TVアニメ「死亡遊戯で飯を食う。」上野壮大×小沼則義 “魂の置き所”を共有した2人が語る、とあるいかれた世界の話

1月7日に放送・配信が開始されるや否や、大きな注目を集めるようになったTVアニメ「死亡遊戯で飯を食う。」。第1話放送時にSNSでトレンドに上がった“防腐処理”という肉体改造の要素や、少女たちが死と隣り合わせのゲームに挑み、協力し、あるいは裏切りの果てに行き着く最後の姿が話題になっている。

「このライトノベルがすごい!2024」で新作1位、文庫部門2位を獲得した原作を映像化したのはスタジオディーン。監督は同スタジオによるTVアニメ「義妹生活」で監督デビューを飾った上野壮大が務める。また「義妹生活」の制作で中核を担った複数のスタッフが、「死亡遊戯で飯を食う。」の制作現場にも参加。今回上野監督と対談した音響監督の小沼則義もその1人だ。

小沼のひと言で打ち解けたという2人の出会い、「死亡遊戯で飯を食う。」を作るうえで貫かれた矜持、希死念慮に似た感覚から生まれた特徴的なオープニングテーマやキャスティングへのこだわり、そして本日より放送される最終エピソード《キャンドルウッズ》制作の裏話など、ネタバレも含めてたっぷりと語ってもらった。

※第8話「---- It All」の内容に関わるネタバレを含みます。

取材・文 / はるのおと撮影 / ヨシダヤスシ

出来に確かな自信があった、1時間構成の第1話

──第1話放送後、本作は今冬の新作アニメの中でも屈指の反響を呼んでいます。この状況を予想されていましたか?

上野壮大 反響をいただけているのは、純粋にうれしいです。「そうなるといいな」とは思っていましたが、それは何より原作を最初に読ませていただいたときから、この作品にはとてつもない“力”があると感じていたので。今の状況は、ひとえに原作の持つポテンシャルの現れでしょう。

小沼則義 僕もヒットしてほしいという思いはありましたが、それ以上に1話の出来には確かな自信があったんです。これを観てくれさえすれば、必ずなんらかの媒体の評価や口コミで、熱い感想が広がっていくだろうという予感はありました。予想通りとまでは言いませんが、今の反響には「よしよしよし!」と手応えを感じています(笑)。

左から上野壮大監督、小沼則義音響監督。

左から上野壮大監督、小沼則義音響監督。

──第1話を1時間で放送し、最初のゲーム《ゴーストハウス》の完結まで描くことで、本作の方向性を示せたのも大きかったのではないでしょうか。

上野 そうですね。もともと1時間で放送することが決まっていましたが、《ゴーストハウス》を最後までやり切る構成はアニメの設計としても非常にやりやすかったです。

TVアニメ「死亡遊戯で飯を食う。」《ゴーストハウス》ゲームビジュアル。

TVアニメ「死亡遊戯で飯を食う。」《ゴーストハウス》ゲームビジュアル。

──アフレコも1時間分を一気に録られたのでしょうか。

小沼 いえ、アフレコ自体は物理的な時間や集中力を考慮して、2回に分けて行いました。

──本作はほかのアニメに比べてセリフ量が少ない印象ですが、それでもアフレコの大変さは変わらないんですね。

小沼 本当に毎回大変でした(笑)。通常、アフレコはテストをして、それを受けて我々が演出指示をし、本番という流れで行います。でも、この作品は全話通してテスト・ラステス(ラストテスト)・本番と3回録るスタイルを貫きました。時間は毎回フルで5時間、エピソードによってはそれ以上かかることもありました。しゃべらないシーンも多いし、セリフ量だけで言えば、早ければ2時間で終わりそうな分量なんですけどね。

──どんなやり取りが行われていたのですか?

小沼 我々が監督の意図を汲み取ったうえで、「なぜここで、このキャラクターはこの感情になるのか」を、役者さんと徹底的にディスカッションしました。意図を深く理解してもらわないと、次のお芝居につながらないので。作品のテーマが重い分、演じる側の消耗も激しく、幽鬼役の三浦(千幸)さんなんかは、ずっと考え込みながら演じられていました。自分の中で一度噛み砕く時間を、現場でしっかりと設ける必要があったんです。

《ゴーストハウス》より、幽鬼。

《ゴーストハウス》より、幽鬼。

──現場でのコミュニケーションにおいて、おふたりの役割分担は?

小沼 基本的には監督がトップで、僕は監督がフィルムで表現したいものを、音響という専門技術で最大化する役割だと認識しています。もし僕の好みと監督の好みがぶつかったら、監督の判断を優先するという明確な基準があります。中には監督とバチバチに殴り合う音響監督さんもいらっしゃるようですが、僕は監督と一緒にゴールを探すタイプです。

上野 うっすらと探り合うようなことはありましたけどね(笑)。芝居の聞こえ方の着地点を探るというか。

小沼 そこは立場の違いでも変わりますよね。監督はフィルムの中で聞かせたい音を探るし、僕は音を中心にこう聞かせたいという思いがあるので。ただ、僕は監督が感覚的に「ここは青い感じで」と言ったとしたら、それが深い群青なのか、透明に近いブルーなのかを察して、役者さんに伝わる「演技の言葉」に翻訳するというスタンスです。三浦さんのような若い世代の役者さんにはこう言ったほうが伝わるだろうと、監督の言葉をあえて別の表現に置き換えて説明することもありました。

上野壮大監督

上野壮大監督

「監督、根暗ですねえ」

──おふたりのタッグは「義妹生活」に続き2作目となります。そこでの経験もやりやすさにつながったのでしょうか?

上野 それは間違いなくありました。

小沼 「義妹生活」では、音響制作の方から推薦いただき、監督に承認いただいてチームに入ったんですよね。

上野 今でも鮮明に覚えているのが、最初の顔合わせのときのことで。

小沼 え、なんだろう(笑)。

上野 「義妹生活」は僕の初監督作品で、打ち合わせでもガチガチに緊張していたんです。そうしたら帰り際に、小沼さんが「何かあればなんでも言ってくださいね! できないことは『できない』ってハッキリ言いますから!」とズバッと言ってくださって。僕が遠慮して言い出せそうにないのを察して、あえてハードルを下げてくださったんです。あの一言で、僕の中にあった壁が一気になくなりました。そこからはもう、ずっと密に会話させていただいています。

小沼 そうでしたね。僕は別に「そんなんできねえよ!」って怒るタイプではないし、初めて監督を務めるならなおさら遠慮しちゃうだろうなと思ったので。まずは監督の持っている世界観を好きにぶつけてもらって、それをどう実現するかを一緒に考えたかったんです。

小沼則義音響監督

小沼則義音響監督

──小沼さんから見て、上野監督の映像センスや演出の方向性は、当初どう映りましたか。

小沼 「義妹生活」の第1話のコンテを読んだとき、「おお、なるほど……!」と。ワンカットの長さやレイアウトの組み方に、監督自身の“我”というか、独特の演出思想が色濃く出ていて「オッケーオッケー」って(笑)。僕は美術系の大学を出ていたり、監督が挙げる好きな作品も観ていたりして、精神性、いわば“魂の置き所”みたいなものがすぐに理解できたので話は早かったですね。いわゆる商業的なエンタメとして割り切った作品もある業界だけど、自分はこういう形で世に出たいんだという強いメッセージを感じて。そこに深いシンパシーを感じました。

上野 コンテを読んでもらったあとの打ち合わせで、小沼さんに「言い方が悪いかもしれないけど、監督、根暗ですねえ。僕もそうだからわかります」と言われたのを今でも覚えてます(笑)。すごく恥ずかしかったですが、監督をやるならまずは自分が裸にならないといけないと思っていたので、うれしかったです。

──そうやって培われた信頼関係が、「死亡遊戯で飯を食う。」の特徴的なフィルムにつながっているんですね。ちなみに本作は音響監督以外にも、色彩、撮影、音響、そして制作スタジオ(スタジオディーン)と中核スタッフが「義妹生活」から継続しています。そのメリットは大きいですか?

上野 とても大きいです。この仕事は「カッコいい」「美しい」といった、人によって定義が違う抽象的な感覚を扱うことが多いです。でも、同じチームで続けていくうちに、僕の言う「美しい」の範囲が共有されて、阿吽の呼吸で収束していく。それによってスピード感が上がるし、わかっているからこそ、そこから「外す」ということも可能になるので。