ミュージカル「Once」開幕、演出の稲葉賀恵が京本大我への信頼語る「どこまでも飛べる」

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京本大我が主演するミュージカル「Once」が、本日9月9日に東京・日生劇場で開幕する。これに先駆けて昨日8日に、ゲネプロと囲み取材が行われた。なお記事には舞台写真や演出についての言及が含まれるため、ネタバレを避けたい読者は注意してほしい。

ミュージカル「Once」ゲネプロより、左から京本大我演じるガイ、sara演じるガール。

ミュージカル「Once」ゲネプロより、左から京本大我演じるガイ、sara演じるガール。

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本作は、2007年公開のアイルランド映画「once ダブリンの街角で」の舞台化作品。2011年にアメリカのニューヨーク・シアターワークショップで初演され、2012年にブロードウェイへ進出、トニー賞で8部門を受賞した。劇中ではアイルランド・ダブリンを舞台に、ストリートミュージシャンの“ガイ”(京本)とチェコ移民の“ガール”(sara)が、音楽を通して心を通わせる様が描かれる。日本カンパニーで初上演となる今回は、演出を稲葉賀恵が担う。

ミュージカル「Once」ゲネプロより、左からsara演じるガール、京本大我演じるガイ。

ミュージカル「Once」ゲネプロより、左からsara演じるガール、京本大我演じるガイ。[拡大]

ステージ中ほどには、半円型に切り抜かれたパネルが下げられており、その下はガイの部屋となっている。やがて部屋のベッドにガイが座り、ギターを奏で始める。ギターの弦が“ピーン”とはじかれると、その音に合わせて、ガイの頭上のアーチ形のパネルの縁を、流れ星のような光がきらりと走っていく。ガイの歌が進むにつれ、ステージ上にはアンサンブルたちが音もなく登場。彼らが家具を取り去っていくと、やがて舞台は街角に様相を変え、ガイと、彼の歌に足を止めたガールの出会いが描かれた。

舞台には、先に電球が付いたさまざまな長さの銀色のパイプが、そこここに密集して立てられているほか、同様のパイプと電球は天井からも下げられている。ガイがパブで歌うシーンでは、初めはガイにヤジを飛ばしていた聴衆が、次第にガイの歌に魅了され、身体を揺らし、足を踏み鳴らしてガイの音楽の世界に入り込んでいく。するとパイプの先の電球が星空のように輝き、宇宙をバックに歌っているかのような幻想的な光景を作り出す。また聴衆が足をドンと踏み鳴らす音に合わせ、照明が強く輝く中、ガールが少しずつガイに歩み寄っていくことで、彼女が彼に心惹かれていく様子が美しく描き出された。

ミュージカル「Once」ゲネプロより、sara演じるガール。

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また音楽が重要な役割を果たす本作では、にぎやかなアイリッシュ音楽や、ガールの母バルシュカ(斉藤由貴)らチェコ移民の人々がパフォーマンスするナンバーなど、多彩な楽曲群を楽しむことができる。ガイとガールが「Falling Slowly」を一緒に歌う場面では、ガールが椅子に座って空中で指を動かし、それに合わせてミュージシャンがピアノを鳴らすことで演奏シーンが表現された。

ミュージカル「Once」ゲネプロより、京本大我演じるガイ。

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京本はギターをかき鳴らし、普段ミュージカルで聞かせる伸びやかな歌声とは少し異なる、ミュージシャンとしての“叫び”を劇場に響かせ、観客を惹き付ける。失恋により音楽の道を諦めていたガイは、ガールとの出会いで自信を取り戻していく。京本は、そんなガイの変化を豊かな表情で生き生きと演じた。saraはきびきびとした身のこなしと話し方で、自ら「私は“正直の権化”」と名乗るガールの率直さを体現しつつ、持ち前のパワフルな歌声に切なさをにじませ、明るい彼女が背負っている影を具現化した。

左から稲葉賀恵、斉藤由貴、京本大我、sara、鶴見辰吾。

左から稲葉賀恵、斉藤由貴、京本大我、sara、鶴見辰吾。[拡大]

ゲネプロ前に行われた囲み取材には、京本、sara、鶴見辰吾、斉藤、そして演出の稲葉が出席。ギターの稽古も含め、半年近く本作に取り組んできたという京本は「寝泊まりはしていないけど、合宿のように濃密な時間だった。作品が形になっていくにつれて稲葉さんのビジョンがわかってきて、作品の魅力や解釈への自信もついてきた。多面的で、細部までこだわった演出をしてくださっているので、見どころが多すぎて選べない」と出来栄えに自信をのぞかせる。

ミュージカル「Once」ゲネプロより、左から小柳友演じるビリー、京本大我演じるガイ。

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京本は劇中で9曲を演奏。ギターの練習に苦労したという京本は「『プロのアーティストさんに頼むべきでは』と思うくらい難しい曲ばかり。心が折れかけたときもありますが、皆さんとの練習の時間を早くから作ってもらい、おかげで今日まで来られた」と言う。また人前での演奏に慣れるため、自身が所属するSixTONESの番組収録の合間に、ほかのメンバーが休んでいる楽屋でギターを弾いていたと京本。上演に向けては「難しそうな演奏をしてるなと思われたら負け(笑)。物語を届けることを大切にしたい」とコメントした。

稲葉賀恵

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稲葉はそんな京本に対し、「京本さんはアーティストとして面白い方。『この人ならどこまでも飛べる』という信頼感を、不思議と最初から感じていました。ずっと自分自身と闘っていて、世界に対して挑発的だし、もがいてもいる。そういう人じゃないともの作りはできないと思うし、そんな京本さんと一緒に作品作りに取り組むのはワクワクします」と厚い信頼を寄せた。

ミュージカル「Once」ゲネプロより、sara演じるガール。

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saraは「稽古が始まってから無我夢中で、今日まであっという間でした。台本の言葉や劇中の出来事がとても鮮やかで、さまざまな人たちの人生が凝縮された作品です。お客様をお迎えしてどうなるのか未知数」と期待を口にする。またsaraが「稽古場でいただく差し入れに勇気づけられました」と笑顔で話すと、京本も「毎日がパーティーだったよね(笑)」とうなずいた。

ミュージカル「Once」ゲネプロより、鶴見辰吾演じるダ。

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鶴見は「人の稽古を観ているのが楽しい稽古場でした。演劇の演出は感覚的になりがちですが、稲葉さんは伝え方が面白い。たとえば『ゆっくり動いてほしい。軽自動車ではなくフェラーリで走るように』みたいに(笑)。稲葉さんについていくという気持ちで取り組んでいました」と稽古場の様子を語る。

ミュージカル「Once」ゲネプロより、斉藤由貴演じるバルシュカ。

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斉藤は「約2カ月もの稽古期間が設けられているのは、今の時代ぜいたくなこと。『高みを目指そう』という制作側の本気を感じる」と言い、「口幅ったいようですが、素晴らしい作品だと断言します。観劇後、言葉にならない何かに圧倒される舞台になったのでは」と思いを込めた。

ミュージカル「Once」ゲネプロより、京本大我演じるガイ。

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上演時間は休憩を含む2時間40分を予定。東京公演は9月28日まで。本作はその後、10月4・5日に愛知・御園座、11日から14日まで大阪・梅田芸術劇場 メインホール、20日から26日まで福岡・博多座でも上演される。なおシュヴェッツ役で出演予定だったこがけんは、ケガのため当面の間休演。こがけんの休演中は、MC役の新井海人がシュヴェッツ役を兼任する。

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ミュージカル「Once」

2025年9月9日(火)〜28日(日)
東京都 日生劇場

2025年10月4日(土)・5日(日)
愛知県 御園座

2025年10月11日(土)〜14日(火)
大阪府 梅田芸術劇場 メインホール

2025年10月20日(月)〜26日(日)
福岡県 博多座

スタッフ

脚本:エンダ・ウォルシュ
音楽・歌詞:グレン・ハンサード / マルケタ・イルグロヴァ
原作:ジョン・カーニー(映画「ONCE ダブリンの街角で」脚本・監督)
翻訳・訳詞:一川華
演出:稲葉賀恵

出演

ガイ:京本大我
ガール:sara
ビリー:小柳友
エイモン:上口耕平
アンドレ:竪山隼太 / 榎木淳弥
シュヴェッツ:こがけん
バンク・マネージャー:佐藤貴史
レザ:土井ケイト
元カノ:青山美郷
MC:新井海人
ダ:鶴見辰吾
バルシュカ:斉藤由貴
イヴォンカ:浅利香那芽 / 遠藤桜子 / 清水七喜咲

※シュヴェッツ役のこがけんはケガのため当面の間休演し、新井海人が同役を務めます。

公演・舞台情報

読者の反応

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Akiko Murata @murata_akiko

舞台写真から察するところ、ステージ後方にバンドが。アンサンブルは歌うが演奏はしないのかな。必要に応じてミュージシャンもバンドスペースから出てきて、キャストの分身のようにクロスオーバーしながら演奏する感じ? https://t.co/NxhwOcOdDT

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