ミニシアターとわたし 第9回 [バックナンバー]

加藤諒「個性溢れるミニシアターに誘われて」

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新型コロナウイルスの感染拡大で休業を余儀なくされたことにより、全国の映画館は苦境に立たされた。その状況にもどかしさを感じている映画ファンは多いはず。映画ナタリーでは、著名人にミニシアターでの思い出や、そこで出会った作品についてつづってもらう連載コラムを展開。ぜひお気に入りの映画館を思い浮かべながら読んでほしい。

第9回には俳優の加藤諒が登場。個性的なミニシアターへの愛や、「ギャングース」を監督した入江悠の地元である埼玉・深谷シネマを訪れたときの記憶を語ってもらった。加藤が自ら撮影したミニシアターの写真も掲載する。

文 / 加藤諒 イラスト / 川原瑞丸

個性溢れるミニシアターに誘われて

2019年4月、埼玉・深谷市の「キネマ食堂七ツ梅結ぃ房。」を訪れた加藤諒(右)。

2019年4月、埼玉・深谷市の「キネマ食堂七ツ梅結ぃ房。」を訪れた加藤諒(右)。

チラシの棚には海外の作品や日本の作品、名画座でのイベント、ワークショップのお知らせが並び、隅から一枚ずつ全種類とって行く。
売店でお茶を買い、席につき始まるまでチラシを読む。
次に何を観るか考えたり、スクリーンで観たかった昔の作品の上映を知り、スケジュールを確認したりして始まるのを待つ。
上映後はパンフレットを買ったり、買わなかったり。
これが大体一人で映画を観に行く時のルーティーン。

ミニシアターは店員さんも、お客さんも“映画好き”という共通点を持った人が集まっているようでなんだか居心地が良い。
映画好きのお友達やお世話になった方に偶然お会い出来たりするのも嬉しい。

「音楽」の展示(撮影:加藤諒)。

「音楽」の展示(撮影:加藤諒)。

ミニシアターは映画館によって個性が全然違う。
作品の世界観を表現したフォトスポットがある「新宿武蔵野館」、作品をモチーフにしたドリンクやフードがある「テアトルシネマグループ」、アートの展示も行っている「UPLINK吉祥寺」、作品のインタビューの切り抜きが掲示してある所など、ロビーでもボク達を楽しませてくれる。

最も印象深いミニシアターは、僕が初めて主演(トリプル)を務めた映画「ギャングース」の最終上映を観に行った「深谷シネマ」だ。
酒蔵を改装した映画館なので、タイムスリップした様な感覚になり、直ぐ近くにはカフェもあり、「ギャングース」の監督でもある、入江悠さんも食べたというカレーをいただいた。
そこでは地元のおじ様方による映画の談議が繰り広げられていて、僕にも気兼ねなく話しかけてくださり、当時公開中だった「翔んで埼玉」のお話を少々した。
「ギャングース」の上映後に少しだけお話をさせていただく時間があり、ステージ上でお話すると、地元の方であろう大人や子どもが後ろの通路に集まり僕の話に耳を傾けてくれた。
劇場を出ると集まった方々が声をかけてくださり“地域に密着した映画館”なんだなと改めて感じ、心が温まったのを憶えている。

「チャイルド・プレイ」のスタンディで撮影する加藤諒。

「チャイルド・プレイ」のスタンディで撮影する加藤諒。

緊急事態宣言が解除され、映画館の再開も発表され、直ぐにユーロスペースへ「許された子どもたち」を観に行った。
上映前に手洗い・うがいをして、アルコール消毒をして、入場の時に検温して、一席ずつ空けて座る。
きっと観に来ている方々は#STAYHOME期間中、映画館に行きたくてうずうずしていたんだろうな。
久しぶりに劇場で観る映画は、悲しみや悔しさや怒りに溢れている作品で、観ていて苦しかった。
でも、その映画体験が自分を知らない世界へ誘い、登場人物を通じて体感し、自分の心と記憶に刻み込まれるのだ。

上映後、作品の余韻に浸りながら、僕もこんな映画に出たいなぁ~なんて思いを馳せながら帰宅するのです。

そして今日、僕は「新宿シネマカリテ」へ「燕 Yan」を観に行く。

※映画ナタリーでは、業界支援の取り組みをまとめた記事「今、映画のためにできること」を掲載中

加藤諒

加藤諒

加藤諒

1990年2月13日生まれ、静岡県出身。近年の主な出演作に「ギャングース」「翔んで埼玉」「火花」などがある。2019年には「パタリロ!」で映画単独初主演を務め、2020年には「連続ドラマW 大江戸グレートジャーニー ~ザ・お伊勢参り~」「捨ててよ、安達さん」などのドラマに参加。出演映画「一度死んでみた」が全国で公開中のほか、「とんかつDJアゲ太郎」「事故物件 恐い間取り」「老後の資金がありません!」の公開も控えている。

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