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高畑勲、ユーリー・ノルシュテインとの対談で作品の魅力熱弁

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左から高畑勲、ユーリー・ノルシュテイン。

左から高畑勲、ユーリー・ノルシュテイン。

アニメーション作家ユーリー・ノルシュテイン高畑勲のトークイベントが、11月3日に京都・同志社大学の寒梅館ハーディーホールにて行われた。

このイベントは、ノルシュテインの特集上映が12月より全国で実施されることを記念して企画されたもの。かねてから親交が深く、解説本を発表するほど彼に敬意を抱く高畑は、自身を「ノルシュテインさんのディープなファン」と表現。そして「霧の中のハリネズミ」でノルシュテイン作品に初めて触れた1981年頃に思いを馳せ、「当時は字幕も何も付いてなかったが、それは大事なことだったと思う。ハリネズミの行動がまったくわからず、何かに出くわすたびに緊張感を持てる。それにものすごい目を凝らして観るから、画面の中を読み取ろうという力が働く。それでいっぺんにファンになっちゃった」と声を弾ませる。

続いてノルシュテイン作品に魅せられるゆえんについて、「表現とは、中身を超えて我々に訴えかけてくる力。『あの霧はどうやったんだろう?』とかそういう細かい技法ではない」と熱く語る高畑。それを受け、ノルシュテインは「ロシアは霧が多い。歌の中にもたくさん霧が出てきます。例えば……」と言って、「霧の中のハリネズミ」で流れる楽曲の一節を朗らかに歌い上げる。また作品の創作過程の苦労を振り返り、「話の話」の制作中に関しては「声帯に何か起こったらしく、3週間くらい声が出なくて、ささやき声で話していたんです」と当時の裏話を明かした。

ノルシュテインは「『そんなに大変なことをなぜやるのか?』とよく聞かれます」とも。その理由を「私は絶えず自己問答しているわけです。自分に質問し、その答えが結果として私の作品になる」と述べる。また生命、生涯、暮らしといったあらゆる意味をあわせ持つ“Life”というワードを挙げて「『いったい何が重要なんだろう?』と、いまだに自分に問いかけ、いまだに答えが出せていません」と語る一方で、「ところが大好きな友達や愛する女性がそばにいて、さらに子供が生まれると、『生きる意味とは?』なんて言っていられない。そんな問いかけは吹っ飛んでしまうのです」と、実生活を大切にすることの重要性にも言及した。

またノルシュテインがロシアのテレビ局から請け負って制作した、子供番組「おやすみなさいこどもたち」のオープニングとエンディングのアニメーションに話が及ぶと、ノルシュテインは「宮崎駿さんが気に入ってくれたようで(スタジオ)ジブリが買おうとしてくれたんです。そうしたらテレビ局が『ジブリ金持ってるな!』って、ものすごい金額をふっかけて。だからやめることにしました」と暴露する場面も。すかさず高畑が「それぐらいでいいんじゃないかな(笑)」と割って入り、「ロシアの子供たちは幸せだなあ」とまとめた。

ノルシュテインの特集上映「アニメーションの神様、その美しき世界」は、12月10日より東京のシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次ロードショー。

ユーリー・ノルシュテイン監督特集上映「アニメーションの神様、その美しき世界」

2016年12月10日(土)~ 東京都 シアター・イメージフォーラムほか
<上映作品>
「霧の中のハリネズミ」
「話の話」
「キツネとウサギ」
「25日・最初の日」
「ケルジェネツの戦い」
「アオサギとツル」

撮影:井上嘉和(株式会社井上写真事務所) (c)2016 F.S.U.E C&P SMF

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