アクション監督自らワイヤーアクション!
続く3作目「高校与太郎行進曲」は、桜ヶ丘高校の偏差値番長・腹巻鉄也たちとのコミカルな騒動から、須賀をはじめとする極悪な無期停学組とのシリアスな戦い……と、前半後半でトーンが変わるのだ。
「この『行進曲』は硬軟違ったトーンのアクションが見せられたという意味でも、とても優れた作品だと思います」(多加野)
前半のコミカルさの渦中にいたのは、腹巻鉄也役の
「本人は嫌がっていましたけど、黒澤満さんからの指名ですからね(笑)」(多加野)
かくして高瀬、いや腹巻の華麗なアクションが披露されることになった。
「前半、腹巻にドロップキックを食らった均太郎が、ワイヤーで何mも吹き飛ばされるアクションは、道場でメンバーがアイデアを出し合っているときに、僕が言い出したんですよ。面白いシーンになってよかった(笑)」(瀬木)
高瀬自らも当初語っていた「やられる側に痛みのあるアクション」を演じている。立花商業のミノルに吹っ飛ばされて、ドラム缶の山にワイヤーで吹き飛ばされる(ちなみに、なぜか身体だけ小さくなってしまうというオチもつく)シーンなどがそれだ。
「本人はよく、駅で均太郎一派と乱闘になったときに、食堂のショーケースに突っ込むシーンを思い出に挙げていましたね。ガラスが、撮影用のアメガラスではなく、本物だったんですよ。『あれはもっと褒めてほしいなあ』と言っていました」(多加野)
そして後半の無期停学組との抗争の果て、工場の中で繰り広げられるバトルでは、爆発が起こる中で、トオルが足場に宙づりになる大掛かりなアクションがある。
「足場を操演していたのは僕なんです。何かのトラブルで、途中で止まってしまった。下には火柱がボンボン上がっている中で、仲村さんが宙づりになっているんで、『いったん降りるか?』と声が掛かったんですけど、『このままやらせてください!』と言った。これはスタントマンとして気持ちがわかるんですよ。一度降りてしまうと、気持ちが変わってしまう」(瀬木)
そしてヒロシ&トオル対リョウ&巻田の2対2となった最終決戦も、もちろん最後はプロレスの技で締める。
「仲村さんはツームストーン・パイルドライバー、身のこなしの軽い宏次朗さんはバックフリップで。考えるのは楽しかったですよ(笑)」(瀬木)
スケートリンクからシャチを出せ!
4作目「高校与太郎狂騒曲」から2作のアクションは倉田アクションクラブの臼木基晴(5作目「高校与太郎音頭」は帯金伸行とのダブルクレジット)が担当した。
「狂騒曲」は柴田・西を中心とした城東工業退学組との壮絶な闘争が主軸となるが、作品全体としてはファンタジー色の強いアクションが印象に残る。
ヒロシとトオル、そして菊永が、女子中学生の3人組(演じるのは
さらにはクライマックスで、車椅子のまま誘拐されたヒロシを救うため、トオルは馬に乗って柴田・西たちの前に参上。崖の上から飛び降りる場面ではアニメに変わるという、破天荒なシーンである。
打って変わって5作目「音頭」はだいぶ暗いトーンの作品だ。工藤率いる北高維新軍が張り巡らせる「仁義なき戦い」ばりの謀略の中で、ヒロシ不在で戦力が低下している愛徳の面々は、北高との全面戦争に引っ張り出されてしまう。
加勢に現れたミノルも捕まり、柴田・西もやられる……という鬱々としたアクションが続く中、トオルが現れて、デパート内で北高の面々と戦うクライマックスは白眉。エスカレーターやショーケース、ネオンなどを生かしたアクションは華やかで、それこそジャッキーの「
そうして迎えた6作目「高校与太郎完結篇」では、ヒロシも復帰、高瀬道場も再び参加したこともあり、大団円にふさわしい娯楽アクションが繰り広げられる。
スケートリンクで、さまざまな学校の不良たちが入り乱れての大乱闘は、まさにシリーズのフィニッシュを飾るにふさわしいスケールだった。
「ロケをしたのは多摩テック(※かつて東京・日野市に存在した遊園地)でしたね。那須監督がシャチを出そうとしているという話を先生から聞いて、『なんだそりゃ』ってなりました(笑)」(瀬木)
高瀬は、こう回想している。
「(スケートリンクの)氷を割ってシャチがでてくる、その鼻にヒロシが乗ってるってのはどうだ」と。そうしたら助監督が「鴨川シーワールドで見たことあります」って言い出して、そりゃあ調教師さんだろう! ホント、どういう発想なんだろう(笑)(山本俊輔+佐藤洋笑+映画秘宝編集部・編「セントラル・アーツ読本」より引用)
なお同案は、撮影前にこの賢いシャチがお亡くなりになったことで、断念せざるを得なかったということである。
やれと言われたらやるしかない!
破天荒なまま幕を下ろした「ビーバップ」シリーズには、ファンが抱いている長年の謎が、いくつかある。
その1つは、1作目でヒロシ&トオルが桑山農業に殴り込むというシーン。稲が刈り取られた田んぼで乱闘が繰り広げられるシーンの中で、唐突に女性が2名混じっている。原作にないシーンであり、そしてなぜ女性が乱闘に参加していたのか。実はそのうち、ショートカットでハイキックを何度も披露しているのが多加野(クレジットは高野詩子)である。
「台本には『桑山農業 3名負傷』という文章は書いてあったけれど、どうやってこのアクションを撮ることになったかはわからないですね」(瀬木)
「たしか、撮影の直前に言われたんだと記憶しているんですよ。基本的に道場の男性メンバーがかり出されていて、ヒマをしていてかわいそうだと思って、女性を呼んだんじゃないかな(笑)」(多加野)
多加野は当時、日本に少なかったスタント・ウーマンだった。
「当時、女性のボディ・ダブルは、身体の小さな男性スタントが行っていたんです。『ビーバップ』の2作目『哀歌』でも、クレジットはされていないんですが、五中の鬼姫・翔子の代わりに学校の屋上で宙返りの吹替をしています」(多加野)
日本にパワーにあふれていた時代、映画に破天荒さが許されていた時代。今でも多くのファンに愛される娯楽作には、多くの人たちの力があった。
「すごいですね、大変ですね、ってよく言われますけど、僕らは『やれ』と言われたら『やるしかない』と思っていた。それだけなので(笑)」(瀬木)
そして、現在も彼らは「あぶない刑事」シリーズを皮切りに多くの作品でエンタメ界を支え続けている。
「主人や瀬木先生はじめ、『ビーバップ』によって高瀬道場のアクションというものが世の中に認知されたんですから、今も多くの方に愛していただけるのは、感謝しかありませんね」(多加野)
PrimeVideoチャンネル「東映オンデマンド」にて「ビー・バップ・ハイスクール」全6作品配信中
料金:月額税込499円 ※初回14日間無料
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PW加藤 @q3jQd9xK0aZSvEL
「ビー・バップ・ハイスクール」のアクションを支えた多加野詩子&瀬木一将の証言 https://t.co/fzYnwHxpBP
『2日にわたる撮影の末に行われたトオルとヘビ次の一騎打ち。ヘビ次を演じた小沢仁志は足の骨を折って、痛み止めを飲みながらの壮絶な撮影。トオルのバックドロップで小沢は失神したという』