「没後60年 ジャン・コクトー映画祭」に著名人が寄せたコメントが到着した。
「詩人の血」「美女と野獣」の4Kリマスター版と「ブローニュの森の貴婦人たち」「オルフェ」のデジタルリマスター版が上映される本映画祭。文筆家・選曲家の青野賢一は「詩人の血」を「メビウスの輪のような映画である」と紹介する。
美術評論家の海野弘は「オルフェ」について「コクトー芸術の中心ともいえる鏡とオルフェウス(オルフェ)のテーマと、戦後パリの、実存主義とジャズの、ジュリエット・グレコとボリス・ヴィアンのサンジェルマン・デ・プレの現代風俗の両方を楽しむことができる」とコメント。コラージュ作家の合田ノブヨは「美女と野獣」を「一度この映画をみれば、何度でも記憶の断片で極上の夢がみられる」と推薦している。
「没後60年 ジャン・コクトー映画祭」は12月30日より東京・YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次開催。
没後60年 ジャン・コクトー映画祭
2022年12月30日(金)~ 東京都 YEBISU GARDEN CINEMAほか
<上映作品>
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青野賢一 コメント
「詩人の血」に寄せて
メビウスの輪のような映画である。詩人と、詩人の自画像の唇を持った《ミロのヴィーナス》を彷彿させる彫像は、ひとりの詩人の異なる自我の表出であり、表裏。どちらかが表になるとき、もう一方はなくならず裏に存在する。これを詩人と彫像の性別として捉えてもいいだろう。ところが男性性の象徴とでもいうべきピストルや白い雪玉によって詩人あるいは詩人の子ども時代と思しき少年、つまり「男」が死ぬとき、この均衡は破られる。ポエジーが立ち上るのは、まさにその瞬間なのだ。その意味では男性性の象徴のなかでもひときわ大きい工場の煙突が爆発して崩れ落ちる映像が最初と最後にやや捻れたかたちで用いられているのは実に興味深い。
海野弘 コメント
鏡の国のコクトー 「オルフェ」に寄せて
コクトーは映画を夢の世界といった。第二次世界大戦後のパリのサンジェルマン・デ・プレを舞台に、ギリシア神話の詩人オルフェウスの物語がくりひろげられる。映画「オルフェ」では、コクトー芸術の中心ともいえる鏡とオルフェウス(オルフェ)のテーマと、戦後パリの、実存主義とジャズの、ジュリエット・グレコとボリス・ヴィアンのサンジェルマン・デ・プレの現代風俗の両方を楽しむことができる。生と死、男と女、古い世代と新しい世代の境界である鏡を自由に通り抜けていく〈詩人〉の想像力こそ、現代の私たちへの、コクトーの贈物なのだ。ラストの、死の女神(マリア・カザレス)が、詩人オルフェに未来の命を与えて、廃墟の彼方に消えていく幻影が限りなく美しい。
合田ノブヨ コメント
「美女と野獣」に寄せて
昨今の妖精譚や魔法の物語の映画にときめくことが出来ないのは、子供の頃にコクトーの「美女と野獣」を知ってしまったからだろう。この美しさ、薫り高さ。陽の射さない城の一室や森の邪悪な暗闇に、美女のほの白い顔と猫のように端正な野獣、白薔薇の浮かび上がる様は、ペロー童話のドレの挿絵から抜け出て来たようで、ゾクゾクする。怪しの鏡や手袋、生きている彫像に燭台を掲げる奇妙な手たち、ダイヤに変わる涙…。一度この映画をみれば、何度でも記憶の断片で極上の夢がみられる。
余談だが、ロケ地のラレー城には17世紀の少年の亡霊が棲んでいるそうだ。どこかに彼も映り込んで、一緒に魔法を奏でているかもしれない。
詞華集BOT @anthology_bot
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