「ゴジラ-1.0」をもっと楽しむ!ゴジラ+1.0(プラスワン) 第1回 [バックナンバー]
【訪問レポート】「ゴジラ-1.0」はどんな環境で作られたのか?山崎貴と白組・調布スタジオを巡る
2023年10月27日 12:15 31
11月3日に全国で公開されるゴジラ70周年記念作品「
「ゴジラ-1.0」のVFXはどのような環境で制作されたのか? それを知るために東京・調布にあるスタジオを訪れた。この記事では、白組に所属し、「ゴジラ-1.0」の監督・脚本・VFXを担当した
取材・
“まあまあいい椅子”でどこまでも行けるフロア
東京の三軒茶屋と調布にスタジオを有する白組。2016年に封切られた「シン・ゴジラ」のVFXは三軒茶屋で作られ、「ゴジラ-1.0」では調布チームが制作を担当した。2つのスタジオは明確に分かれているわけではなく、「ゴジラ-1.0」には「シン・ゴジラ」に携わったスタッフも参加している。
山崎のデスクは、ずらりとパソコンが並ぶフロアの一番奥にある。机の左手にはVFX制作時に参考にする大量の書籍が置かれ、右手にはゴジラのフィギュアが。VFXの制作期間はここに常駐するという山崎は「普通は監督のチェック日が1週間に1回くらいだったりするんですが、うちの場合は僕が常にいるので細かく確認できます。トライアンドエラーの回数が増えて、飛躍的にクオリティが上がるのがメリットですね。デメリットはチェックに追われてほかの作業ができないこと。自分の仕事に支障は出ます(笑)」と笑う。
床全体がフラットになっており、その理由について「椅子でどこまでも行けるんですよ。ピューって社員のデスクに行って『あのカットどうなった?』みたいな」と楽しそうに話す山崎。VFXの制作には長時間のデスクワークが求められるため、できるだけラグジュアリーな職場環境を目指しているそうで、山崎いわく“まあまあいい椅子”が使用されている。
登場人物たちとゴジラの物語が乖離しないように
続いて主に合成を担当するスタッフのもとへ。
同場面の着手から完成までに用意された映像のバージョン数は55に及ぶ。スタッフが制作したものを山崎がチェックし、その指示を受けて調整された映像を再び山崎が確認。その繰り返しを経てシーンが作り上げられていく。55という数は少ないそうで、山崎は「この規模のシーンだったら早く終わったほうです。多いときは(着手から完成までの映像数が)200くらいいくときもあります」と語った。
映画を“VFXショー”として見せてしまうと、観客の心は離れてしまうと話す山崎。「『ゴジラ-1.0』で一番意識したのは、登場人物たちとゴジラの物語が乖離しないようにすること。キャラクターの感情や表情がゴジラに起因しているとお客さんに感じてもらえなければ、神木くんや浜辺さんのいいお芝居が台無しになってしまいます。人間のパーソナルな物語とゴジラの登場という巨大な出来事を、いかにVFXによって接着するのか。これまで培ってきた技術によって、人と怪獣を違和感なく同じ画面に映すことができましたし、説得力のある画を作れたと思います」と自信をのぞかせた。
「スター・ウォーズ」で要となったモーションコントロールカメラ
地下は撮影スタジオになっており、その中央にはモーションコントロールカメラ(カメラワークをコンピュータで制御することで、複雑な動きを何回でも再現できる機材)が置かれている。現在は使用する機会が少なくなってきているが、1970年代後半から1980年代前半にかけて公開された「スター・ウォーズ」旧3部作(エピソード4、5、6)においては、画期的な映像を生み出す要となった。山崎は「このカメラによってミニチュアの宇宙船が実物に見えるようになったんです。マニアックな話になっちゃうので細かい部分は避けますが(笑)」と無垢な子供のようにキラキラとした表情を浮かべる。
撮影スタジオの奥にはミニチュアの制作部屋が。「ゴジラ-1.0」では3Dプリンタが活躍したそうで、山崎は「デジタルデータのゴジラを出力して、ゴジラの模型を作りました。それを現実世界で撮影してVFX制作時のリファレンス(参考資料)にしたんです。デジタルと現実を行ったり来たりしないといけないときに、3Dプリンタは役に立ちますね」と振り返った。
スタッフたちの憩いの場
制作の合間に一息つくロビーもあり、スタッフたちの談笑スペースになっている。社員の1人に山崎の印象を聞くと「働いていると嫌な気持ちになったり、上司を嫌いになったりすることがあると思うんです。でも山崎さんとの仕事ではそういうことが一切ない。本当に楽しい人ですよ」という答えが返ってきた。
ミニチュア置き場や映像チェック部屋も
最初の「ゴジラ」に近い感情を
これまでの作品で試してきたVFX技術を「ゴジラ-1.0」に注ぎ込んだという山崎。「『
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白組(シログミ)
1974年に設立された映像制作会社。東京の三軒茶屋と調布にスタジオを有する。山崎貴のほか、山崎とともに「STAND BY ME ドラえもん」シリーズや「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」を手がけた八木竜一が所属。
山崎貴(ヤマザキタカシ)
1964年6月12日生まれ、長野県出身。2000年に「ジュブナイル」で監督デビューした。主な監督作に「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ、「永遠の0」「アルキメデスの大戦」「ゴーストブック おばけずかん」がある。2023年10月29日まで長野・松本市美術館で展覧会「映画監督 山崎貴の世界」が開催。
映画「ゴジラ-1.0」
2023年11月3日に公開されるゴジラ70周年記念作品。戦後のすべてを失った日本に、追い打ちをかけるようにゴジラが現れるさまが描かれる。山崎貴が監督・脚本・VFXを担い、神木隆之介、浜辺美波、
映画「ゴジラ-1.0」予告編
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