ドレスコーズ野音公演、三浦康嗣迎え新機軸

ドレスコーズが昨日8月17日、東京・日比谷野外大音楽堂にてワンマンライブ「ゴッドスピード・サマー・ヒッピーズ」を行った。

太陽が照りつけセミが騒々しく鳴くシチュエーションの中、メンバーが軽い足取りでステージに姿を見せる。志磨遼平（Vo）は片手を上げると手元のシンセサイザーを操り、9月24日にリリースされる新作「Hippies E.P.」より「ドゥー・ダー・ダムン・ディスコ」を挨拶代わりに放った。志磨は身体全体で踊ったり鍵盤を荒々しく叩いたりとせわしない動きを見せる。菅大智（Dr）の猛々しいドラムプレイからシームレスに奏でられた「誰も知らない」では丸山康太（G）のギターが耳をつんざくほど響きわたり、夏の野外の陽気を切り裂いた。さらにドレスコーズの楽曲の中でもひときわ攻撃的な「Automatic Punk」と続き、バンド初の日比谷野音ワンマンはカオティックなムードで幕を開けた。

「今日はもうどうなってもいいという気持ちです。全部夏のせいにして思いっきり楽しもうね」と口を開いた志磨は「じゃあ僕らの夏を始めるよ！ いいかいロリータ！」と「Lolita」へつなげる。開放感のあるサビではオーディエンスがいっせいに拳を上げ、場内に一体感が生み出された。その後も物憂げな歌声と哀愁漂うメロディが切ない「Zombie」、山中治雄（B）と菅がコーラスパートを張り上げた「We are」、高速ロックチューン「ベルエポックマン」と起伏あるセットリストが繰り広げられた。

「夏の夕暮れにピッタリの歌」と紹介された「フォークソングライン（ピーターパンと敗残兵）」に続いて、志磨が仁王立ちでマイクを高く掲げたことを合図に「トートロジー」が鳴らされる。ケーブルを持ってマイクを振り回したり縄跳びしてみせたりと闇雲なアクションをする彼は、エモーショナルに叫んで曲のメッセージを伝えたあとハンドクラップと足踏みを観客に要求し、そのリズムに乗せてポエトリーリーディングから始まる「ゴッホ」をパフォーマンスした。歌い終えると菅のビートをバックに「最近わかったことがあるんだけど」と話を切り出し、「今思うと僕は間違ってなかった。僕が間違うはずない」と声を荒げ「僕は絶対正しい！」と連呼。すると丸山が自身のギターを床に投げ捨て、スピーカーから鈍い音が漏れる。彼はギターを拾って志磨に押し付けると、志磨のマイクで高ぶる感情を抑えきれないように咆哮した。そして丸山が新たなギターを手にし「バンド・デシネ」を奏でたところで志磨から「最後の曲です」と告げられる。4人の演奏にもいっそう熱がこもり、それに呼応して客席の盛り上がりも激しさを増した。

アンコールではスペシャルゲストとして新作「Hippies E.P.」にアレンジャーとして参加している三浦康嗣（□□□）が呼び込まれる。三浦は缶ビール片手に「お邪魔しまーす」とフランクに登場。志磨とたわいない会話をしていたかと思いきや、突如ゲストボーカルとして参加している新曲「メロディ」のリリックをラップしはじめた。彼は菅、山中、丸山にビールを飲ませて回りつつ、志磨と自身のラップを重ねて浮遊感に満ちた同曲を彩っていく。バンドはドレスコーズの新機軸となるナンバーで「Hippies E.P.」への観客の期待を高めた。キーボードの前に着席した三浦から促されて志磨以外のメンバーがコメントするときには、菅は「こんばんはー！ 盛り上がってますか！」とハイトーンボイスで叫んだあと「……よろしくお願いします」と低音で挨拶して客席の笑いを誘う。新曲「Ghost」ののち山中が「ありがとうございます。すごい仲良しなんですよ、僕たち」と伝える一幕もあった。「Hippies E.P.」の1曲目を飾る「ヒッピーズ」の演奏時には、中盤でステージ後方からミラーボールが出現しゆっくりと上昇。彼らはミラーボールが放つきらびやかな光に照らされながら、ゆるやかなダンスナンバーでファンを踊らせた。

さらに4人はダブルアンコールに応え、バラード「1954」で日の暮れ始めた野音を包み込む。最後には志磨の「さあ、夏にトドメだ！」という言葉から「Trash」でライブを締めくくった。ステージでは丸山と志磨が抱き合ったことを契機にメンバー全員が肩を組む。彼らの熱演を讃えるように、会場には大きな拍手と歓声が沸き起こった。