マンガ大賞2026 ノミネート10作品をマンガ系ライター4人が勝手に大予想

マンガ大賞2026 ノミネート10作品をマンガ系ライター4人が勝手に大予想

「本なら売るほど」「「壇蜜」」「邪神の弁当屋さん」……1年間の話題作を振り返り

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「面白いと思ったマンガを、その時、誰かに薦めたい!」そんな気持ちから書店員をはじめとする有志が集まり、2008年に誕生した「マンガ大賞」。今年で19回目を迎えるこの賞は、もはやマンガ業界には欠かせないアワードだ。賞の選考員は、実行委員が直接声をかけたマンガ好きばかりで、書店員をはじめとするさまざまな職業の人たちが手弁当でこの賞を支えているという。

1月下旬に控えたノミネート発表の前に、コミックナタリーでは4人のマンガライターにノミネート10作品を、マンガ大賞の傾向を分析しつつ予想してもらった。4人共通で挙がっている作品もあれば、各人の好みによる推し作品も。1年間の話題作を振り返りながら、それぞれの予想を楽しんでほしい。

構成 / 坂本恵

※寄稿者を50音順に掲載

マンガ大賞とは?

  • 選考対象は前年の1月1日から12月31日に出版された単行本のうち、最大巻数が8巻までの作品。選考対象には電子書籍も含まれる。
  • 1次選考では各選考委員が「人にぜひ薦めたいと思う作品を5作品」を選出。
  • 2次選考では1次選考の結果から得票数10位までの作品がノミネートされ、選考委員はそのすべてを読み、トップ3を選ぶ。
  • その結果を集計し、「マンガ大賞」が決定する。

粟生こずえのノミネート予想作品は……

「半分姉弟」が「CREA夜ふかしマンガ大賞」で大賞を獲ったとき、「これこそ今年のマンガだ」と得心した。「ハーフ」と呼ばれる人たちの問題に切りこむ社会性を主題に据えつつ、まったくお説教めいたところがなく完璧に“エンタメ” をやり切っているのが見事。これが現代マンガの到達点なのだと感服。今シーズンざっくり3冠くらいいくんじゃないかと思った矢先に「このマンガがすごい!2026」オンナ編1位の報が届いた。幅広い層に支持されており、「これ読んだ?」と話題にしたくなる作品である。「このマン」オトコ編1位の「本なら売るほど」もノミネートは間違いないだろう。リアル書店が減少する一方、若い世代による古書店や独立系書店が増えている現実ともリンクしている。

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近年の「マンガ大賞」の傾向を考察してみると、ジャンルは非常に多岐にわたっている。あえて特徴を読むなら、キャラクターの魅力が際立った作品が多いように思う。

「「壇蜜」」はここに挙げた中で唯一のノンフィクションコミック。よくぞマンガに描いてくださった! サブカルマンガ家と妖艶かつミステリアスなタレントという組み合わせの意外性だけでもそそられるところに超常現象ネタをぶっこみ、それでいて運命的な恋愛のロマンも感じさせる。唯一無二のアクロバティックな読み口だ。

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この類のランキングにファッションヘルスを舞台としたマンガは入りにくそうだけれど、「バルバロ!」にはそんな壁をものともしないポピュラリティがある。ヒリヒリするような現実をウェットにならず、厳しい世の中を生き抜く痛快さがたまらない。

共感したり、応援したくなるキャラクターが物語をぐいぐい引っぱるのは当然だが、そこに〈今〉の核心となるキーワードを挙げるなら「刺さる」であろうか。

そんなわけで夜の世界の女の子たちを主人公とした作品をもう1つ──「みいちゃんと山田さん」。ふんわりかわいらしい絵柄と衝撃的な内容のギャップもインパクト大、SNSでバズった話題作だ。連載誌のマガポケでは常に閲覧ランキング上位をキープ。コメント欄で読者の熱い考察を読むのを楽しみにしている人も多いだろう。みいちゃんのダメっぷりの描写は容赦なく、その痛々しさは読み手を選ぶかもしれないが、決して露悪的な作品とは思わない。フィクションなのに前のめりに登場人物について語りたくなるのは「かわいそう=泣ける」以上の「刺さる」感慨をもたらすからではないか。

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ホッとできる心地よさで人気を集める「おかえり水平線」は、高校生の異母兄弟が主人公。丁寧な心理描写や会話の読みごたえに加え、海辺の街の銭湯という舞台設定が秀逸。ドラマ化に加えアニメ化も発表され、さらに人気が高まる「ひらやすみ」効果で銭湯も注目コンテンツに? みんなが憧れるファンタジーとして機能しているかもしれない。バディもの世界にスパダリを投下したみたいな「ホストと社畜」もまだまだ伸びそう。

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「邪神の弁当屋さん」は一見ほっこり系に見えて生きる意味、心の糧を問いかける作品。現代の重要な論点であるルッキズムを織りこんだ「林檎の国のジョナ」も、さまざまな価値観の人の言動を緻密に描き、読みながらともに考えていきたい気持ちにさせる物語だ。

さて、大本命の1つに挙げたいのは「怪獣を解剖する」。怪獣学者の女性を主人公に、生物学から環境問題まで臨場感いっぱいに、研究者の直面する現実や生活感も含めて描き切った空想エンタテイメント大作。SFに夢を見るワクワク感を思い出させてくれる新鮮な一撃である。

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粟生こずえ(アオウコズエ)

編集者・ライター・作家。「このマンガがすごい!」(宝島社)、「CREA夜ふかしマンガ大賞」(文藝春秋)に立ち上げより寄稿。マンガレビュー、マンガ家インタビュー多数。著書にショートミステリ「3分間サバイバル」シリーズ(あかね書房)、「5分でスカッとする結末 日本一周ナゾトキ珍道中」(講談社)など。SNSはすべて「粟生こずえ」名義。

小田真琴のノミネート予想作品は……

昨年もこの企画に参加させていただいたのだが、的中したのは10作中4作のみ。粟生こずえさんは6作も的中させていたというのに! すごすぎる。今年はもうちょっと頑張りたい。

まず大本命に挙げられるのが児島青「本なら売るほど」。マンガ大賞の選考員には、書店員さんをはじめとした本好きの方が多いものと思われる。本作はすでに「このマンガがすごい!2026」のオトコ編で1位となるなど話題になりまくってはいるが、よりにもよって本を愛する選考員の皆さんが、このあまりにも魅力的なマンガを無視することができるだろうかいやできまい。なにしろ作中に登場する本のセレクトが絶妙すぎるのだ。

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「本なら売るほど」以外にも、昨年はKADOKAWA、というか旧エンターブレイン系が豊作で、サイトウマド「怪獣を解剖する」も大変な話題となった。「THE BEST MANGA 2026 このマンガを読め!」第1位は伊達ではなく、最新の生物学から環境問題、社会問題までも射程にとらえながら、上質なエンタテイメントとして完成されている。

近年のマンガ大賞ではトップ10入りすることがあまりなかったエンターブレイン系だが、そろそろいかがだろうか。よいのではなかろうか。よいと思うのだが。ついでに高妍「隙間」も推したいところである。

とはいえマンガ大賞にはもう少しメジャー寄りの作品を好む傾向があるのもまた事実だ。ビーム / ハルタよりも、アフタヌーンやヤンマガ、あるいはスピリッツな感じ。そうすると浮上してくるのが文村公「マンガラバー」や 蓮尾トウト / 仲里はるな「伍と碁」、イシコ「邪神の弁当屋さん」、志村貴子「そういう家の子の話」あたりの作品群である。昨年惜しくも2位となった鍋倉夫「路傍のフジイ」の再ランクインもあり得るかもしれない。「マンガラバー」と「そういう家の子の話」はまだ1巻しか刊行されていないが、2024年の大賞「君と宇宙を歩くために」も受賞した時点で刊行されていたのは1巻のみであったので、問題にはならない。

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エンタメ性ということで言えば清野とおる「「壇蜜」」は、我々読者の下世話な好奇心に120%応えてくれる快作だ。それでいて嫌味がなく(品のよさすら感じる)、妻・壇蜜への敬意と愛情にあふれたその筆致は、もはや名人芸の域である。

最後の1作は住吉九「サンキューピッチ」か藤見よいこ「半分姉弟」かで悩んだが、毎年ジャンプ / ジャンプ+作品もコンスタントにランクインしているので、前者としておきたい。

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そして唐突に1つ提案なのだが、本屋大賞に海外部門があるように、マンガ大賞にも海外部門を設けてはいかがだろうか? ウリ・ルスト「今日が人生最後の日」(シュークリーム)やユベール / ザンジム「男の皮の物語」(サウザンブックス)など、質の高いグラフィックノベルやBDが、昨年も何冊か翻訳出版された。高い知名度を誇るこの賞が、世界にも多くの魅力的な作品があることを知らしめる縁となってほしいと願うものである。

予想とはいえ、どうしても自分の好みには引き摺られてしまうわけで、世評は高くとも面白いと思えないものは挙げられない。その甘さが的中率の低さにつながっている可能性もあるが、さて、今年はいかに。皆さんもぜひ予想してみてほしい。

小田真琴(オダマコト)

女子マンガ研究家。Web、雑誌などで、おもに大人の女性向けのマンガを選書・紹介しつつ、マンガ家のインタビュー記事も執筆。年末年始はEテレでオンエアされていた「AKIRA」を息子(10歳)に見せつつヒロアカなど昨今の人気作に与えた影響を解説して楽しく過ごしておりました。

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「ミハルの戦場」「起承転転」「じゃあ、あんたが作ってみろよ!」

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