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ホラーを語るリレー連載「今宵も悪夢を」 第41夜 [バックナンバー]

選者 / 南波志帆「バタリアン」

タールマン、オバンバ…名前のついたキモかわいいゾンビが登場

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ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人にお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。

第41夜は南波志帆が「バタリアン」を紹介。ジョージ・A・ロメロの名作を組み込んだストーリーの妙、「キーホルダーにして身につけたいほどにキモかわいい!」というゾンビについて語っていく。なお今回は結末に関する記述があるのでご注意を。

/ 南波志帆(コラム)、田尻和花(作品紹介)

最初のミスから、あれよあれよと地獄絵図に

「バタリアン」場面写真

「バタリアン」場面写真

みなさん、こんばんは。「今宵も悪夢を」案内人、すいか生肉ゾンビが大好きな南波志帆です。

私はどこか笑える要素のあるゾンビ作品が大好物ですので、「集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく」という趣旨のこの連載でも、懲りずにずっと自分の好きなものをお届けしております。本当にすみません(笑)。

そんな私はもうかれこれ10年ほど、ゾンビが好きで研究もしていて、新旧あれこれ作品を観まくっているのですが、ユーモラスなゾンビ作品を好きになったきっかけでもある名作「バタリアン」を今回はご紹介したいと思います。

舞台は、ユーニーダ医療品商会。ここで働き始めた新米のフレディ。

場所が場所なだけに、不気味なものがたくさん置いてあります。医学部からの注文品である完全な歯を持つ成人女性の骨格標本、獣医学校からよく注文されるという縦割りの犬、そして医学部の解剖用や陸軍の弾道試験用に売るという新鮮な死体の貯蔵庫…。

フレディは先輩であるフランクに、「今までで一番ゾッとしたことは?」と好奇心で聞きます。この場所でいろんな気味の悪いものを見てきたが、実は極めつきの恐ろしいものを見た、と言って教えてくれたのがゾンビの存在。

ここからが、さすがの名作バタリアン…! ゾンビ映画好きとしてワクワクする展開になっていきます。

実は、かの有名なジョージ・A・ロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」が事実をもとにした映画化だったというのです…!!

もとになったピッツバーグの軍人病院での事件では、製薬会社が陸軍用に開発中だったとある薬品が流出、それが遺体安置所に全部流れ込み、死体がまるで生きているみたいに跳びはねた。陸軍は極秘事項として、薬品で汚染されたゴミや死体を始末したが、汚染死体の輸送で手違いがあり、製薬会社へ送るはずがここへ送られてきた。もし事実通りに映画化したら告訴すると、彼らが映画会社に警告してきたので少し話を変えた、と。この設定、妙にリアリティがあって面白い!!(笑)

地下室にそのブツがあるから見てみないか、と悪い顔で誘うフランク。そこには厳重に管理された、見るからに危険なゾンビ入りのタンクがあるではありませんか! 漏れないかと不安がるフレディに、大丈夫さと思いっきりタンクを叩いてみせるフランク。案の定、ぷしゃーっとガスが漏れ出てしまいます。だよなー(笑)。

まんまと二人はそのガスを浴びてしまうのです。漏れ出た成分はパイプを通り、地下室からすべての部屋へ流れ出します。すると、冒頭でご紹介した不気味なものたちがイキイキと動き出すわけです。詰んだー(笑)。

しかも、この映画に出てくるゾンビたちは特殊で、なぜだか頭を破壊しても意味がない。会話もできて、なおかつ頭が切れる。そして、走る。かなりの手強さ…!

「脳みそを~!」と叫びながら追いかけてくる、タールマンやオバンバなど、名前のついたキモかわいいゾンビが出てくるのもこの作品ならでは。登場するゾンビたちがポップで愛らしくて、キーホルダーにして身につけたいほどにキモかわいい!(笑)

内容自体は割とシリアスで、救いのないバッドエンドですが、この要素がほっとさせてくれるのかなと思います。

最初のフランクのミスから、あれよあれよと地獄絵図のような光景が広がっていきます。だいたい、目先の利益にとらわれる人、そして、いつか必ずバレるのにすぐにミスを認めず、隠し通そうと謎の悪あがきをする人のせいで事態がどんどん悪化するのは、ゾンビ作品でも現実でも巻き起こるあるあるですよね(笑)。

間違いは秒で認めて、秒で謝ろう。先延ばしにしたって良いことはひとつもない。反面教師で、ゾンビ作品からはいつもあらゆる学びがあるのでした。

「バタリアン」場面写真

「バタリアン」場面写真

南波志帆(ナンバシホ)

南波志帆

南波志帆

1993年6月14日生まれ、福岡県出身のシンガー。2008年11月にミニアルバム「はじめまして、私。」でデビューを果たし、デビュー10周年を迎えた2018年には初のベストアルバム「無色透明」をリリースした。2014年からNHK-FM「ミュージックライン」のDJを務めている。

「バタリアン」(1985年製作)

「バタリアン」ビジュアル

「バタリアン」ビジュアル

ジョージ・A・ロメロによるゾンビ映画「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」が、実際に起こった事件をもとにした作品だったという設定で展開するホラー。劇中では、医療会社の倉庫で働く主人公たちがその事件で生まれたというゾンビをよみがえらせてしまい、さらに“ゾンビ化するガス”を流出させてしまう。
監督を務めたのは、「エイリアン」の脚本家ダン・オバノン。キャストにはクルー・ギャラガージェームズ・カレンドン・カルファトム・マシューズ、ビヴァリー・ランドルフ、ジョン・フィルビンが名を連ねた。

※「バタリアン」はU-NEXTで配信中

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RETURN OF THE LIVING DEAD, THE (c) 1984 CINEMA '84, A GREENBERG BROTHERS PARTNERSHIP. All Rights Reserved

読者の反応

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いんそむにあ @redmaynes

ガキの頃はホラー映画がダメだったけど、『コマンドー』と二本立てだったので観ざるを得なかった思い出。いざ観たらパンフレット買うくらいに面白かった(笑) https://t.co/XS9TUKlRgp

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