ミニシアターとわたし 第10回 [バックナンバー]

伊藤沙莉「だいすき、ミニシアター。」

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新型コロナウイルスの感染拡大で休業を余儀なくされたことにより、全国の映画館は苦境に立たされた。その状況にもどかしさを感じている映画ファンは多いはず。映画ナタリーでは、著名人にミニシアターでの思い出や、そこで出会った作品についてつづってもらう連載コラムを展開。ぜひお気に入りの映画館を思い浮かべながら読んでほしい。

第10回には女優の伊藤沙莉が登場。“相当通った”という地元の千葉・千葉劇場や、人生初の舞台挨拶を行った場所である東京・シネマート新宿の思い出を振り返ってもらった。

文 / 伊藤沙莉 イラスト / 川原瑞丸

だいすき、ミニシアター。

伊藤沙莉

伊藤沙莉

小さい頃から
映画館という場所が無条件に好きだった。
落ち着くし、わくわくするし、
作品をとても身近に感じる
神聖な特別な場所だからだ。
バイトもしようとしたが
既に3つ掛け持ちしていたので
断念したほどだ。

そして恥ずかしながら
学生時代のデートもだいたいが映画館だった。
初めて字幕で映画を観た時は
なんだかすごく大人になった気がしたし
初めてミニシアターに行った時は
通になった気がした。

地元にあるミニシアター、
千葉劇場にも相当通った。
実家から30分くらい歩いて
なんの映画がやってるか覗いて
気になったら券を買って
時間まで近くの喫茶店で暇をつぶす。

今考えると
その時の私は相当ドヤ顔だったと思う。
何故かは知らない。
かっこいい気がしたんだろう。
粋だなぁあたい、くらいのことを
思っていたと思う。
超かっこ悪かった。

お客さんの大半は
人生の大先輩方。
大先輩方と並んで観るのも
なんだかすごく好きだった。

仕事柄、シネコンもそうだが
ミニシアターには観客としてだけでなく
相当お世話になっている。

人生初の舞台挨拶は「シネマート新宿」
そこに映画「獣道」で
主演として帰ってこれたのは
本当に感慨深かった。

私シネマートに住んだ方が早くない?
と何度思っただろう。
公開期間中はそのくらい通っていた。
毎日のように獣道の
アフタートークをしていた。
いや、嘘だ。嘘をついた。
住むべきは内田監督だった。
内田監督は本当に住むべきだった。
そのくらい毎日いた。
「獣道」への愛がそうさせたんだと思うし
それはそれはかっこよかった。

様々な作品の舞台挨拶やイベントで
全国各地の映画館にお邪魔させていただくが
「獣道」は
桁違いの数を周った。

本当に楽しかった。
旅行気分だったのもちょっと否めないが
なにより
本当に本っっっ当に温かかった。
劇場の雰囲気、
スタッフさん、
お客様方、
何もかもが温かかった。
そして何より映画への愛を感じた。

舞台挨拶の距離も近く、
直接話してるような感じだった。
それも好きだった。
映画が終わった後のお客様方の
様々な観賞後の感情、表情を
生で感じられるのがたまらなかった。

今、ミニシアターに危機が迫ってるのは
多方面から耳にする。
胸が痛いし苦しい。

まだお邪魔したことのないミニシアターが
沢山、それはもう沢山あるし、
今までお世話になったミニシアターには
ただいまって言い続けたい。

できることなら一つも欠けることなく、
これからも
相変わらずドヤ顔で鑑賞しに来る私を、
感慨深げに作品を届けに来る私を、
温かく迎え入れて欲しいと思う。

気の利いたことは言えないが
あえて言う。

がんばれ、ミニシアター。
まけるな、ミニシアター。

だいすき、ミニシアター。

※映画ナタリーでは、業界支援の取り組みをまとめた記事「今、映画のためにできること」を掲載中

伊藤沙莉

1994年5月4日生まれ、千葉県出身。2003年、9歳でドラマデビュー。「パンとバスと2度目のハツコイ」「榎田貿易堂」「寝ても覚めても」「blank13」などの映画に出演し、第10回TAMA映画賞で最優秀新進女優賞、第40回ヨコハマ映画祭で助演女優賞、主演を務めた「タイトル、拒絶」で第32回東京国際映画祭東京ジェムストーン賞を受賞。2020年6月、テレビアニメ「映像研には手を出すな!」やドラマ「これは経費で落ちません!」「ペンション・恋は桃色」などでの活躍を評価され、第57回ギャラクシー賞テレビ部門個人賞、さらに「生理ちゃん」で第29回日本映画批評家大賞助演女優賞に輝いた。そのほかの出演作にドラマ「ひよっこ」「獣になれない私たち」「全裸監督」「いいね!光源氏くん」、映画「獣道」「ペット2(日本語吹替版)」「TOKYO TELEWORK FILM」「ステップ」「劇場」などがある。

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