4月7日に新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、緊急事態宣言が発令。5月に入って段階的に解除され、5月25日には首都圏と北海道で続いていた同宣言も全面解除となった。約1カ月半の間、全国の書店は営業を自粛したり時短営業を実施したりしている店舗も多く、新型コロナの影響を受けなかった書店や書店員は少ないだろう。
コミックナタリーでは、「コロナ禍とこれから」というテーマで書店員の声を届けるコラムを展開。新型コロナウイルスの書店への影響、緊急事態宣言を聞いたときの思い、そしてこれから書店の展望を聞いた。また各書店員には「コロナ禍の今、支えになってくれるおすすめ本」も紹介してもらった。目利きが選んだおすすめ本、ぜひチェックしてほしい。
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岩手県・内田書店 内田正彦氏
コロナ禍とこれから
今の書店はスマホやキャッシュレスの普及により、本を選ぶ場所ではなく、単に受け取る場所、買う場所になっている気がします。新型コロナウイルスの感染拡大により、立ち読みなどによる長期滞在や、必要以上な本への接触を禁止されることにより、上記の傾向にさらに拍車がかかるのではないでしょうか。そのため、ひと昔前のように広い店内に取次や書店員選定のたくさんの本が陳列される店ではなく、規模は小さくても、地元の来客者の方からSNSなどを使った事前予約により、必要な本を必要な時に必要な分だけ入荷できるような書店や、場合によっては書店の無人化が進んでいくのではないかと思っています。
コロナ禍の今、支えになってくれるおすすめ本
「ドラことば 心に響くドラえもん名言集」(小学館)「ひとにたよってばかりいては、いつまでたっても一人前になれんぞ。」「にが手ならなおさらぶつかっていかなくちゃ」など今だと心に響く名言がたくさん書いてある本です。
内田書店 本店
岩手県遠野市中央通り3-11
神奈川県・紀伊國屋書店横浜店 川俣めぐみ氏
コロナ禍とこれから
緊急事態宣言の発令、もう数日待ってくれないかなと祈るような気持ちだった。発令後はお店もどうなるかわからないし、みんな本どころではなくなってしまうだろうと思っていたから。
発令のあった4/7は本屋大賞の発表日だった。ずっと大好きでおすすめしてきた本が大賞だった。通常なら翌日から週末にかけてたくさんの人に手にしてもらうはずだったのに、休業になり売ることができなくなった。
書店自体は休業要請には含まれませんでしたが、商業施設に入っている多くの書店は休業になりました。
本屋大賞に限らず、休業中もおすすめしたい本はどんどん発売になり、でも売ることができない。とてももどかしい状況でした。
再開後はまだどうなっていくのかわからないけれど、確実に休業前とは違うはず。どう違っていくにせよ、出版社、書店が協力して柔軟に対応していけるようになるといいなと思っています。
コロナ禍の今、支えになってくれるおすすめ本
最果タヒ「夜空はいつでも最高密度の青色だ」(リトルモア)物語が好きで、物語に救われたこともたくさんある。けれど不安を抱えているとなかなか文章が心に届きにくい。そんな時には詩集がいい。最果タヒの詩はどんな感情にも寄り添ってくれる気がする。寄り添って、そして解き放ってくれる。
東京都・ヴィレッジヴァンガード下北沢店 長谷川朗氏
コロナ禍とこれから
非常事態宣言になり数日間休業するも、4月21日から当店は時間短縮での営業を再開することとなりました。
普通の本屋さんとは異なるのですが、周りの本屋さんが休業していたので予想以上に本の売り上げはありました。中でも一番問い合わせが多かったのが復刊したばかりの映画秘宝。新刊が出たばかりの村上春樹さんより映画秘宝。笑。さすがです下北沢。毎日何回聞かれたことか。そしてコミックですね。時間ができたので一気読みしたいという欲求でしょうか、まとめ買いが多くなりました。キングダムやワンピースなどのヒット作もそうですが、手塚治虫など過去の名作もこの機会にという方が多くみられました。他にお店が開いてないのでご近所さんがふらっと立ち寄り、何か面白そうなものないかな?とフラットな目線で新刊、既刊関係なく探していただけたと思います。それこそ僕たちがずっとやってきたことなのでうれしかったです。
ネットでは出会えない作品との出会いが本屋にはあるということを再度気づいてくれた方もいたと思います。外出自粛でなかなか外出できなかった方もこれからやっと外に出れる生活が始まりやはり本屋で本を探すの楽しいと思っていただけたらと思います。
コロナ禍の今、支えになってくれるおすすめ本
岩明均「七夕の国」(小学館)この時期に逃しているマンガを読む時間を作り、出会ったのが岩明均さんの「七夕の国」。民俗学とSFが融合したストーリーで最高なのですが、岩明さんの描く人物は芯が強く正しいことを貫く姿勢がいいんです。
東京都・明正堂アトレ上野店 増山明子氏
コロナ禍とこれから
緊急事態宣言を受け休業となった時の気持ちは「本当に?」だった。商業施設も店も割と閉めないと思っていたからだ。店の経営者がスタッフの安全に配慮したのは意外だった。それだけ大変なことなんだと家ではじっとしていた。
しかし休業中でも荷物は止めなかったので社員一人ずつ交代出社し返品や入荷をし普段の業務より大変だった。店内に荷物が増えていくのを見て物流を止めることの大変さが分かった。
営業を再開して感じたのが多くの方が来店したことだった。自分が思っているより「書店って好かれている」と感じた。この「好かれている」が今だけなのか今後もなのか、お客様と我々書店お互いに試されているなあと感じながら働いている。全国の書店が営業再開し以前のように働けることを願っている。
コロナ禍の今、支えになってくれるおすすめ本
椹野道流「新装版 壺中の天 鬼籍通覧」(講談社)お風呂で読むのが楽しみでした。
仕事へのプロフェッショナルを感じる反面
美味しい食べ物が沢山出てくる作品です。
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「売ることのできないもどかしさ」「一気読み需要到来」それぞれの書店の1カ月半 | 書店員が語る「コロナ禍とこれから」 第1回 https://t.co/vjTMovVvhw