TCCF 2024、映画ナタリーが見た台湾ドラマ・映画の今 Vol. 2 [バックナンバー]
エスター・リウ、クー・チェンドンら台湾人俳優4名、国際共同製作をテーマにトーク
2024年11月30日 13:00 2
アジアのコンテンツビジネスの祭典「2024 TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ(Taiwan Creative Content Fest)」が11月5日から8日まで台湾・台北で開かれた。主催団体である台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー(TAICCA)は台湾文化コンテンツの産業化・国際化を促進するため、台湾映画やドラマ、クリエイターを支援している。
2024 TCCFでは台湾人俳優の
取材・
フランス語から中国語に直訳されたセリフが届くことも
本イベントでは登壇者がそれぞれ国際共同製作の現場で得た経験を共有。MCを務めたエスター・リウ(劉品言)は、ウー・クーシー(呉可熙)が主演し、フランスや台湾などが共同製作した映画「Black Tea(原題)」 の現場におけるコミュニケーションについて尋ねる。
ウー・クーシー(呉可熙) 現場にはフランス語と中国語ができる監督アシスタントがいたので、橋渡し役になってくれたんです。いくつかの国で撮影をしましたが、監督が即興でセリフを加えることがよくありました。現場に向かう途中で連絡が来て、その日のセリフが決まったと伝えられることも。映画では中国語が大部分で使われていますが、新たに送られてきたセリフがフランス語から中国語に直訳された、非常にフランス語的な言い回しだったりするわけです。私はそのニュアンスを完全には理解できず、どう受け取ったらいいのか迷う場合もありました。私と通訳さんでたくさん話し合い、そして監督も交えた3人でもやり取りをしました。
現場ではかなりのプレッシャーがありますが、シーンをよりよくするためにどうにかがんばります。そして最終的に私たち全員で作り上げるんです。フランスのほかのスタッフたちも即興的な創作をするので、時には何を言っているのかまったくわからないこともあります。それでも、そういった状況を受け入れてそのまま進めていきました。
年齢に関係なくフラットに話せる現場
リン・ジェーシー(林哲熹)、クー・チェンドン(柯震東)はフランス現地での体験を回想。ウー・クーシーも台湾作品と海外作品について述べる。
リン・ジェーシー(林哲熹) 僕も今年の2、3月に台湾とフランスの共同作品の撮影をしましたが、現場の雰囲気がよかったです。台湾の場合、スタッフが俳優に何かを伝えるときはマネージャーを通して行います。でもフランスでは直接俳優に伝える。それにアジアは年功序列の意識がありますが、海外はそこまで厳しくないですよね。監督が年配で、主演俳優が20代でもフラットに会話していました。
クー・チェンドン(柯震東) フランスでCM撮影をしたときに、長いランチブレイクがあったことを覚えています。また台湾だと多めに素材を撮影しておきますが、フランスでは何を撮影するのか、最終ビジョンがはっきりしていると感じました。
ウー・クーシー 海外作品では契約についても台湾とは違うことがありました。例えばラブシーンの撮影では、一度シーン内容に同意したとしても、撮影後にNGを出すことが可能です。すごいと思いましたね。
さらにQ&Aではリン・ジェーシーがアーティスト支援制度に言及し、ウー・クーシーが英語のアクセントコーチを付けた経験を明かす。続いて、4人はグループインタビューに参加した。
脚本やクリエイティブな面で大きなチャンス
──皆さんはさまざまな国際共同製作作品に参加してきました。これから国際舞台に挑戦したい人が日頃から準備しておくといいことはなんでしょうか?
ウー・クーシー まずはその世界に近付くことが大切です。最低でも海外の映画を観たり、どんな監督がいるのかを知ったり、彼らが求める俳優像を理解することが必要。そして国際的な映画祭に参加すれば、関係者と知り合うチャンスが増えるかもしれませんね。ほかの国の言語を練習することも大事です。単に「やりたい」と言っても、何もわかっていないのでは意味がないんです。監督やプロデューサーには、あなたが準備していることが自然と伝わるはずです。
クー・チェンドン より多くの友達を作ること、人脈を作ることです。チャンスがあったときに、自分のことを思い出してもらえるようにすることが大切だと思います。私は韓国や日本にも友人がいますが、将来的に仕事をする機会や共演のチャンスがあれば、そういった方々と協力できるかもしれません。
リン・ジェーシー 僕はクー・チェンドンさんと知り合えてよかったです。彼を通じてより多くの友達を作りたいです(笑)。私の場合は、外国のチームに「この人は国際的な共同作業の経験がある」とわかってもらうことを目指しています。国際的に知られている台湾人の役者は一握りしかいません。海外のチームがもし知名度のある俳優以外で探すなら、その人がどんな経験を持っているかを重要視するでしょう。なので私は「自分には国際共同製作に参加したことがあり、実際にできます」とわかってもらえるように戦略を立てているんです。小さなことでもいいので、海外の人に発見してもらえるような経験を作ることが最初のポイントになると思います。
エスター・リウ 私は脚本やクリエイティブな面で大きなチャンスがあると感じています。国際的な製作ブランドが文化的な要素を取り入れた作品をどんどんリリースしています。そういったブランドと私たちが出会うことができたら、また、台湾ならではの脚本を自分たちで作って国際共同製作で採用されればチャンスが生まれると思います。
どうしたら効率的に仕事ができるかを本気で考える必要がある
──海外と比べたときに、台湾における撮影現場の課題をどう感じますか? 課題を解決するためにどうしたらいいでしょうか。
クー・チェンドン 以前は16時間連続で働くようなこともありましたが、今はだんだん時間が短くなっています。ただこの進歩はスタッフの犠牲によって成り立っている部分もあるので、どうしたら効率的に仕事ができるか、みんなで本気で改善策を考える必要があります。私1人でどうにかするということではあまり意味がありません。例えば政府のサポートを増やし、作業効率を高めて、もっとよい環境を作ることが重要です。「台湾人はとても親切でタフだ」とよく言われますが、それは必ずしもよいことではありませんね。
エスター・リウ 台湾の現場では、限られたリソースで一定のクオリティを確かに出せます。しかし犠牲のうえで成り立っている部分が多いので、今後はその状況を続けるべきではないと感じます。私たちはもっと効率的に仕事を進め、国際的なレベルに達する必要があります。
リン・ジェーシー 重要なのは心構えだと感じます。この仕事をどのように捉え、どこまでの成果を目指すのか。それが仕事の完成度に影響を与えますよね。台湾の俳優は本当に優秀だと思います。限られた中で高いクオリティを維持しているのだから、世界と同じ環境を与えられれば、もっといいものを作れるはず。産業全体で協力し、技術面や各分野での改善を進め、国際的な水準に到達するために努力し続けるべきです。
ウー・クーシー アメリカで撮影をした際、各スタッフのプロフェッショルさに感動しました。すべてがきちんと整備されていて、役者のために必要なものをすぐに準備してくれる。私が特別待遇されているというわけではありません。分業化がしっかりされており、スタッフ1人ひとりの専門性が重視されている現場でした。俳優はほかの作業は気にせず自分のパフォーマンスに集中できたんです。こういった配慮が撮影をスムーズに進める要因となりますし、私たちもプロフェッショナルな態度を持つことが重要だと感じました。
もし日本のチームと組むなら誰と仕事をしたい?
──もし日本のチームと共同で制作することがあれば、誰と仕事をしたいですか? お気に入りの作品は?
クー・チェンドン 木村拓哉さん、Kōki,さんと共演したいです。僕は昔は木村さんに似てるって言われていたんですよ(笑)。また奥山大史さんの監督作「
リン・ジェーシー 三池崇史監督、小栗旬さんと仕事をしてみたいです。「
ウー・クーシー 木村さんと言えば子供の頃に「ロングバケーション」を観ました! 私がご一緒したいのは北野武監督です。
エスター・リウ 私も木村拓哉さんと共演したいです。是枝裕和監督も好きで、作品のふわっとした雰囲気が素敵だなと思っています。
──それぞれ共演経験がある方もいると思いますが、お互いをそれぞれどんな人物だと思いますか?
クー・チェンドン リン・ジェーシーさんはすごく優秀な人。知り合う前は物静かな方だと思っていたのですが、共演してみて瞬発力のある人だと感じました。ウー・クーシーさんは目標を達成するために足を止めない方。「再見瓦城(原題)」の中ではタイ語、ミャンマー語を学ばなくてはいけなかったし、一生懸命学ぶ姿を見て改めて努力家だと思いました。エスター・リウさんと共演したことはありませんが、一緒にお酒を飲んだことがあります。楽しく飲める方ですね(笑)。
エスター・リウ クー・チェンドンさんも楽しくお酒が飲める方です(笑)。面倒見がよい方で、どうりで監督にもなれるはずですね。私はウー・クーシーさんを研究していて、日頃どんなことをしているか見ています(笑)。粘り強い方だと思います。リン・ジェーシーさんのことを研究したこともあり、実際に会ってみたら想像とは違った方でした。
ウー・クーシー リン・ジェーシーさんは大学では監督コースで勉強されていたと思いますが、役者になってびっくりしました。すごく芯が通っていて、クリエイティビティもある方。ウー・クーシーさんは頭がよくて吸収力のある人で、ユーモアもあります。エスター・リウさんは歌手出身で、今では俳優だけでなく司会者の仕事もされていて、さまざまなジャンルに挑戦されているイメージです。
リン・ジェーシー クー・チェンドンさんは頭のいい方。みんなに優しく、仕事を完璧にこなします。ウー・クーシーさんは役に入り込む力がある方。またエスター・リウさんは個性的で、吸収がとても速く、気さくな人柄だと思っています。
- エスター・リウ(劉品言)
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1988年8月8日生まれ、台湾・台北出身。2003年にガールズグループ・Sweetyとして歌手デビューし、俳優としても活動。ドラマ「含苞欲墜的毎一天(原題)」の演技により2013年の金鐘奨で助演女優賞を受賞した。そのほか映画「金孫(原題)」「莎莉(原題)」、ドラマ「未來媽媽(原題)」、Netflixシリーズ「華燈初上 -夜を生きる女たち-」などに出演。司会者、脚本家、番組プロデューサーとしても活躍の幅を広げている。
- クー・チェンドン(柯震東)
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1991年6月18日生まれ、台湾・澎湖出身。映画「あの頃、君を追いかけた」でデビューし、2011年の金馬奨で最優秀新人賞を受賞して一躍脚光を浴びる。2022年に映画「赤い糸 輪廻のひみつ」で台北電影獎の主演男優賞、2024年にドラマ「不夠善良的我們(原題)」で金鐘獎の助演男優賞に輝く。そのほか出演作に「再見瓦城(原題)」「マネーボーイズ」など。2022年には監督デビュー作「黒の教育」を発表した。
- リン・ジェーシー(林哲熹)
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1991年12月16日生まれ、台湾・彰化出身。2017年に「自画像(原題)」で初の長編映画デビューを飾る。その後、映画「狂徒」「呪われの橋」「マネーボーイ」、ドラマ「悪との距離」、Netflixシリーズ「華燈初上 -夜を生きる女たち-」などさまざまなジャンルの作品に出演。さらに台湾・インド合作映画「叫我驅魔男神(原題)」といった国際共同製作の映画にも参加した。
- ウー・クーシー(呉可熙)
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1983年2月6日生まれ、台湾・台北出身。数々の舞台作品に出演し、短編「海の上の宮殿」でショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2015(SSFF & ASIA 2015)のベスト・アクトレスに輝く。2016年製作の映画「翡翠之城」では脚本を執筆した。脚本と主演を担当した「灼人秘密(原題)」は2019年のカンヌ国際映画祭で「ある視点」部門に選出。2024年にフランス・台湾などが共同で製作した主演映画「Black Tea(原題)」が、同年のベルリン国際映画祭でメインコンペティション部門に出品された。
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