「COSMOS」をINI・田島将吾が語る|人生で初めて自分で見つけたマンガは、日常の素晴らしさに気づかせてくれるSFだった──

「べるぜバブ」の田村隆平による最新作として、月刊サンデーGX(小学館)で連載中の「COSMOS」。宇宙人専門の保険調査員を主人公に、地球に潜む外星人たちの孤独や愛、そして“嘘”が描かれている。近年数々のマンガ賞で上位にランクインし、1月には第71回小学館漫画賞を受賞した注目作だ。

この「COSMOS」を「人生で初めて自分で見つけたマンガ」として愛読しているのが、INIの田島将吾。主人公を彷彿とさせるスーツ姿の撮り下ろし写真とともに、本作のどこに惹かれ、何を受け取ったのかを紐解いていく。その中では「保険をかけてでも守りたいもの」といったパーソナルな話題も。最後には、作者・田村から特大のサプライズプレゼントが待っていた。

取材・文 / 岸野恵加撮影 / 須田卓馬
ヘアメイク / 西村純菜(MASTER LIGTHS)スタイリング / RIKI YAMADA

非現実な設定なのに、不思議とリアル

──今回は、田島さんがINIのラジオ番組「From INI」で「COSMOS」をオススメしていたことをきっかけにお声がけさせていただきました。普段からマンガはよく読まれるんですか?

実は僕は、子供の頃からあまりマンガに触れずに育ってきて、ここ1年くらいで急にハマったんです。まず「亜人」と「東京喰種トーキョーグール」を読んで、その次に人生で3作目に手に取ったマンガが「COSMOS」でした。

──人生で3作目とは! 「COSMOS」とは何をきっかけに出会いましたか?

「東京喰種」の次に読む作品をネットで探していたんです。注目度ランキングで作品を1つずつチェックしていたら、「COSMOS」の絵のタッチや世界観にすごく惹かれました。「亜人」と「東京喰種」はアニメを観てから原作マンガを手に取るという流れだったのですが、「COSMOS」は初めて自分で見つけたマンガ作品なので、なんだか特別な思い入れがあります。

田島将吾

田島将吾

──マンガアプリや電子書籍で読まれたんですか?

いえ、紙の単行本を買いました。当時は5巻まで出ていたので、そこまで一気に購入して。マンガだけではなく小説などもですが、気に入った作品は紙で持っておきたいんですよね。紙のほうが頭にするっと内容が入ってきて、しっかり噛み締められる。映像と違って、マンガは自分のスピードで没入できるところも好きです。

──「COSMOS」の絵や世界観に惹かれたということですが、どんな部分に心を掴まれたのか、もう少し詳しく教えてください。

主人公の水森楓は人の嘘を嗅ぎ分けられる少年で、宇宙人専門の保険会社に入る。そんな非現実的な設定の作品ですが、それが日常生活の中に自然に混ざっている感覚があったんです。親近感を抱く部分も多くて、不思議とリアルに感じられてしまう。まずそこが面白いと思いました。

宇宙人専門の保険会社・COSMOSのメンバー。手前の椅子に腰掛けているのが、主人公の水森楓。

宇宙人専門の保険会社・COSMOSのメンバー。手前の椅子に腰掛けているのが、主人公の水森楓。

──確かに、SFと聞くと敷居が高く感じてしまう人も多いかもしれないですが、「COSMOS」は身近な世界の出来事のように読めますよね。それぞれの宇宙人の背景もしっかりと描かれていますし。

泣かされるシーンが本当に多いです。特に好きなのは、水森のバイトの先輩である油井さんのエピソード(第4話)。油井先輩が“やり残したこと”を叶えるために、水森と一緒にウユニ塩湖に行くのですが、最後に満天の星空を見るシーンが本当にきれいで。見開きページの美しさが、強く記憶に残っています。あとは、誘拐した人間の子供を4年間育てた宇宙人のエピソードにも胸を打たれました。

第4話より。
第4話より。

第4話より。

──「デルとほしのにわ」(第7、8話)ですね。虐待されていた女の子・なつを、宇宙人の八添が誘拐して育てるという。

回想シーンでは八添となつちゃんが過ごした日々が丁寧に描かれていて、八添が愛情たっぷりに育てていたことが伝わってくるんですよね。なのに悲しい結末を迎えてしまって歯痒かったし、八添の気持ちを想像してすごく泣けました。八添はなつちゃんのために「これを見ると自分のことを思い出せるから」と手作りの絵本を残していて、なつちゃんは記憶を消されても、八添との思い出を心の中に大事に秘めている。本当に感動的でした。

第7話より。

第7話より。

──地球人だけではなく、宇宙人にもどっぷりと感情移入してしまいますよね。

はい。少しずつ幼化していく双子のマンガ家姉妹のエピソード(第21、22話)も泣けましたし……。宇宙人に限らず、地球人のエピソードもジーンとするものが多くて。水森の妹・さくらが高校に入学して、吹奏楽部の部員との温度差に悩むエピソードは、青春そのもので特に好きですね。そんなふうに人間のいろいろな面が、すごく上手に描かれている作品だと思います。僕は好きなシーンやセリフを、写真に撮って記録しているんですよ。ホストクラブのエピソードで、水森が「綺麗な嘘で騙すなら、永遠に騙し続けろよ。」と聖夜に伝えるこのシーンは特に好きで……(スマホの写真フォルダを見せる)。「このセリフ、僕もいつか使おう!」と思っています(笑)。

第14話より。田島将吾が写真に撮ったというワンシーン。

第14話より。田島将吾が写真に撮ったというワンシーン。

──(笑)。そうしたヒューマンドラマが「COSMOS」の大きな魅力である一方で、バトルシーンの描写もとても見応えがありますよね。

本当に! 亜空間でのバトルは特に躍動感と迫力がすごくて、「え、これ最終回じゃないよね!?」と思うほどでした。戦いが宇宙規模になってきて、どこまで行ってしまうんだろうと思います。その一方で、笑えるシーンも多いですよね。第6話で、水森と砂噛が誘拐された宇宙人の公女を追っていたら、逆に自分たちが誘拐犯になってしまった展開は、いい意味で裏切られて笑えました。本当に感情が忙しい作品です。

──作者の田村隆平先生は代表作「べるぜバブ」を筆頭に、巧みなギャグ描写に定評がある方なんです。「COSMOS」ではギャグテイストが控えめですが、それでもセンスが随所に光っていますよね。過去のインタビューで田村先生は、「『COSMOS』ではエピソードごとに、ヒューマンドラマやコメディ、アクションなど、いろんなチャレンジをしている」とお話しされていました。

だからいろんな感情を読者にもたらしてくれるんですね。なのに全然散らかっていなくて、しっかりまとまっていて……すごいなあ。挑戦されているなんて全然感じなかったし、ただただ「面白い!」と思わされてばかりだったけど、それは田村先生の手腕なんですね。先生のほかの作品もぜひ読んでみたいです。

僕も嘘を見抜く能力が欲しい

──田島さんが特に好きな「COSMOS」のキャラクターを挙げるとすると?

うーん……やっぱり水森ですかね。まだ高校生なのに、COSMOSに出会ってから意外とスッと、新たな道に順応していって。彼のそういう真っ直ぐなところや、一生懸命がんばるところを見習いたいです。妹がいるのも僕と同じなので、親近感を感じますね。あと、嘘を見抜く能力は僕も欲しいです!

田島将吾

田島将吾

──田島さんはお仕事で人狼などのゲームをする機会も多いと思いますが、メンバーの嘘がすぐにわかってしまいますね(笑)。

そうなりたいです!(笑) 全部お見通しなのに、そう見せないように振る舞うのも楽しそうです。

──ちなみに田島さんは、他人の嘘を見抜けるタイプですか?

いえ、見抜けないですね……。人を信じたい気持ちが強いんです。でも、信じ過ぎて痛い目を見ることもあると思うので、そういう面でも水森の能力には憧れますね。

田島将吾

田島将吾

──では「なれるものならこのキャラクターになってみたい」というキャラは?

うーん……潤登局長! 部下にからかわれても笑える余裕に心の広さを感じて。こんな大人になりたいです。マスクで顔が見えないからミステリアスですよね。今後、潤登がメインで描かれるエピソードがあったらうれしいです。

潤登局長はCOSMOSの東京支局長。常にマスクを着用している。

潤登局長はCOSMOSの東京支局長。常にマスクを着用している。

──意外な人選でした(笑)。ちなみに、読んでいてINIのメンバーを連想したキャラはいましたか?

数理の専門家であるアクチュアリーのジブチハイムは、少し(シュウ豊凡フェンファンが思い浮かびました。目がスッとしたビジュアルもちょっと似ているし、豊凡にも、人生のリスクをしっかり計算していそうな知性を感じます。

ジブチハイムはCOSMOSに所属するアクチュアリー。地球における宇宙人のリスク計算をすべて担っている。

ジブチハイムはCOSMOSに所属するアクチュアリー。地球における宇宙人のリスク計算をすべて担っている。