今では定番となった“異世界アニメ”が、まだそれほど多くはなかった2015年。“異世界×自衛隊”という異色の組み合わせで人気を博したのが、TVアニメ「GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」だった。自衛官の経験を持つ原作者・柳内たくみがこだわった自衛隊の描写をはじめ、ファンタジー、ミリタリー、美少女、政治と多彩な要素を融合させた原作小説は、シリーズ累計770万部を突破する大ヒット作。そして「GATE」放送から10年の時を経て、今度は海上自衛隊を舞台にした「ゲートSEASON2」のTVアニメ化が決定した。
2月27日には「ゲート」でもタッグを組んだ竿尾悟によるコミカライズ連載がスタート。これに合わせ、コミックナタリーでは原作者の柳内にロングインタビューを行った。Web小説として約20年前に出発し、その後多くのライトノベル作家にも影響を与えることとなった「ゲート」の誕生秘話、「素晴らしい出会いだった」と語るコミカライズ担当・竿尾への思い、そして海上自衛隊を舞台にした「ゲートSEASON2」のこだわりやアニメへの期待まで、たっぷりと語ってもらっている。
取材・文 / 太田祥暉撮影 / 小山美里
「GATE SEASON2 自衛隊 彼の海にて、斯く戦えり」PV第1弾
リーマンショックの影響でWeb小説に没頭
──まずはTVアニメ「GATE SEASON2 自衛隊 彼の海にて、斯く戦えり」の制作決定おめでとうございます! そんな本作の第1部となる原作小説「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」からお話を伺えればと思います。そもそも、「ゲート」の執筆を始められたきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。
僕は30年ほど前に、ファンタジア長編小説大賞(現:ファンタジア大賞)などのライトノベル新人賞に原稿を送っていた、小説家になりたい青年だったんです。でも、一次選考も通らなくて、そこからは趣味で小説を書くようになっていました。自営業の傍ら、暇な時間にパソコンで執筆していて……。当時は基本的には二次創作小説を書いていたのですが、そこに自衛官を登場させたところネット掲示板などでの反響が大きかったんです。僕は陸上自衛官だった経験があるので、背景をきちんと押さえた描写が注目されたんでしょうね。その反応の多さを受けて、次の作品は自衛官が軸のオリジナルにしよう、と考えたことが「ゲート」の始まりでした。
──自衛官が軸の物語という出発から、どのようにして異世界との往来というアイデアが生まれたのですか?
自衛隊が異なる世界で活躍するお話はそれまでもありましたが、司令部がきちんと存在するような設定の物語はあまりありませんでした。舞台は異世界で、政府管轄の下で自衛隊が動くようにするのであれば、いっそのこと往来できるようにしてみては……という軸が浮かんでいきました。そうなると、補給も常に万全な状態で、連絡も取ることができる場所に門を置くことが望ましいです。そう逆算したとき、門を銀座に置こうと。そこからはもう思いつきですよね。エルフが登場するのも、筆が乗ってきたことによる即興要素でしたから(笑)。
──あのメインヒロインたちもですか?
はい(笑)。例えばロゥリィなんかは、ほとんど予想していない動きをしてくれたキャラクターでした。でも、作者が決め込まなかったからこそ、生き生きとした造形になって、読者の人気を得たのかな、なんて思っています。
──「ゲート」が小説投稿サイト・Arcadiaにて連載されていた当時はまだ、現在のようにWeb小説が人気になっていなかったですよね。
そうですね。なので、「ゲート」を書き始めた当初は、書籍化されるなんてまったく考えていなかったです。ただ、当時だからこそ完結まで書き続けられただろうな、という理由もあって。というのも、「ゲート」執筆時にちょうどリーマンショックが起きたことで、自営業だった僕にもその影響が押し寄せてきたんですよ。お客さんが少なくなってしまって、お店で何もしない時間が増えてしまったんですね。そこで現実逃避をしていた先がWeb小説だったんです。なので、自然と「ゲート」を書く時間が増えていきました。Webで発表することで、何がダメなんだろうというのを知りたかったのもありますし、感想を書いてくれるファンとのやり取りというのも当時は革新的なことで、反応を受けて次を書くのが楽しかったんです。
竿尾悟さんは、戦車とカッコいい男と美少女をすべて描ける人
──そうして完結まで書き切って、書籍化に至ると。
「ゲート」の書籍化は、今のWeb小説のオファーのような形ではなく、アルファポリスさんの「ドリームブッククラブ」という書籍化支援サービスを経由したものでした。このサービスに登録後、一定ポイントを稼がなければ書籍化ができない、というもので……。ところが数日でそれをクリアし、さらに書店さんからの注文も想定以上だったため発売前に初版部数を当初予定から増やし、とそこからは予期せぬこと続きで。気づけば「ゲート」の執筆作業がどんどん増えていき、もういっそお店を閉めて専念しよう、というところまでになりました。
──その人気の一因には、竿尾悟さんによるコミカライズの人気もありましたよね。
竿尾さんとの出会いには、面白いエピソードがあって。そもそも「ゲート」のコミカライズには、戦車とカッコいい男と美少女をすべて描ける人という厳しい条件がありました。そんなオールマイティな人が見つかったと担当編集さんから連絡をいただいて、アルファポリスさんに伺ったところ、ビルのエレベーターで緑の軍装をした男性と乗り合わせたんですよ。これが確実に竿尾さんだ!とお会いしたこともなかったのに、直感して。そこからコミカライズはすさまじい仕上がりにしていただき、とても感謝しています。「ゲート」がここまでの人気になったのは間違いなく竿尾さんのお力のおかげでした。加えて、TVアニメもありましたね。
──2014年と2015年に放送された、A-1 Pictures制作のTVシリーズですね。監督は「ラブライブ!」の京極尚彦さんが務められました。
実はTVアニメ化のお話は、それまでにも何度か来ていたんです。最初こそうれしがっていましたが、何回か流れてしまうと、「今回もなくなるんでしょう?」という気持ちになっていて……。なので、京極監督とお会いしたときにも、まだ現実味は薄かったんですよね。ただ、浦畑(達彦)さんも加わって脚本会議が始まり、もしや今回は実現するのかな?と期待を抱くようになって。そして放送が開始されてからは、もう夢のようでした。
──「ゲート」はその後のWeb小説界にも多大な影響を与えた作品ですから、「『ゲート』を読んで小説家になりました!」「『ゲート』を読んで自衛隊に入りました!」という読者もたくさんいると思いますし、もしかすると両方という方もいらっしゃるかもしれないですね。
元自衛官の小説家っていっぱいいますからね。自衛隊の方に「観てました」って言ってもらえるのはすごくうれしいですし、入りたいなと思っていた人が「自衛隊ってこういう世界なんだ」って参考にしてくれたらいいなと思います。もちろん異世界にはつながらないですが(笑)。
海の物語を描くために、まずは帆船に乗ってみた
──そんなTVシリーズの放送後、原作小説は完結巻が刊行。約2年後となる2017年に、陸上自衛隊から海上自衛隊へ舞台を移した小説「ゲートSEASON2 自衛隊 彼の海にて、斯く戦えり」が開始しました。
「SEASON2」を書き始めたきっかけには、第1部を執筆していた当時に出会った海上自衛官の方々とのやりとりがありました。第1部では陸上自衛隊と航空自衛隊を登場させていますが、海上自衛隊は出番がありません。僕は自衛官募集相談員をやっているんですが、陸海空の自衛官の方たちの前で「ゲート」の話をすると、陸と空の人はニコニコしてくれるんですが、白い服を着た人たちは渋い顔をされているんですよ(笑)。ならば、次は海上自衛隊をメインにした小説を書こう、と思ったことが始まりでした。
──ただ、柳内さんは海上自衛官の経験はありませんよね。
そうなんです。なので、帆船に乗って勉強をするところからスタートしました。ほかにも小型船舶免許を取得したり、ダイビングを経験してみたり……。そのうえで海上自衛隊の方々に取材させていただきました。舞鶴基地から佐世保基地までミサイル艇に乗船した、稀有な経験も楽しかったですね。ただ、冬の日本海だったので荒れまくっていたのですが(笑)。
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メディアミックスは小説からの飛躍が楽しみ



