インド映画「アハーン」を日本で配給する生活の医療社が、2024年の劇場公開を目指したクラウドファンディングを8月12日まで実施している。
本作はダウン症の青年アハーンと、強迫神経症を持つ中年オジーが出会うハートフルコメディ。両親とともにムンバイで暮らすアハーンは母の焼き菓子を配達して日々を送っているが、自分の仕事や暮らしがしたいと思っていた。一方、オジーは自分のルールを譲らないために妻のアヌとギクシャクしている。ある日、お得意先のアヌのもとに焼き菓子を届けに来たアハーンをオジーが追い払ってしまった。とうとうアヌはオジーに愛想を尽かし、家を出て行ってしまう。妻の手料理恋しさに、アハーンを利用するオジー。だがともに時間を過ごす中で、アハーンとオジーは徐々に距離を縮めていく。
ダウン症の当事者であるアブリ・ママジがアハーン役で出演。当初は主人公のモデルとなる予定だったが、本作で俳優デビューを飾った。さらにアリフ・ザカーリアがオジーに扮し、ニハリカ・シン、プラビタ・ボルタクール、カイザード・コトワール、シルパ・メフタ、ラジット・カプールも出演。本作が長編映画デビュー作となったニキル・ペールワーニーが監督を務めた。
本作を鑑賞した映画作家の
映画「アハーン」予告編
想田和弘(映画作家)コメント
アハーン役のアブリさんは、普段はカフェの店員さんをされているそうですが、演技がうまいからなのか、元々のお人柄なのか、観ているだけで楽しくなりました。慈愛に満ちた映画です。日本でも公開されるといいなあ。
大脇幸志郎(医師 / 翻訳家)コメント
よくできた作品は、時系列から言ってありえないはずの、つまり未来の出来事を雄弁に説明するように見えることがある。2019年に制作された「アハーン」がコロナの映画にしか見えなくなってしまったのもそうした現象のひとつに数えていいだろう。
潔癖症のオジーは、セリフでこそほとんど語られないが、テレワークを駆使して(でなければこんなにいつも昼間から自宅にいるはずがないので)成功し、子供を持つことはぜいたく消費だと考える、きわめて現代的な人格だ。そうしたイデオロギーがコロナで強まったいま、オジーが不潔で不確定な未来に踏み出していく物語は、主人公であるはずのアハーンの物語よりもむしろ身近で切実なものに感じられる。
もちろん本作の中心はアハーンだ。知的障害者(この字で書きたい)に対する偏見を浮かび上がらせるというわかりやすい役割をはるかに通り越して、人間らしい生活とは何か、現代の我々が見失っているものは何かを鋭く言い当てていくアハーンに我々は心打たれるのだし、それを可能にするだけの魅力あふれる描写と演技の仕事がなされている。オジーはそんなアハーンの役割を支える舞台装置でしかないはずなのだが、いつのまにか枝葉が幹のように見えてしまう、そんな豊かさが本作にはある。言い換えればこうだ。「アハーン」という映画には隅々にまで情熱が脈打っている。
秋元麦踏 / Mugi|生活の医療社 Peoples' Medicine @mugifumi222
ついに、ナタリーにも掲載!!
ありがとうございます!!!!
ダウン症の青年と強迫神経症を持つ中年が邂逅するインド映画「アハーン」支援者募集(予告編あり / コメントあり) https://t.co/lC9auOnAtA