元ネタがわかると面白いと思います。僕は全然わからなくて、あとから知ったんですよ」と見どころを紹介した。

観客から「ロトスコープを使った作品はもっと線が細かく揺れているような絵が多いと思うのですが、本作はそう見えません。ディレクションはどのように考えていたんですか?」と質問が飛ぶ場面も。岩井澤は「ロトスコープは実写をそのままトレースするようなイメージが強かったので、昔のディズニーアニメのように人物の動きをデフォルメして抽出して、それをキャラクターに合わせるようにしたんです。そのほうが観やすいと思いまして」と話す。

また、松江に対して「2019年中に公開したい」と強い要望を出したという岩井澤。その理由を「2019年はアニメーション作品の公開が多かったり、アニメーターをフィーチャーした朝ドラ「なつぞら」が放送されるとかなり前からリサーチして知っていました。この年はアニメが盛り上がると先に感じ取っていたので」と明確な意図をもって計画していたことを明かした。「今年は『天気の子』『きみと、波にのれたら』『海獣の子供』などのメジャー作品がありました」と前置いた松江は、「岩井澤さんはそういった作品に負けないものを完成させようとしてるんだと強い気持ちを感じました。そういうところで勝負できる映画に育てなければと思い、クラウドファンディングをして2019年の公開を目指したんです」と経緯を説明した。

松江哲明

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結びの挨拶では松江が「監督としてもプロデューサーとしても、常にインディペンデントでいようという気持ちはずっと変わっていません」と映画作りへの姿勢を述べる。また「インディペンデントな初期衝動に近いエネルギーは大橋さんのマンガにもあって。それが皆さんに伝わればいいと思います」と作品をアピ―ルした。岩井澤は「こういう形の長編アニメは今までになかったと思います。短編ではいろんな表現がありとがった作品もありますが、長編では求められているものしか表現されていないと感じています。こういう変わった作品が広まったら、長編アニメというジャンルでも面白い作品が出てくるのではないでしょうか」と胸を張った。

第43回オタワ国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門でグランプリを受賞した「音楽」は、2020年1月11日より東京・新宿武蔵野館ほか全国で順次公開。

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