フジファブリック「最高のバンド人生」を経て新たな未来へ、活動休止前ラストライブで23曲熱演

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フジファブリックが活動休止前最後のワンマンライブ「フジファブリック LIVE at NHKホール」を2月6日に東京・NHKホールで開催した。

フジファブリック(撮影:森好弘)

フジファブリック(撮影:森好弘)

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現体制の楽曲23曲で表現した最後の思い

2000年に志村正彦を中心に結成され、2004年にシングル「桜の季節」にてメジャーデビューしたフジファブリック。2009年12月に志村が急逝したあとは山内総一郎(Vo, G)、加藤慎一(B)、金澤ダイスケ(Key)にサポートメンバーを加えた形で活動してきた。しかしメジャーデビュー20周年を迎えた2024年7月、金澤からの脱退の申し入れを機にメンバーおよびスタッフ間で話し合った結果として、2025年2月での活動休止を決定したことを発表。ファンの間には大きな衝撃が走った。

昨年8月に行われた活動休止発表後初のワンマンライブの中で、金澤は「ここで自分の中で区切りを付けようと思いました。思いを受け入れてくれた山内くんと加藤くんに感謝しています」と自身の思いを述べている。このライブでは生前の志村の音源や映像も用いた演出でバンドのキャリアを総括。さらに昨年11月には山内の地元・大阪の大阪城ホールにて、ゆかりの深いASIAN KUNG-FU GENERATIONとくるりを招いての対バンライブも開催した。

今回の公演でフジファブリックは現体制でリリースしてきた2010年以降の楽曲を全23曲披露。これまで3人で続けてきた活動に一度終止符を打ち新たな未来に進んでいこうとする思いを、そのパフォーマンスを通じて会場に集まったファンや生配信を見守ったファンに届けた。

1曲目は「Portrait」、悲しい思いはそれなりでいい

山内総一郎(Vo, G)(撮影:森好弘)

山内総一郎(Vo, G)(撮影:森好弘)[拡大]

背面に赤、床面に青があしらわれたステージに山内、加藤、金澤とサポートメンバーの伊藤大地(Dr)、朝倉真司(Per)が現れると、すさまじい音量の拍手がホール内に響き渡る。そんな中、山内がゆっくりと歌い始めたオープニングナンバーは昨年2月にリリースされた最新アルバム「PORTRAIT」のタイトル曲「Portrait」。「悲しい思いはそれなりでいい 笑いあう声を聞く方が良い」という、この特別な夜の幕開けにふさわしい歌詞にオーディエンスはじっくりと耳を澄ます。しかし続く2曲目「LIFE」で場内の空気はアッパーなものに変化。山内は「どうもこんばんは、フジファブリックです!」と笑顔で叫び、軽やかなサウンドを届けた。

フジファブリック(撮影:森好弘)

フジファブリック(撮影:森好弘)[拡大]

ライブではひさびさの演奏となった「流線形」で会場の一体感を高めたあとは「赤い果実」「robologue」といった深みのあるメロウなナンバーを連投。「robologue」では金澤がエモーショナルなソロを聴かせ、山内が観客を煽って拍手を促すひと幕も。山内は客席を見渡しながら「今日はたくさん拍手くださいね」と呼びかけ、「会場の皆さんも配信の皆さんも僕らも、この一瞬一瞬を刻みながらライブをやっていきたいと思いますので、最後までよろしくお願いします」と3人を代表して意気込みを述べた。

ここからは複雑怪奇な展開で観客を翻弄した「KARAKURI」、加藤と金澤の壮大なコーラスが印象的な「Water Lily Flower」と、フジファブリックのコアな音楽性が楽しめるナンバーが続く。透明感のある青いライトに照らされて始まった「ブルー」の演奏は後半に行くにつれて熱量を増し、アウトロでは真紅の照明に染められた5人がパワフルなインプロビゼーションへなだれ込む。5人のプレイに圧倒されていた客席は、続いて「Light Flight」が始まると緊張を解き、センチメンタルな歌詞とメロディに耳を傾けた。

いつも通りのトークで和やかな空気に

加藤慎一(B)(撮影:森好弘)

加藤慎一(B)(撮影:森好弘)[拡大]

MCで山内は「『いっぱい連続でやるなあ』って思ってるよね?(笑)いっぱいやりたいの、曲」とこの日のステージを心から楽しんでいる様子を見せ、「NHKホールの椅子の感触を確かめてみたらどうですか?」と観客に着席を促す。そんな言葉に金澤は「よく『確かめてみたら』って言うけど、始まる前に確かめてると思うから……」とツッコんで場内の笑いを誘った。一方、山内に急遽促されて恒例の1人しゃべり“加トーク”を始めた加藤は、ピンスポットを浴びつつ自らの衣装が蛇の一種・パイソン柄であることに触れ「巳年だからだって思うでしょ? 元気がないやつを丸呑みにしてやろうと思ってね(笑)。だがしかしそんな必要はない! みんな一緒に楽しみましょう」と朗らかに呼びかけ、山内を「急に振ったわりにはキレイにおまとめになって……(笑)」と感嘆させた。

金澤ダイスケ(Key)(撮影:森好弘)

金澤ダイスケ(Key)(撮影:森好弘)[拡大]

その後は着席したままの観客を前にアコースティックスタイルでのパフォーマンスを展開。「夜の中へ」は柔らかなアコースティックアレンジで届けられ、心地よいリズムや美しいメロディラインをさらに際立たせた。山内は「さっきから思ってたけど、いい曲いっぱい作ってきたよなあやっぱり。いろんな人に支えられて音楽を生み出すことができたことをうれしく思います」と感慨深げに語り、この日のサポートを務めた伊藤や朝倉を紹介。さらにメンバー紹介に移ると、金澤は過去にも複数回ライブを行ってきたNHKホールを見渡し「あのときはあれを弾いたんですよ」とホールのシンボルでもある巨大なパイプオルガンに目をやる。「初めて弾いたときは盛り上がったけど、回を増すごとに『あー、弾くんでしょ』ってなって……(笑)」と観客の反応が変わってきたことを金澤が回顧すると、山内も「荘厳な音が出るのに、ダイちゃんが弾くと笑いが起こるんだよね(笑)」と和やかにそのときの様子を振り返った。

「これからもフジファブリックを聴き続けてください」

「この20年やってきて、バンドを通して『愛って素晴らしいんだな』と知ることができました。メンバー同士とも、皆さんとも一緒に育ってきた、育ててもらったバンドがフジファブリックです。そんなバンドをやってこれたことを誇りに思います」という山内の言葉に続いては「ショウ・タイム」の壮大な世界が幕を開け、ライブの後半戦のスタートを印象付ける。イントロで大歓声が起きた「シャリー」や、おなじみの振付をメンバーやオーディエンスが楽しげに踊った「ミラクルレボリューションNo.9」で盛り上がったあと、ひと呼吸置いて始まったのは「Green Bird」。別れを歌った歌詞が壮大なサウンドスケープとともに響き渡ると、観客は現実に引き戻されたように感極まった表情でステージに見入った。

「フジファブリック LIVE at NHKホール」の様子。(撮影:森好弘)

「フジファブリック LIVE at NHKホール」の様子。(撮影:森好弘)[拡大]

そんな感傷的なムードも「Feverman」の祭り囃子が打ち消し、曲のラストでは華々しく金テープが舞う。「徒然モノクローム」では加藤がステージ下手へ進み出て、山内や金澤と顔を見合わせながら楽しそうにプレイした。最後に山内は微笑みを浮かべつつ「今日からフジファブリックはまた新たなスタートを切ることになります」と語る。かすかにすすり泣きも聞こえる客席に向け、山内は「どんな未来がこの先に待っているかは僕らもわからないけれど、これからもフジファブリックを聴き続けてください」と呼びかけ、本編最後のナンバー「STAR」を力強く披露した。

「破顔」が彩った新たなスタート

メンバーがステージを去るや否や始まったアンコールの手拍子に応え、加藤と金澤は何やら話しながら再登場。2人の間に入っていった山内は「めっちゃ話し合ってるから何かと思ったら『パイソンとバイソン、どっちがどっち?』って……(笑)」とその他愛もない会話の中身を明かし、ファンを笑わせた。「もっと俺たちにトキメキをちょうだい!」と山内が叫んで始まったアンコール1曲目は「SUPER!!」。疾走感に満ちたサウンドを、観客たちも腕を上げて全身で楽しんでいた。

山内総一郎(Vo, G)(撮影:森好弘)

山内総一郎(Vo, G)(撮影:森好弘)[拡大]

いよいよ最後の曲に入る前、山内は「フジファブリックはたくさんの人に支えられてここまで来れました」と、これまで彼らを支えてきたスタッフやサポートミュージシャンに厚く感謝を述べる。そして「何よりライブに足を運んでくれた皆さん、配信をご覧になっている皆さん。僕らが笑いながら真剣にライブができるのは皆さんのおかげです」とこのライブを見届けたファンにも思いを語り「みんなと出会えて最高のバンド人生でした。また次に会うときは笑顔で再会しましょう」と客席を見渡した。活動休止前ラストライブ、フジファブリックが最後のナンバーに選んだのは2019年リリースのアルバム「F」の収録曲「破顔」。5人が重ねる力強い音色と「何もいらない さあ行こう」と高らかに歌い上げる山内のボーカルが、バンドの新たなスタートを鮮やかに彩った。

3人が伝え合ったそれぞれへの感謝

全23曲の演奏を終え、改めてメンバーを紹介した山内は最後に天を仰ぎ「ボーカルギター、志村正彦!」と叫んで客席の大きな拍手を呼び起こす。伊藤と朝倉をステージから送り出したあと、山内はマイクを握り「まだ帰りたくないというのもあるんですけど、音楽にできないくらいの感謝の気持ちを伝えたくて。本当にありがとうございました」と観客に挨拶した。そして「まだ感謝を伝えてない人がいるんですけど……ダイちゃん、加藤さん。一緒にバンドやってくれてありがとうございました」と2人に向かって語りかけた。

加藤は「こちらこそよ?」と照れくさそうに短く応え、このライブを最後にバンドを離れることとなる金澤も「20年間ありがとうございました。加藤くんと総くん、志村に一番感謝を伝えたいと思います」とその思いをまっすぐに伝えた。山内が「次会うときまで皆さん元気でいてください!」と呼びかけたのち、3人はしっかりと肩を組み、大きな拍手と感謝の声を浴びながら笑顔のままでステージをあとにした。

今回のライブの模様はStreaming+にて2月13日23:59まで見逃し配信を実施中。視聴チケットは同日21:00まで販売されている。

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セットリスト

「フジファブリック LIVE at NHKホール」2025年2月6日 NHKホール

01. Portrait
02. LIFE
03. 流線形
04. 赤い果実
05. robologue
06. 楽園
07. KARAKURI
08. Water Lily Flower
09. ブルー
10. Light Flight
11. 月見草
12. 夜の中へ
13. 音の庭
14. ショウ・タイム
15. シャリー
16. ミラクルレボリューションNo.9
17. Green Bird
18. Feverman
19. 電光石火
20. 徒然モノクローム
21. STAR
<アンコール>
22. SUPER!!
23. 破顏

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にっしー @a_nishio_a

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