岸田國士戯曲賞を受賞の上田誠「これからもコメディを開拓していきたい」

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第61回岸田國士戯曲賞授賞式が本日4月17日に東京・日本出版クラブ会館にて行われ、ヨーロッパ企画の上田誠が「来てけつかるべき新世界」で岸田國士戯曲賞を受賞した。

第61回岸田國士戯曲賞授賞式より。上田誠。

第61回岸田國士戯曲賞授賞式より。上田誠。

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第61回岸田國士戯曲賞授賞式より。

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第61回岸田國士戯曲賞授賞式より。ケラリーノ・サンドロヴィッチ。

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第61回岸田國士戯曲賞授賞式より。上田誠。

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上田は、正賞の時計と副賞の20万円を授与された。贈呈式ののち、選考委員を代表して、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が選考結果を報告した。例年、選考委員は最終候補作品に対して、◯と△と×をつけて受賞作を絞り込んでいるが、今年は野田秀樹の意見で△にもプラスとマイナスを設け、◯が2点、△プラスが1.5点、△が1点、△マイナスが0.5点、×が0点という配点で候補作に点数を付けていったと説明。その段階で、上田作品が10点、市原佐都子「毛美子不毛話」が5点、林慎一郎「PORTAL」と平塚直隆「ここはカナダじゃない」が4.5点を獲得し、4作品に絞られたと話す。各作品に対する選考委員の発言を紹介する中で、上田作品は圧倒的な評価を得たと話し、「僕も笑いを中心にした芝居を作っていますが、この密度、このクオリティで作品を続けられるのは、持って生まれた才能もあるでしょうが、相当な努力の上に書き上げられていると思います。こういったエンタテインメントの作品が岸田戯曲賞にそぐうのかという意見もありましたが、圧倒的なうまさでねじ伏せた感じがあります」と評価する。さらに「主宰としては、劇団員が喜んでくれるのが一番うれしいんですよね。僕も(ナイロン100℃が)来年25周年なんですが、それだけやってくると、何か別の関係性も生まれてきます。20年近く一緒にやってきた皆さん、上田くんをお祝いしてあげてください。本当におめでとうございます」と祝辞を述べた。

続けて上田が「本当にまさかもらえると思っていなくて、最終選考にノミネートされるとも思ってなかったので、うれしさもひとしおでした」と受賞の喜びを語る。また「受賞の連絡をいただいたときはロケで、山の上の、暗闇の中にいて、ロケ中だったのでさらに暗いところへ移動して、1人で喜びをかみしめました」と語り会場を笑いで包む。また、「1998年にヨーロッパ企画を立ち上げ、一貫してコメディを上演しています。『来てけつかるべき新世界』は、大阪人情喜劇みたいなことをやろうということになり、初めて関西弁でやった作品でした。着想のきっかけは、書店でドローンの本を見つけたから。大阪のおっさんがドローンと戦ってる画が浮かんで『これだ!』と思いました」と振り返る。さらに劇団員やスタッフなど、自作がさまざまな人たちとの共同制作から生まれていることを語り、「この作品は特に、キャストとスタッフの和音が邪魔し合わない形でレイアウトできた作品だなと思っています。その和音を褒めていただき、このままこの道で進んで行っていいと言われたようで、喜びもひとしおです」と笑顔を見せる。また「これからもコメディを開拓していきたい」と意欲をのぞかせ「モアイコメディ、宝石コメディ、ビックリマンコメディ、テトラポットコメディ、ファイルコメディなどを構想中で、これらを1つずつ丁寧に実現していけたら」と野望を語った。

その後、乾杯の挨拶に立った選考委員の宮沢章夫は「僕は『うまい』という言葉を否定的に使うことが多いのですが、(上田作品は)それを超えている気がします。うまいという言葉では語れない何かがある」と賛辞を述べた。

第61回岸田國士戯曲賞授賞式より。

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第61回岸田國士戯曲賞授賞式より。

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また会の後半ではハイバイの岩井秀人ら、ヨーロッパ企画ゆかりの面々が祝辞を述べた。岩井は上田が、子供の頃からゲームのプログラミングに親しんでいたことが戯曲を構造的に捉える目線につながっているのではないかと涙を交えながら熱く語り、会場から爆笑が起きる。また岩井の代表作「て」は、そんな上田の作劇法から影響を受けた部分があると明かし、上田と岩井の劇作家同士のつながりが浮き彫りになった。

会の最後には、「来てけつかるべき新世界」の登場人物たちが舞台に登場し、この日のためのオリジナルストーリーを披露。自動操縦車の“受け入れ派”と“反対派”が、おもちゃのサーキットを舞台に、大阪の道路事情を語りながら「ああでもないこうでもない」とやり合う、ヨーロッパ企画らしい賑やかな1シーンを繰り広げ、会場を大きな笑いで包み込んだ。

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第61回 岸田國士戯曲賞 最終候補作品

市原佐都子「毛美子不毛話」(上演台本)
上田誠「来てけつかるべき新世界」(上演台本)
長田育恵「SOETSU -韓くにの白き太陽-」(上演台本)
オノマリコ「THE GAME OF POLYAMORY LIFE」(上演台本)
瀬戸山美咲「埒もなく汚れなく」(上演台本)
林慎一郎「PORTAL」(上演台本)
平塚直隆「ここはカナダじゃない」(上演台本)
山縣太一「ドッグマンノーライフ」(上演台本)

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gichiohtsuka @otg_jp

上田さんおめでとうございます。

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