「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2026」男性・女性・異世界部門賞の受賞作6タイトルを担当編集者がプレゼン

コミックシーモア主催の「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2026」は、「次に来るヒット作品はこれだ!」と出版社が推薦した作品の中から、一般投票で大賞を選ぶマンガ賞。男性部門、女性部門、異世界部門、ラノベ部門、BL部門、TL部門の6部門が設けられており、その結果発表が2月に行われた。

この特集では、男性部門賞、女性部門賞、異世界部門賞を受賞した計6作品を紹介。「君と宇宙を歩くために」「ホストと社畜」「おひとり様には慣れましたので。 婚約者放置中!」「ベル・プペーのスパダリ婚約~『好みじゃない』と言われた人形姫、我慢をやめたら皇子がデレデレになった。実に愛い!~」「あなたのお城の小人さん ~御飯下さい、働きますっ~」「公爵様、悪妻の私はもう放っておいてください」について、それぞれの担当編集者にプレゼンしてもらった。

男性部門賞

「君と宇宙を歩くために」
泥ノ田犬彦
講談社

「君と宇宙を歩くために」泥ノ田犬彦

「君と宇宙を歩くために」泥ノ田犬彦

勉強もバイトも続かないヤンキー・小林大和。ある日小林は、先輩から怪しいバイトに誘われていたところを、転校してきたばかりのクラスメイト・宇野に助けられる。宇野はマルチタスクや大きな音が苦手で、人と同じように生活するため工夫して毎日を過ごしていた。小林は、宇野のことを知れば知るほど彼の生き方に惹かれ、自分も変わろうと思うようになる。“普通”が苦手な2人が、壁にぶつかりながらも楽しく生きるために奮闘する。

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担当編集者・Fはた氏(アフタヌーン編集部)コメント

Q. 受賞した感想をお聞かせください。

泥ノ田さん、本当におめでとうございます! いつも謙虚な方なので、お伝えした際は「私でいいんですか!?」とおっしゃっていましたが、大変お喜びでした。賞を頂戴したことで、さらに多くの読者の方が、本作にご興味を持っていただければ幸いです。

Q. 「電子コミック大賞」にどういった印象を持っていますか?

電子書店はマンガにとって本当に大切な、読者の方との大きな出会いの場だと思うのですが、電子コミック大賞があることで、作品が埋もれることなくよりたくさんの読者の方に届く、貴重なきっかけになっていると感じております。

Q. 「君と宇宙を歩くために」の推しポイントはどんなところでしょうか。

個人的にこの作品を象徴するような言葉だと思うのが、第3話、主人公である宇野と小林が所属する天文部の、顧問の井上先生が言うセリフです。
宇野から教わって、空にある「点」が大きな星である、ということを小林が知った後、先生はこう言います。

「一体どのくらいの人が『点だと思っていたものが点ではなかった』と気が付けるでしょう。そしてそれを笑わずに教えてくれる友と出会えるのでしょうか」

「君と宇宙を歩くために」第3話より。
「君と宇宙を歩くために」第3話より。

「君と宇宙を歩くために」第3話より。

宇野と小林、2人の出会いとは“どういうこと”なのか、が伝わってくるセリフだと思います。

Q. 制作時の裏話や先生との印象的な思い出を教えてください。

初めて泥ノ田さんと出会ったのはオリジナル同人誌の即売会・コミティアだったのですが、最初は主にホラーを描いていらっしゃいました。ただ、ホラーの中で、人間の感情を丁寧に描いている方だと感じ、その表現に魅了されてお声がけしました。
最初に一緒に打ち合わせをして作った作品「東京人形」(アフタヌーンの新人賞・四季賞投稿作)もホラーだったのですが、その後、ホラーではない形で泥ノ田さんの描く魅力的な感情表現を活かせるお話を読みたい、と何回か打ち合わせを重ねました。すると、いきなり90ページ以上の読み切りネームが一挙に送られてきて、それが現在の「君と宇宙~」第1話の原型になりました。

Q. ぜひ読んでほしいというエピソードや話数、シーンはどこでしょうか?

何はともあれ、第1話を読んでほしいです。どこかの学校の教室で、いわゆる「ザ・主人公」みたいな、世界を変えるような人たちじゃない人たちのちょっとした出会いと、ちょっとした変化・成長のお話なのですが、だからこそ、読んだ方に寄り添って、共に歩んでいってくれるような物語の始まりになっていると思います。宇野と小林、2人の「その先」が気になること間違いなしです。

「君と宇宙を歩くために」第1話より。

「君と宇宙を歩くために」第1話より。

「ホストと社畜」
河尻みつる
双葉社

「ホストと社畜」河尻みつる

「ホストと社畜」河尻みつる

ハードワークなシステムエンジニア・直人と、人気ホスト・蓮。歌舞伎町の牛丼屋で決まって早朝に顔を合わせる2人は、あることをきっかけに一緒に朝食を取るようになる。並んで朝ごはんを食べるだけの関係だが、意外な共通点が見つかったり、相手のおかげで考え方が変わったりと、不思議な友情が育まれていく。

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担当編集者・小柳氏(第三コミック出版部)コメント

Q. 受賞した感想をお聞かせください。

連載が始まる前、「ホストと社畜」のプロトタイプができたくらいの頃、河尻先生へ「毎日がんばりすぎてちょっと疲れてしまっている人を全肯定してくれて、読んだ人が明日もがんばろうと思えるような作品を描いてほしい」というお願いをしていたので、「この作品を読んで元気になってくれた方がやっぱりたくさんいたんだ!」と、とてもうれしい気持ちになりました。

河尻先生へ受賞をお伝えしたときは大変驚いていましたが、想像以上にたくさんの方が投票してくださったことに、とても喜んでいらっしゃいました。

Q. 「電子コミック大賞」にどういった印象を持っていますか?

今まで届いていなかった読者の方に作品を知っていただく貴重な機会をいただける賞だと思っています。
特に毎日たくさんのマンガが配信される電子書店さんでは、新刊が出ても簡単に埋もれてしまうため、エントリー作品や受賞作品としていろいろな方の目に触れることで、「読んでみようかな」と思ってもらえるチャンスをいただけるのが大変ありがたいです。
また、「みんなが選ぶ!!」というコンセプトがシンプルで、「こんなにたくさんの方に応援してもらえているんだ!」と肌で感じられるため、マンガ家さんにとっても担当編集にとっても、とても励みになる賞だと思いました。

Q. 「ホストと社畜」の推しポイントはどんなところでしょうか。

一言でまとめるのがとっても難しいのですが、社畜の直人とホストの蓮、年齢も職業も育った環境も何もかも違う2人にしか出せない「絶妙な空気感」が、この作品ならではの魅力ではないかと思っています。

「ホストと社畜」プロローグより。
「ホストと社畜」プロローグより。

「ホストと社畜」プロローグより。

河尻先生が以前、この作品は「当たり前のことをきちんと描く」ということを大事にしているとおっしゃっていて。
例えば、ちょっとしたことにも「ありがとう」や「ごめんね」を言うとか、話している途中で「うんうん」って相槌を打つとか、本筋には関係ない、マンガだと省略しがちなセリフを、「ホストと社畜」はあえて残しているんです。

「ホストと社畜」第16話より。

「ホストと社畜」第16話より。

「ホストと社畜」第16話より。

「ホストと社畜」第16話より。

それは「何かしてあげた時に『ありがとう』って言われたらやってよかったなって思える」とか「相槌を打ってもらえたら、話をちゃんと聞いてくれてるんだと感じられてうれしい」みたいな、日常に転がっているあたりまえだけどちょっとうれしい感情を入れたいからとのことだったのですが、そういう細かな描写の積み重ねが、この2人のあったかくて優しい空気感を作り出しているのではないかと思います。

「ホストと社畜」第9話より。

「ホストと社畜」第9話より。

お互いが何かをしてもらった時に自然にお礼を言ったり、心からうれしそうな反応をしたり。そんな素直でかわいい2人がじわじわと友情を育んでいくところに注目してほしいです。

Q. 制作時の裏話や先生との印象的な思い出を教えてください。

「第5話 ホストと社畜と店員さん」は、もともと考えていたテーマではうまくまとまらずにタイムリミットが来てしまい、河尻さんが4時間くらいでネームを描いてきてくださったお話なんです。そんな経緯もあり、店員さんの「晴世」主役のお話はこの1話限りのつもりだったのですが、読者のみなさんからの反響があまりにも大きかったため、再登場してもらうことになりました。
晴世をはじめ、直人の職場の先輩・福田さん、お隣さんの田淵くん、蓮の姫・桃子、ボーイのユウジや豪さんなど、脇を固めるキャラクターもとても個性的なのですが、彼らが主役のときの打ち合わせは、いつも盛り上がる印象があります。

Q. ぜひ読んでほしいというエピソードや話数、シーンはどこでしょうか?

もう本当にどのお話も大好きなので、最初から最後まで全部読んでいただきたいのですが、単行本3巻に収録されている「第24話 ホストと社畜と就活生」は、蓮と直人のハッピーな空気感が周りにも連鎖していくことがわかる、とても好きな回です。

「ホストと社畜」第24話より。
「ホストと社畜」第24話より。

「ホストと社畜」第24話より。

たまたま2人の隣に座っただけの大学4年生・田嶋くん視点のお話なのですが、素直なキャラクターが多い「ホストと社畜」には珍しく、ちょっとひねくれた男の子で。
就活で忙しくて心が摩耗してしまっているので、最初は蓮と直人のことを「ケッ」と思っているのですが、2人のゆるくてあったかい空気にどんどん包まれて、心にゆとりができていく──まるでこのマンガを読んでいるときの私みたいだな……とネームをいただいたときに思いました。

「ホストと社畜」第24話より。

「ホストと社畜」第24話より。

「ホストと社畜」第24話より。

「ホストと社畜」第24話より。

最後に田嶋くんがめちゃくちゃいい笑顔を見せてくれるのですが、気づくと読んでいた自分も同じ顔になっていて。
今就活をがんばっている方だけでなく、毎日をがんばって生きているたくさんの方が共感できるお話だと思うので、ぜひみなさんにも田嶋くんと同じように笑顔になってほしいなと思います。