LINEマンガ史上最大規模のマンガ賞「LINEマンガ webtoon大賞 2025」が開催されている。最優秀賞の賞金として1000万円を用意。LINEマンガへの掲載権はもちろん、さまざまな言語に翻訳され、各国のグループ会社を通して世界中に作品が配信される権利も与えられる。
またすべての受賞者に担当編集が付きデビューをサポート。さらに「喧嘩独学」のストーリーを手がけるT.Jun、「女神降臨」のyaongyi、「四度目の夫」の明生チナミ、「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」の岩原裕二、「まぁるい彼女と残念な彼氏」の作画担当・丘邑やち代が特別審査員として参加するなど、史上最大規模の謳い文句にふさわしいマンガ賞になっている。
そんなマンガ賞を今開催する目的を、LINEマンガ WEBTOON STUDIOの第2編集チームマネージャーを務める長田英将氏に聞いた。
取材・文・撮影 / Honda Yuuki
webtoonを対象にした、LINEマンガ史上最大の規模で開催されるマンガ賞。最優秀賞には賞金1000万円、LINEマンガでの連載権、WEBTOON Entertainmentグループのグローバルサービスでの配信が確約される。
特別審査員賞を設けており、LINEマンガオリジナル作品の作家陣からT.Jun、yaongyi、明生チナミ、岩原裕二、丘邑やち代が特別審査員として参加する。1次選考を通過した作品から読者の投票によって受賞作品を決定する読者投票賞、ネームから応募できるネーム賞なども用意。多角的な方法で審査が行われる。
また受賞者全員にLINEマンガ WEBTOON STUDIOの担当編集が付き、デビューをサポート。完成原稿部門の受賞者には、協賛のセルシスよりスマホ、タブレット、パソコンで利用できるペイントアプリ「CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)」が副賞として進呈される。
賞金と副賞
完成原稿部門
- 最優秀賞
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- 賞金1000万円
- 「LINEマンガ」連載権+グローバル配信権
- 受賞作品の「LINEマンガ」おすすめ面掲載
- CLIP STUDIO PAINT EX 2デバイス 3年版
- 優秀賞
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- 賞金300万円
- 「LINEマンガ」連載権
- 受賞作品の「LINEマンガ」おすすめ面掲載
- CLIP STUDIO PAINT EX 2デバイス 3年版
- 読者投票賞
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- 賞金300万円
- 「LINEマンガ」読み切り掲載権
- 受賞作品の「LINEマンガ」おすすめ面掲載
- CLIP STUDIO PAINT EX 2デバイス 3年版
- 特別審査員賞
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- 賞金100万円
- 「LINEマンガ」読み切り掲載権
- 受賞作品の「LINEマンガ」おすすめ面掲載
- CLIP STUDIO PAINT EX 1デバイス 1年版
- 特別賞
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- 賞金50万円
- 担当編集付き
- 受賞作品の「LINEマンガ」おすすめ面掲載
- CLIP STUDIO PAINT EX 1デバイス 1年版
- 佳作
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- 賞金5万円
- 担当編集付き
ネーム部門
- ネーム賞
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- 賞金30万円
- 担当編集付き
長田英将インタビュー
プロフィール
長田英将(ナガタヒデマサ)
2024年、LINE Digital Frontierに入社。JP Content Production室に所属し、第2編集チームのマネージャーを務める。マンガ・イラスト学科がある大学・専門学校にて、webtoonのセミナーも行っている。
「webtoonにはまだまだ可能性がある」
──まず「LINEマンガ webtoon大賞 2025」を開催する目的を教えていただけますか。
日本発のwebtoonの人気作をもっと生み出したいという思いがまずあります。すでに日本のwebtoonの中にも人気作はたくさんありますが、話題になりやすいのはまだまだ横読みマンガの人気作が多いと感じています。しかし、私はwebtoonにはまだまだ可能性があると思っていて、その可能性を高めるためにもより多くの才能を見つけたい。マンガを描いたことがない人を含めて、「LINEマンガ webtoon大賞 2025」には多くの方々に応募していただきたいです。また、これまで横読みマンガを手がけてこられた作家さんにも注目していまして、ぜひ応募していただきたいですね。
──横読みマンガの作家に注目されている理由を伺ってもいいでしょうか。
学校などで学生の方々にwebtoonについて話す機会がありまして、そのとき講師として招く作家さんは、普段横読みマンガを描いている方でもwebtoonを作るのがお上手なんです。しかし、だからと言ってそういった作家さんがwebtoonに本腰を入れるとは限りません。私自身も横読みマンガを読んで育ちましたから気持ちはわかるのですが、やはり馴染みのある横読みマンガを描かれる方が多いです。この流れを覆すようなインパクトがなければならないと考え、今回はLINEマンガのマンガ賞では史上最高額の1000万円を用意しました。webtoonの読者が増えている状況を踏まえると、webtoonと横読みのどちらも描ける方がいいと思いますし、ぜひこの機会にチャレンジしてほしいです。
──「LINEマンガ webtoon大賞 2025」に特別審査員として参加される明生チナミ先生も、もともと横読みマンガをLINEマンガで連載されていたんですよね。
はい。「四度目の夫」で初めてwebtoonに挑戦してくださって、韓国の行政機関である文化体育観光部と韓国コンテンツ振興院が主催・主管する「2025 WORLD WEBTOON AWARDS」で本賞を受賞されました。日本人作家によるwebtoon作品の本賞受賞は初でした。明生先生のように新たにwebtoonに挑戦される方も少しずつ増えています。あるいは、横読みマンガではなかなか芽が出ない方も、webtoonだと才能が花開くかもしれません。
──とはいえ、横と縦だとネームから作画、演出まですべてが変わりますから、簡単に挑戦できるものではないはずです。「LINEマンガ webtoon大賞 2025」ではモノクロ作品も応募可能ですが、webtoonはフルカラーが基本ですから、着色に苦手意識があるだけで手が出しにくいかもしれません。そこはどう考えますか。
まさにおっしゃる通りで、そうしたハードルを少しでも下げるために、「LINEマンガ WEBTOON Meetup」と称して、12月12日と14日にオンラインセミナーを無料で開催します(取材は開催前に実施)。実際にwebtoonの制作に携わっている方々を登壇ゲストにお招きして、webtoonの作り方をレクチャーしてもらう予定です。webtoonの描き方をまとめたマニュアルなども用意はするんですけれども、ライブペインティング的に、実際に描くときの様子をご覧いただけます。質疑応答も行うので、現役作家にwebtoon作りのリアルを聞ける貴重な機会になるかと。2回目には私も登壇しまして、今の電子出版業界の状況を説明し、webtoonに取り組むメリットをお伝えできればと思っています。
──現役の作家と編集の2つの視点からwebtoonを理解できる機会になるわけですね。今後もこういったセミナーは開催されるのでしょうか。
はい、開催できればと思っています。今回参加できなかった方もぜひ今後ご参加ください。
最優秀賞以外の作品にも海外展開のチャンスあり
──最優秀賞でもう1つ注目されるのがグローバル配信権です。「LINEマンガ webtoon大賞 2025」の開催を発表したリリースには「当社グループのグローバルサービスでの配信」と記載されていますが、具体的にはどういったサービスで配信されるのでしょうか。
英語圏のWEBTOONをはじめ、韓国のNAVER WEBTOON、東南アジア圏のLINE WEBTOONなどになります。LINEマンガも含めて、グループ全体での月間利用者数は1億5540万人(2025年9月末時点)を記録していますので、グローバル配信されると、それだけ多くの読者に自分の作品が届くと思ってもらえたら。たとえ最優秀賞にならなくとも、LINEマンガで連載され人気になった場合には各国の担当者に注目されるので、「じゃあ英語圏でも配信しましょうか」といった声がかかりやすいです。グローバル展開で言えば弊社グループは世界最大規模です。LINEマンガで人気になった場合、世界中に自分の作品を配信できるチャンスがあるとイメージしてもらえるといいと思います。
──グループ会社が各国にあるLINEマンガだからこその強みですよね。自分の作品が世界中に広まる可能性があるのは、単純に夢があります。
LINEマンガ自体もダウンロード数は5500万を超えており、日本国内に限ってもプラットフォームとして最大級の規模ですから、多くの読者に作品を読まれるチャンスを提供できると思います。
──最優秀賞以外に目を向けると、ほかの縦読みマンガ賞では珍しいネーム賞もあります。LINEマンガのマンガ賞ではネームも積極的に募集している印象があるのですが、何か理由はあるのでしょうか。
webtoonに挑戦するハードルを下げる意図があります。マンガをそもそも描いたことがない方は当然ですが、webtoonの形式に慣れていない作家さんも多いので、最初から完成原稿まで描き上げるハードルが思った以上に高いんですね。webtoon用のネームを作るだけでもそれなりに大変ですが、気軽にネームからでも応募できますし、私たちとしてもいろんな作品を読ませてもらえるので、積極的に募集しています。
──なるほど。今回は読者投票も用意されています。優秀賞と同じ賞金300万円としていることからも、読者からの人気を重視していることがうかがえます。
私たちLINEマンガの関係者では見出せない才能を見つけていただきたいという思いで設けた賞になります。最初の査読は私たちがやらせていただくんですけれど、候補作から読者の皆さんに投票してもらい受賞作品を決めます。
──あとは特別審査員賞ですよね。先ほど名前が挙がった「四度目の夫」の明生先生、「喧嘩独学」のストーリーを手がけるT.Jun先生、「女神降臨」のyaongyi先生、「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」の岩原裕二先生、「まぁるい彼女と残念な彼氏」の作画担当・丘邑やち代先生が特別審査員を務められます。審査員が5人いるということは、最大5作品が選ばれることもあるのでしょうか?
審査の状況次第ではありますが、その可能性もありますね。
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受賞後から1年以内の連載開始が目標

