「シティーハンター」で知られるマンガ家・
本作は、セリフを使わない“サイレントマンガ”をもとにした5つの物語に、北条自身がメガホンを取ったオリジナルストーリー「プロローグ」「エピローグ」を加えたオムニバス。映画はサイレントマンガ同様に全編通してセリフはなく、映像と音楽だけでストーリーが展開していく。松下とディーンは、5つの物語をつなぐ役割を持つ「プロローグ」「エピローグ」に出演。それぞれチェリストのアイカ、ピアニストのタカヤという役柄で、若き音楽家として“音楽で世界を感動させる夢”を追う恋人同士を演じた。
通常の文字台本は用意されておらず、現場は北条自ら描いた絵コンテを指針にワンカットワンカット撮り進めていく。北条は「あくまでガイド」とその役割を語るものの、マンガの1コマを抜き出したかのように細部まで描き込まれた絵コンテ。絵柄はもちろん北条マンガに登場するキャラクターを想起させ、マンガならではのオノマトペや、人物が驚いたときに見せる目が点といった表情も再現されていた。また「エンジェルサイン」では、実写映画の現場では珍しいビデオコンテも制作されたという。
カメラの動きやカット割り、構図もすべてが組み立てられた絵コンテの執筆について、北条は「マンガのネームを描く作業に近い。だから絵コンテを描き上げた段階でもうやることはない。(現場を)見てるだけです」と笑いつつ、実際に“画が動く”映画と決して動き出すことはないマンガの制作過程を比較する。そして「よく言われることですが、マンガを描いてるときも頭の中ではキャラクターが演技をしてるんです。マンガ家はその動きの最適な瞬間を1コマで切り取っています」と言及した。
最初に台本を読んだ印象を、松下は「北条先生の絵だ!と思って(笑)。台本もすべてが『シティーハンター』に見えてくるし、すごく不思議な気持ちでワクワクしました。少し冷静になってから読むと作品の世界観が手に取るようにわかったんです」とコメント。ディーンも「スラスラ一気読みしてしまいました。セリフがなくても文脈がつかめて、行間に何が表現されてるかわかりやすい」と振り返りつつ、「最初にタカヤを見たとき、冴羽リョウがいる!と思いました。僕の世代の男性だったら、冴羽リョウみたいな男になりたいというボーイズドリームをみんな持っていた。こうして北条先生の作品の一部として参加できるのはとても不思議で光栄なこと」と出演の喜びを語った。
この日撮影されていたのは、タカヤがアイカに指輪を渡しプロポーズする「エピローグ」の場面だ。清楚な雰囲気を漂わせる白いセーターを着たアイカと、青色のシャツで爽やかな印象のタカヤ。グランドピアノが中央に置かれたマンションの一室は、間接照明の温かい光に包まれていた。松下は衣装合わせの際、北条から言われた「着たいものを着たらいい。自分のイメージに合うものを選んだらいいから」という言葉が印象に残っているそうで「そこから撮影がもっともっと楽しみになりました」と振り返る。
タカヤが生み出した楽曲「エンジェルサイン」が物語の鍵を握る本作。それぞれミュージシャンの一面もあわせ持つ松下とディーン。本作でも猛特訓の末、吹替なしでチェロとピアノの演奏を披露している。松下は「お互い音楽を愛していて、アイカはタカヤの作った音楽を体に入れて紡ぎ出す。すごく美しい愛の形」と2人の関係性を紹介しながら、「だから意地でも自分で弾きたかった。音楽をやっている身としてそこだけは譲りたくなかった」と熱いまなざし。
一方のディーンは松下の横でピアノを弾くことに多大なプレッシャーを感じていたそうで「どれだけお上手か知ってるから、なんで自分がピアノを弾いてるんだろう?と(笑)。とても練習しがいがありました」と続ける。松下が「最初からバッチリ弾かれてましたよ」と称賛すると、ディーンは「がんばりました」と笑顔で胸を張った。撮影の合間には2人でセッションすることもあり、松下は「やっぱり私たち音楽が好きなんです。楽器が近くにあるとついつい弾いてしまいます」と現場の様子を明かしていた。
「エンジェルサイン」の公開時期やそのほかの物語に関する詳細は続報を待とう。
※冴羽リョウのリョウは、けものへんに「僚」のつくりが正式表記
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北条司の映画作品
リンク
- 「エンジェルサイン」公式サイト
- AngelSignMovie (@AngelSignMovie) | Twitter
- 「エンジェルサイン」ティザー映像
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