戦争中のとある国を舞台とした本作は、ミルク運びの男コスタと、村一番の英雄の花嫁になるため現れた美女の逃避行を描いた物語。クストリッツァ自らコスタ役を務め、モニカ・ベルッチが美しき花嫁を演じた。
本日2度目の鑑賞だったという渡辺は、クストリッツァのフィルモグラフィの中でも「めちゃくちゃシンプルになった」と本作を評し、「子供が見る夢みたいな、そういう奔放さがある作品でした」と感想を口にする。そしてクストリッツァがインタビューで「自分の映画には二度と出演しない。とても大変だった」と語っていたことに触れ、「そんなこと言いながら、この映画は自分が出るべきだとわかりながら(脚本を)書いたと思います」と予想。「映画って説得力が重要で、ストーリーを説明するにもいろんな伝え方がある。この映画はクストリッツァが出ているということがすべて。『俺が出る』ということで、(観客に)『わかれ』と。『顔の皺1つひとつで感じろ』と言われているようでした」と本作に対する持論を展開した。
渡辺のクストリッツァ作品との出会いは、高校3年で大学受験のために上京した際、シンガーソングライターの堂島孝平から「アンダーグラウンド」のDVDを借りたことがきっかけだったという。そこから遡って「黒猫・白猫」を観たときには、「こんな映画があったらいいのに!と思っていた映画に出会えた」と感動が湧き上がったと振り返る。またクストリッツァ同様、自身もミュージシャン、俳優、映画監督とさまざまな面を持つ渡辺は、クストリッツァのクリエイティビティについて「人間って弱さと強さだったり、愛することと憎むことだったり、常に矛盾が伴っている。クストリッツァはそのどちらもフラットに描ける監督」と尊敬の念を吐露。「死と誕生も同じで、死の悲しみはあるけど、喜びもあるかもしれない。あらゆる感情をフラットに描ける感覚は自分も大事にしたい」と語った。
さらに渡辺は、映画監督としてのクストリッツァの魅力について「人を撮っているところ」と指摘する。「人を撮れば、おのずと街を撮ることになり、さらに国を撮ることにつながる。クストリッツァの作品にはそれを教えてくれてる感覚がある。“映画”を撮ろうとしてしまう監督もいるけれど、クストリッツァの場合、まず人がいる。そして人が生き生きと輝いてる瞬間を残そうとすると、必然的にストーリーが必要になってくる。そういう順番になっているのでは」と分析。「現実とファンタジーの狭間を撮ろうとしている監督ですよね。現実を撮ろうとするとファンタジーに見えたり、ファンタジーを撮ってるのに妙に生々しく感じたり……映画ってそういう力があるんだよと改めて教えてもらえる作品でした」と再び本作を絶賛した。
「オン・ザ・ミルキー・ロード」は9月15日より東京・TOHOシネマズ シャンテほかでロードショー。
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