映画「
金原ひとみの小説をもとにした本作は、擬人化焼肉マンガ「ミート・イズ・マイン」をこよなく愛する27歳の由嘉里を主人公とする物語。由嘉里は新宿・歌舞伎町の道端で酔い潰れていたところをキャバ嬢・ライに助けられ、新たな世界に導かれていく。杉咲が由嘉里、南がライ、板垣が不特定多数から愛されたい既婚者のホスト・アサヒを演じ、人が死ぬ話ばかりを書いている毒舌な作家・ユキに蒼井が扮した。
公開後、「腐女子である由嘉里の解像度が高い」という意見が多数寄せられているという本作。杉咲は「クランクインする前に演出部の方がBL好きな方にリサーチしてくださって。私も実際にお会いして、監督と相談しながら由嘉里を探していきました」と振り返る。南も「キャバ嬢という仕事は経験したことがないので、事前にお店に伺って、お話を聞きました」と思い返し、「ライという役はつかみどころがないというか、がっしりつかめてしまうのは違うキャラクター。オーディションのときのままでいてほしいと監督に言われていたので、ありのままでいようと思っていました」と述べる。板垣もアサヒを演じるにあたりホストクラブにリサーチに行ったそうで「お店でキラキラした名刺をいただいて。映画で使用するアサヒの分も作ってもらったんです。現場でも人気で、スタッフに渡して歩いて。『きゃー!』って言ってもらいました」と笑みをこぼした。
蒼井が松居とタッグを組むのは、2016年公開の「アズミ・ハルコは行方不明」以来のこと。蒼井は「当時30歳だったと思うんですが、プロデューサーも同い年で、私にとって最後の青春という感じでした。商業映画ではあったんですけど、学生映画を作っているようなマインドで。熱量と愛でどうにかするぞー!みたいなところがありました。約10年ぶりにそういうところに戻ってきた感じもするけれど、少しお互い大人になっていて。映画への愛情を失わずに再会できてうれしいです」と喜ぶ。
松居は「うれしいですね。スタッフも役者も肩書き関係なく、全員野球みたいに作ったので、思い出に残っています」と語り、「今回は出ていただけるかな?って思っていたんですが、直接連絡するのも違うと思って。祈りながら待っていました」と回想。蒼井は「自分の中に、安曇春子が出会う人たちが、こういう(『ミーツ・ザ・ワールド』に出てくるような)人だったら、ユキになっているだろうなという勝手なストーリーがあって。ユキを演じたいなって思いましたし、大好きな花ちゃんが主演なので、出演したいと思いました」と明かす。これに松居が「初めて聞きました」と言うと、蒼井はすかさず「言ったよ!(笑)」と抗議した。
食事シーンにこだわっているという話に及ぶと、杉咲は「モリモリ食べてほしいって言われていたので、そのことしか考えていなかったです。ラーメン屋さんのシーンは本当にラーメンがおいしくて! カットがかかったあともずっと食べていました」と笑う。蒼井も「深夜のラーメンは最高でした! 家だと、1人で食べちゃう罪悪感を抱えていたんですけど、痛み分けみたいな感じで」「食べるシーンの花ちゃんが素晴らしくて! こんな泣ける食べ方あるかって思うぐらい。その場面を楽しみにしてください」とアピールした。
最後に松居は「人と自分を比べて落ち込んだり、気を使いすぎて疲れたり、そういう時代に少しでも息がしやすくなればと祈りを込めて作りました。新宿の景色も登場人物も生き生きとしている。楽しんでください」と、蒼井は「由嘉里が真ん中に持っているものはこの社会で生きていくうえで必要なものだと感じました。いろんな人と出会っていくことを、皆さんと楽しんでいけたら」とコメント。板垣は「心の片隅に寄り添ってくれるような作品になっているのではないかと思います。寒くなってきたので、心が温かくなれば」と述べ、南は「観てくれた方が明日もがんばろうって思ったり、好きなものを好きって言えたり、そんな優しい力を与えられる作品になっていたらうれしいです」と語りかける。そして杉咲は「個人的な感情を役に持ち込むほうじゃないんですが、自分を好きになれなかったり、他人と比較する由嘉里がなんだか他人事に思えなくて、撮影期間中は苦しみの中にいました。でも完成した映画を観て、人に見られて恥ずかしいと思う部分を、人は案外、面白がってくれるかもしれないと思って救われました。観てくださる方の心の琴線にこの映画が触れてくれたらうれしいです」と願いを込め、イベントの幕を引いた。
「ミーツ・ザ・ワールド」は、全国で上映中。

ノーシン @nothin0707
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