「ルックバック」が新潟アニメ映画祭グランプリに、押山清高「記念碑のような作品」

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第3回新潟国際アニメーション映画祭の授賞式が本日3月20日に新潟・NEXT21の新潟市民プラザで開催。押山清高が監督を務めた「ルックバック」が長編コンペティション部門のグランプリに輝いた。

押山清高

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第3回新潟国際アニメーション映画祭 メインビジュアル

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新潟国際アニメーション映画祭は、アジア最大級かつ世界初の長編アニメーション中心の映画祭。今回の長編コンペティション部門には28の国と地域から69作品の応募があり、その中から12本がノミネートされていた。「ルックバック」の受賞理由について、審査員長のマニュエル・クリソボルは「完璧なテンポと美しくレンダリングされたキャラクターたち。テーマの中にも、作り手にも新たな発見がある映画。この作品の技術、ストーリーテリング、そして成熟度を高く評価したい」と説明した。

「ルックバック」場面カット ©藤本タツキ/集英社 ©2024「ルックバック」製作委員会

「ルックバック」場面カット ©藤本タツキ/集英社 ©2024「ルックバック」製作委員会[拡大]

グランプリのトロフィーを手にした押山は「日本のアニメ業界では、多くのクリエイター集団が日々切磋琢磨して作り上げてきた技術を共有し合いながら作品を生み出しています。ですが、これからの時代『ルックバック』のように隅々まで手作業で作り上げる手法は、ますます難しくなっていくかもしれない。そんな思いもあり、この作品は今の時点での記念碑のような気持ちで作っていました」とスピーチする。続けて「ただ、人の手によって生み出すプロセスの価値はなくならないし、今後もっと高まっていくと思いますので、僕もなるべく長い間作り続けられるといいなと思っています」と口にした。

アダム・エリオット

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「かたつむりのメモワール」場面カット © Arenamedia Pty Ltd.

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美しいアニメーションで“大人への成長譚”というジャンルを新たな高みへと昇華させた作品に贈られる傾奇賞には、アダム・エリオットが手がけたストップモーション映画「かたつむりのメモワール」が選ばれた。エリオットは受賞に際して「審査員の皆様、ノミネートされている監督の皆様にお礼を申し上げます。新潟に来て数日しか経っていませんが、たくさんの友情を築けたと思っています」と感謝を述べる。そして、会場にいるクリエイターたちに「今、アニメーション業界はいろんな脅威にさらされています。AIの出現もありますが、一番いいストーリーは人間にしか作れないと思っています。私たち全員が団結すれば、アニメーション業界は強くなれると思っているので、喜びや心の安堵を与えられる作品を一緒に作っていきたいです」と呼びかけた。

第3回新潟国際アニメーション映画祭の授賞式の様子。前列左からエリック・パワー、押山清高、アダム・エリオット、ジョヴァンニ・コロンブ。後列左からアリシア・パワー、井上伸一郎、マニュエル・クリソボル、クリスティン・パヌシュカ、松本紀子、真木太郎

第3回新潟国際アニメーション映画祭の授賞式の様子。前列左からエリック・パワー、押山清高、アダム・エリオット、ジョヴァンニ・コロンブ。後列左からアリシア・パワー、井上伸一郎、マニュエル・クリソボル、クリスティン・パヌシュカ、松本紀子、真木太郎[拡大]

「バレンティス」場面カット

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「ペーパーカット:インディー作家の僕の人生」場面カット

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複雑なビジュアルと技術によって世界観を作り上げた作品が対象となる境界賞は、第2次世界大戦の直前にイタリア・サルデーニャで起きた実話をもとにしたジョヴァンニ・コロンブの監督作「バレンティス」が獲得。コロンブは「こんなに素晴らしい映画祭に来ることができ、素晴らしい街で貴重な体験ができてうれしくてしょうがない気持ちです! 本当にありがとうございます」とコメントする。奨励賞は、切り絵を用いたストップモーション「ペーパーカット:インディー作家の僕の人生」が受賞し、監督のエリック・パワーは「これは1人のアニメーターとしての苦戦などを描いたもので、私の作品が若い方々へのインスピレーションになっていたらいいなと思います。この道はつらいこともありますが、たまに今日のように勝利を勝ち取ることもできます」と笑顔で喜びを伝えた。

左から大川絵理(大川博の玄孫)、林ゆうき、押山清高、梅澤道彦、木村絵理子

左から大川絵理(大川博の玄孫)、林ゆうき、押山清高、梅澤道彦、木村絵理子[拡大]

すでに受賞が発表されていた大川博賞・蕗谷虹児賞の授与も行われた。アニメ分野における技術スタッフの功績をたたえる大川博賞を獲得したシンエイ動画の梅澤道彦は「大川博さんは日本教育テレビ(現:テレビ朝日)の初代会長ということで、もともとテレビ朝日にいた人間としてとても縁を感じています。シンエイ動画は創立してから49年間で120作品を作ってきました。この賞を励みに、これからも世界中の方に素敵なアニメを届けられたらと思っています」としみじみ語る。蕗谷虹児賞には「ルックバック」の作画を担当した押山と井上俊之、音響監督の木村絵理子、「僕のヒーローアカデミア」などで音楽を担当した林ゆうきが選ばれている。

マニュエル・クリソボル

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総評として、クリソボルは「実は、今回の4つの受賞作品を決定することは、意外にも難しくありませんでした。審査が始まった瞬間から、この4作品が際立っていたことは明らかだったからです」と語る。そして「インディペンデントアニメーションは、魅力的で、セクシーで、知的で、そして無限の可能性を秘めています。どうか、これからも作品を作り続けてください」と伝えて映画祭を締めくくった。すべての受賞結果は下記の通り。

第3回新潟国際アニメーション映画祭 受賞結果

長編コンペティション部門

グランプリ

「ルックバック」(監督:押山清高)

傾奇賞

「かたつむりのメモワール」(監督:アダム・エリオット)

境界賞

「バレンティス」(監督:ジョヴァンニ・コロンブ)

奨励賞

「ペーパーカット:インディー作家の僕の人生」(監督:エリック・パワー)

大川博賞

シンエイ動画

蕗谷虹児賞

押山清高、井上俊之(作画)
木村絵理子(音響監督)
林ゆうき(音楽)

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玉置泰紀 エリアLOVE Walker総編集長 @tamatama2

【授賞式レポート✍️】「ルックバック」が新潟アニメ映画祭グランプリに、押山清高「記念碑のような作品」(写真12枚) https://t.co/hMzDwS366V

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