今月の新連載 第7回 [バックナンバー]
コミックナタリー編集部員が振り返る「12月の新連載」──ベテラン陣は安定の面白さ、現実には存在しない部活マンガ、エルフものの勢いがすごい
2026年1月30日 15:00 1
雑誌やWeb、アプリなどでスタートした新連載を、毎月振り返る「今月の新連載」。版元ごとに担当者が決まっているコミックナタリー編集部では、ほぼ毎日のように始まる膨大な数の新連載を、毎日読んで記事を書き続けてきた。そんな部員たちが、その月に面白かった作品や気になった作品、そのほか最新のマンガ業界のトピックなどを振り返る企画だ。第7回は2025年12月にスタートした新連載を語る。
文
乃木坂太郎&奥浩哉の新連載は安定の面白さ
りす
うさぎ 珠子の執念深さとか、珠子をずっと見つめてる幼なじみのみなとの視線とか、短いページからでも読者に伝えてくるパワーがあって、これがマンガ力なのかなと思いました。
りす 現実的な世界観だから、本当に生き返るわけないだろうとは思うんですけど、奇跡的に生き返らせてしまうんじゃないか?みたいな期待をしてしまいますね。ファンタジー要素もないのに、そう思わせてくれる力はすごい。
とり 珠子のほかにも熱傷の痕が残った3人の生徒がいるのも気になります。
ぞう みなとにも過去に大切な人を亡くしたような描写があるので、ほかのキャラクターにも生き返らせたい人がいるのかもしれませんね。
ねずみ 「夏目アラタの結婚」もそうだったんですけど、乃木坂さんの作品ってノスタルジックな雰囲気があるなと思って。古いとかじゃなく昔の物語を見ているみたいな感じで、今回も読んでて思いました。
いぬ デビュー作の「医龍 -Team Medical Dragon-」はちょっと毛色が違いますけど、「幽霊塔」も「夏目アラタ」もミステリーとか謎解き要素がある作品なので、こっちが本来の作家性なのかもしれないですね。
くま 同じくスペリオール(小学館)で始まった
くろねこ 奥さんはコンスタントに作品を描き続けてますけど、毎回安定して面白いですよね。私は「変」の頃からずっと好きなので、新連載が始まるたびに楽しみにしてます。
いぬ めちゃくちゃ読みやすかったです。
ねずみ なんでこんな多種多様なおじさんが描けるんだろう(笑)。
くろねこ なんとなく女体のイメージが強いですけど、おじさんを描くのも上手いですよね。「いぬやしき」の犬屋敷さんは最高のおじいちゃんでしたし(笑)。
りす 奥さんはアイドルも好きだし映画も好きだし、このおじさんたち1人ひとりの中に奥浩哉がいるんだろうなっていう気がします。それと、趣味が合う人とシェアハウスするみたいなテーマって女性向け作品に多い気がするんですよね。その男版ってあんまり読んだことないなと思ってたところに、奥浩哉が描くおじさんシェアハウス物語。いきなりド本命が来た感じ。踏み込んだものを見せてくれるんじゃないかという、期待しかない。
くま 確かに。どういう経緯でこの暮らしになったのかも気になります。
「あおのたつき」の安達智のラブコメ/コメント欄はマンガの新しい楽しみ方
とり 私は「運命の人、絶対に炬燵の布団みたいなアウター着てない」がすごく好きでした。ドラマチックな恋愛を夢見るはるかと、ノンデリの大学院生・帯刀のラブコメディですが、すれ違いラブコメが好きかもしれないと改めて認識しました。
りす
ぞう 「あおのたつき」は江戸時代を舞台にしたファンタジーで、「運命の人、絶対に炬燵の布団みたいなアウター着てない」は現代のラブコメディなので、全然違ったタイプの作品ですよね。
とり 主人公のはるかは介護食向けの肉質軟化の研究をしてるんですけど、3話で認知症を研究してる人と出会って。そこで自分の研究に対して「緊急性は低いように思うけど」とか「お金儲けが上手だよね」とかちょっと嫌味なことを言われたり耳にしちゃったりするんですよね。それではるかがちょっと落ち込んでるところに、帯刀がちゃんと反論してくれてるシーンがよくて。
りす ノンデリだけど素直なだけで嫌味じゃなく描かれるのがいいですね。マンガでノンデリが出てくると、そこを糾弾するほうに行きがちだけど。
ぞう 帯刀は悪意があるわけじゃなくて、フォローするときの言葉も真摯で嘘がないからいいんですよね。はるかも恋に恋してるけど、仕事はちゃんとがんばりたいと思ってるので応援したくなる。なんかドラマ化しそう。
とり わかります。
りす 研究職みたいな特殊な設定のマンガだと、作家さんにその職種の経験があったりしますけど、そういうことではないのかな。
うさぎ 安達さんのXを見たら、マンガワンで公開されたらコメント欄で間違いの指摘があったそうで「取材不足単行本で直します、、」と書かれてますね。
ぞう コメント欄ができたことで気軽に指摘できるようになって、マンガ家の方は大変そうですよね。昔も手紙とかで「ここ違いますよ」って送ってくる熱心な人はいただろうけど。
くろねこ 逆にコメント欄が作品を盛り上げることもありますしね。コメントがいっぱいついてるから読んでみようみたいな人もけっこういそうですし。
うさぎ うちの奥さんもサイコミとかはコメント欄まで含めて読むのが楽しいって言ってますね。最近はそういう流れがあるのかな。
とり LINEマンガもコメント欄があるんですけど、ロマンスファンタジー系って明らかに悪役とわかるような、嫌な感じの女性キャラが出てくるんですよ(笑)。それに対する悪口みたいなのが面白おかしく書かれているので、面白くもあるし共感もあるしって感じで、ついつい読んじゃうんですよね。
ねずみ まだ何も悪いことしてないのに、このキャラは性格悪いとか(笑)。でも作品や作家さんに対する文句とかじゃなくて、その作品の世界に入り込んでる感想なので、純粋に楽しんでる人が多いのかなとも思います。
くろねこ 他人の感想を読んで共感し合うのも含めて読書体験みたいな。
りす 20世紀にはなかったマンガの新しい楽しみ方だ。僕らはマンガの未来を体験している。
“現実には存在しない部活マンガ”って楽しい
とり 「ゆるかぶ~転生したら億り人になって金に溺愛されたかった~」は最初ギャグなのかなと思って読み始めたんですが、意外と勉強になるかもって思いました。ちゃんと知識も描きつつ、ダメなほうに引きずっていく話の流れが好きでした。
うさぎ 株マンガではないですが、似たようなところではフラッパーでやってる「FX戦士くるみちゃん」がけっこう人気ですよね。アニメ化が発表されたときも話題になっていました。
りす 僕は株って全然やらないし興味もないんだけど、株マンガとしてじゃなくて現実には存在しない部活マンガっていうジャンルとして面白く読みました。映像研とかホスト部とか、マンガに出てくる変な部活が好きなんですよね。そういう部活が許されてる学校の空気も。
くろねこ 部活マンガも多いですからね。古いけど「げんしけん」とか。
りす 「げんしけん」に至ってはもはや架空ではないというか。あのマンガの影響で、「げんしけん」っていうサークルが作られた大学もありましたからね。
ぞう 部活って日本独特の文化らしいですよね。例えば海外だと学校のサッカー部ではなくて、学校の外にあるクラブチームに入ることが多いので。そういう日本の独特の仕組みがうまいことマンガでも活かされてるなと。
りす ええー? ほんとにござるかぁ? 海外には部活がない、初めて知りました。ためになる記事ですねこれ(笑)。
うさぎ 日本でも部活の仕組みが変わっていく方向に進んでるらしいですよ。教員の働き方改革とか少子化とかで。最低人数を集めるほど生徒がいないし、地域でクラブみたいにして運営するのが段階的に始まってるそうです。
ぞう それはマンガ界にとっても大ピンチですね(笑)。
りす 学校で友達できない主人公のマンガって多いと思うんですけど、そういう子のよりどころってだいたい部活なんですよね。クラスで友達を作るのに失敗しちゃったから部活入ろうかなみたいな。わかりやすく同じ趣味の人が集まる場所ではあるので、それがなくなると学校生活の在り方がけっこう変わってしまいそうですね。
一工夫した派生マンガ「バキのわ!」/マンガにおける著作権や商標権とは?
ぞう 部活とはちょっと違いますけど、「バキのわ!~バキを語る女子高校生たち~」が面白かったです。ただ「刃牙」を読んでしゃべってる女子高生の話なんですけど、「刃牙」を全然知らなくても面白い。1話目から炭酸が抜けたコーラを飲むっていう有名なシーンが出てきて。なんとなくは知ってるけど、ちゃんと読んだことない人に向けたマンガなのかなと。
いぬ 単なるスピンオフとかじゃなくて、「名探偵コナン」の「犯人の犯沢さん」とか、「ONE PIECE」の「恋するワンピース」みたいな、一工夫した派生マンガですね。
うさぎ 「カレー沢薫、漢を語る。」っていう連載があって、「HELLSING」とか「ゴールデンカムイ」とか「シグルイ」とか、いろんなマンガとかコンテンツのキャラクターを掘り下げるんですけど、それに近いかも知れないですね。これは出版社の垣根を超えてるけど。
ねずみ 「邦キチ! 映子さん」とかもそうですよね。映画ですけど。
いぬ 映画は昔から批評の文化がありますからね。
りす 「バキのわ!」は秋田書店の自社作品だから「刃牙」の話題が思う存分できるわけだけど。マンガとかで、実際の商品名とか作品名を出すときに少しもじって変えたりすることも多いじゃないですか。あれはやっぱり、実名を出すのは難しいんですかね?
くろねこ ちょうどコミックナタリーでマンガの権利についての特集が公開されたばかりですが、弁護士の先生によると、基本的には実名を使っても問題ないことが多いみたいですね。使う側が配慮して自主規制してるパターンが多いらしいです。
うさぎ みんな気にしすぎって感じの話でしたよね。
りす 例えばマクドナルドが出てきて、ただお店として出してるだけなんだけど、その回が炎上して、マクドナルドを貶めるつもりで描いたわけじゃないのにマクドナルドの評判が悪くなってしまって、マクドナルドからなんか言われたら嫌だなってことですよね。
くろねこ そうですね。
いぬ でも単純に、読者としてはもじられるとなんか引っかかりません? ちょっとテンション下がってしまうというか。
りす 確かに。もじり方が面白いパターンもありますけどね。
ねずみ 私は例えばテレビ番組名とかが出てきたら、時代背景がわかってリアリティが出てうれしいなって思います。
とり マンガって二次元なので、そこに三次元のリアルなものが出てくるとちょっと階層違うかもって思うことはありますね。嫌なことはないんですが、二次元の中は二次元で完結してるとスッキリするというか。もじりでクスっとくることもあるので。
くろねこ けっこういろんな捉え方あって面白いですね(笑)。
最近、エルフものの勢いを感じる
くろねこ 私は「魔力枯れのダークエルフ」が好きでした。エルフものもけっこう流行ってますけど、魔力がなくなったエルフが魔術学校で働き始めるっていう展開なので、学園ものっぽくなるのかな。キャラクターもかわいいし、画力にも圧倒されました。
ねずみ こういうパターンだと、魔力がゼロになってもやっぱり最強だったというのはよくあるけど、本当に魔力ゼロのまま新しいことをするっていう展開は意外と珍しいのかな?って思いました。
りす 新しいことを始めるのはいくつになっても楽しい、みたいなお話になっていくのかなあ。魔力がなくなってもまたイチから新しいことを始めればいいっていう達観の仕方は、長生きのエルフらしい考え方ですよね。これが普通の人間だったら失ったものの大きさに絶望しているかもしれないけど、エルフならいくらでも時間があるし、またどんどん覚えていけばいいじゃんと。「フリーレン」以降、エルフものも増えたけどちゃんと面白い作品が多くて勢い感じますね。二番煎じとは言わせない感。
くろねこ エルフに新しい可能性を見出したというか、想像をかき立てられる要素がいろいろあるんでしょうね。
うさぎ 長命っていう設定が何かと使いやすいのかなという感じがします。
くろねこ ほかに面白かった作品ある人いますか?
ねずみ 私は「プロローグは終末で」が面白かったです。1話はロボットと博士のお話ですが、あらすじを読むとロボットが感情を持っていくと書かれてるので、2話から本格的に話が動き出すのかなと。
くま ロボットではありますけど、子供が荒廃した世界の未来を託されるというのは「7SEEDS 外伝」の最終話のシーンを思い出してワクワクしました。図書館に光が差し込むシーンとか、花畑の場面とか、画面の見せ方も魅力的だなと。あと、博士の涙の意味を理解できなかった主人公が新たな旅に向かうというのは、「葬送のフリーレン」の第1話の空気も感じました。
くろねこ ロボットもある意味エルフみたいなところあるかも。長寿というか、人間とは時間の概念が違う存在。
うさぎ 「不滅のあなたへ」みたいな雰囲気も感じますね。何も知らない状態から人を知っていくみたいなストーリー。著者さんのpixivによると、コミティアで発表した同人誌の読み切りがもとになっているらしいですね。
ぞう なんで世界が滅びちゃったんですかね。博士が知らない間に人類が絶滅してましたが。
りす その謎を解いていくような話ではない気がするけど、そこはマンガの面白いところじゃないですか。過去を描きたければ過去をもっと膨らませてもいいし、それは置いておいてロボットの成長の話にもできる。フィクションの面白さですよね。
座談会に参加した編集部員
- いぬ:「あだち充展」に行きました。グッズがけっこう売り切れていて買えなかったので巡回してほしい。
- うさぎ:記憶力が怪しい。新刊が出るたびに、前の話がうろ覚えで、いっそ1巻から……と読み返している。
- くま:「第76回NHK紅白歌合戦」の「IRIS OUT」、めちゃくちゃよかったですね。
- くろねこ:「九条の大罪」の実写版、楽しみだなあ。
- ぞう:「ポンコツ魔王の田舎暮らし」で出てくるドラゴンたちのかわいさを全世界に知ってほしい。
- とり:幼少期はトラウマレベルで怖かったけど、大人になって読んで大ファンになった作品その2「サイコメトラーEIJI」。
- ねずみ:今月の新連載だと、「運命の人、絶対に炬燵の布団みたいなアウター着てない」は引き続き追いかけたいです。
- りす:「逆襲のシャア」を劇場で観ました。青とか緑色の髪の女が一生好き。
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