「トリツカレ男」いしいしんじ、収録で踊り出した佐野晶哉見て「ジュゼッペそのもの」

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現在公開中のアニメ映画「トリツカレ男」のトークイベント付き上映会が、去る11月23日に東京・新宿ピカデリーにて開催され、髙橋渉監督と原作者のいしいしんじが登壇した。

アニメ映画「トリツカレ男」のトークイベント付き上映会の様子。左から髙橋渉監督、原作者のいしいしんじ

アニメ映画「トリツカレ男」のトークイベント付き上映会の様子。左から髙橋渉監督、原作者のいしいしんじ

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「トリツカレ男」は公園で風船を売るペチカに一目惚れをした“トリツカレ男”ことジュゼッペが主人公のラブストーリー。ジュゼッペは、ペチカの笑顔の裏に悲しみがあると気づき、これまでとりつかれた数々の技を使ってペチカを笑顔にするため、彼女の抱える問題をこっそりと解決していく。髙橋監督はオファーがあった当時を振り返り「キラキラした物語で、自分には(監督が)できないのではないかと思った。もっと(自分より)すごい人にやってもらったほうがよいのではと、怖気づいていた。本当に本編最後スタッフロールに流れたスタッフたちのおかげだと思っている」と語り、スタッフたちを労う。

アニメ映画「トリツカレ男」より

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いしいは、ミュージカルアニメーション映画としてオファーを受けた際の気持ちを「アニメーション映画だと聞いて、うれしかったです! 原作自体が、語り手もいてお芝居っぽい構造になっているので、どういう風になるんだろうとワクワクしました」と回顧。また「原作もオペラのシーンから始まるので、ミュージカルの要素は含まれていたんだと思います。そこを強調していただいたのだと思いますが、できあがったものを観たとき、これは本当に素晴らしい映画だなと思いました! 原作は言ってみれば楽譜、そこには指示が書いていない、そのメロディーから豊かな世界を作り上げていただいた。スタッフの1人ひとりがトリツカレた結果で、自分も原作者としてそこに加わることができたことが光栄です」と喜びを語った。

イベントでは三浦直之が手がけた脚本にも話題が及ぶ。髙橋監督は、「正解は何だろうとみんなで考えながら作りました。映画にするには、構成や、このシーンはどんなシーン、色にするか、スタッフたちの意見も汲み取りながら進めていきました。スタッフも個性的な人たちがたくさん集まりましたが、こんなにもまとまりのある彩りのある映画になってうれしいです」と完成した作品に自信をみせた。

アニメ映画「トリツカレ男」より

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いしいはアフレコにも立ち会ったそうで、ジュゼッペ役の佐野晶哉とペチカ役の上白石萌歌について、「佐野さんは明るくスタジオに入ってこられて、普通にアフレコが始まるかと思ったら、マイクの前で急に踊り出して、ジュゼッペの声そのものみたいになっていました。上白石さんは、例えばセリフの『リンゴ5つと』の『と』の言い回しを何度も練習していました。その風景は、楽器が自らチューニングしているみたいで、そんな2人の天才が声を吹き込む現場に立ち会って、今すごいことが始まっている!と思いました」と当時を振り返る。監督も「佐野さんをアフレコブース越しに見ると、本当にジュゼッペを見ているようで、(佐野さんが)ジュゼッペに話しかける形で収録をやっていました。僕が『こんな感じなんです、ジュゼッペは』とぶつぶつ言っていたら、佐野さんが上手に着地してくれて、本当に頼りっぱなしでした」と2人の演技に太鼓判を押した。

アニメ映画「トリツカレ男」より

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また特に印象的なシーンを聞かれたいしいは、「あ!と思ったのは、最初のジュゼッペの部屋です。原作には書いていないのですが、スタッフのみなさんが考えて、ジュゼッペのトリツカレたものはこんなものじゃないんだろうか、とやってくれた。あれはこの映画のスタッフみなさんのトリツカレの証明だと思います。あの場面が大好きです!」と話す。いしいの発言を受けた髙橋監督は「これについては美術監督の秋山さんの功績が大きいです。具体的に何をどこにどう置くという指示はしていないんです。間取りと、ごちゃごちゃした感じにしたいと伝えたら、秋山さんが仕上げてきてくれました。秋山さんの好きなものが入っていたり、皆の中にあるジュゼッペ的なものが置かれているんだと思います」と明かした。髙橋監督も印象的なシーンを聞かれると、「自分でも感動したシーンは、窓辺のシーンです。アニメーション的に派手な動きがあるわけではないですが、静かな芝居を入れてもらって、感情が伝わるようにやっていただきました。色、音、お芝居、音楽、すべてが完璧で、こんな素晴らしいシーンが作れるなんて、本当にうれしかったです。原作から受けた印象のままで、夢のような、心の部分は本物だという表現ができたのではないかと思います」とアピールした。

アニメ映画「トリツカレ男」より

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セリフについての話題では「どのように生み出していったのか?」と問われたいしいが、「『トリツカレ男』は2週間で書いたんです。全部ひらがなで。浅草に住んでいるときに、まさにシエロがいないジュゼッペみたいな感じで、ぶつぶつ言いながら書いていました。そして、書いているとき、まさに大恋愛中だったんです。僕はいつもそのときに一番トリツカレていたものがストーリーになってしまいます。最新刊『チェロ湖』では蓄音器や音楽のことばかり書いています……。セリフは、特に考えたセリフではなく、一筆書きみたいなものです。だから『これは私も思っていた!』などと感じて共感してもらえるのだと思います」といしい本人がまさに“トリツカレ男”そのもののようなエピソードを披露。これに監督は「原作にない部分(セリフ)もたくさんあるが、脚本の三浦さんの手によって、まるでいしいさんが書いたようなセリフになっていました」と付け加える。いしいも「トリツカレ男の物語はみんなのものだ、ということだと思います。みんなのものになって、ジュゼッペ、ペチカたちも喜んでいると思う。みんなの映画になっています」と語った。

アニメ映画「トリツカレ男」より

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最後に髙橋監督は「皆さんにどう届くのか心配だったが、熱いコメントを書いてくださったり、何度もご覧いただいたり、すごく愛される映画になって、監督冥利に尽きますし、監督をやってよかったと思いました」と話す。いしいは「監督、スタッフのみなさん、そしてご覧いただいたみなさんも、こんなにもトリツカレていただいてありがとうございました。ジュゼッペとシエロのように離ればなれにならない関係でいてください! トリツカレ仲間を増やしましょう」と盛り上げ、舞台挨拶を締めくくった。

なおナタリーでは、公開を記念した特集企画を音楽・映画・コミックの3ジャンルで展開。コミックナタリーでは「トリツカレ男」の公開記念特番でMCを務めた東京ホテイソンの2人に、映画の魅力や、以前から親交のある佐野とのエピソードを語ってもらった。

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アニメ映画「トリツカレ男」

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スタッフ

原作:いしいしんじ「トリツカレ男」(新潮文庫刊)
監督:髙橋渉
脚本:三浦直之
キャラクターデザイン:荒川眞嗣
レイアウト:三原三千夫
美術監督:秋山健太郎
色彩設計:広瀬いづみ
撮影監督:関谷能弘
編集:中葉由美子
音響監督:山田陽
音響効果:野崎博樹、小林亜依里
音楽:atagi(Awesome City Club)
劇伴:波立裕矢、未知瑠
音楽プロデューサー:北原京子
アニメーション制作:シンエイ動画
製作:2025映画「トリツカレ男」製作委員会
配給:バンダイナムコフィルムワークス

キャスト

ジュゼッペ:佐野晶哉Aぇ! group
ペチカ:上白石萌歌
シエロ:柿澤勇人
ツイスト親分:山本高広
サルサ親分:川田紳司
ペチカの母:水樹奈々
タタン:森川智之

(c)2001 いしいしんじ/新潮社 (c)2025 映画「トリツカレ男」製作委員会

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