カザフスタン出身の監督が小津の影響明かす、「ザ・リバー」で使ったレンズは1本

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第31回東京国際映画祭コンペティション部門に出品された「ザ・リバー」の記者会見が本日10月29日に東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われ、初来日となる監督のエミール・バイガジンが出席した。

エミール・バイガジン

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「ザ・リバー」 (c)Films Boutique

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長編デビュー作「ハーモニー・レッスン」で数々の映画賞を獲得したバイガジンの新作「ザ・リバー」は、主人公に共通する名前を与えた“アスラン3部作”の最終章。カザフスタンの辺境を舞台に、俗世間から子供たちを隔絶しようとする父親と、彼に反発しながら都会的な刺激に翻弄されていく5兄弟の姿が、寓話的に描かれる。東京国際映画祭では10月26日にアジアプレミアが行われた。

会見ではバイガジンの出身地であるカザフスタンのプレスから「観る人を選ぶ難解な作品。どういった観客を想定しているのか」と質問が飛んだ。バイガジンは「観客を国内や海外など、分けて考えたことはありません。それは自分自身の可能性を制限すること。同じように、作家主義にもとづいた映画と商業映画を厳格に分ける必要もないと考えています」と説明。自身の映画作りについては「あらゆる方向で自由でいたいと思っています」と信条を述べた。

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バイガジン曰く、本作では「奇跡」「精神的な進化」をメインテーマに掲げたとのこと。3部作の1作目「ハーモニー・レッスン」と2作目「The Wounded Angel(英題)」に言及しながら「過去作の登場人物も、今作の登場人物たちと一緒に解放させたかった」と制作時の思いを述懐。「過去2作では痛みといった身体的な暴力を描きました。でも本作では現実的な殺人を避け、明るいトーンで映画を作りたかった。緊張感を保ちつつ、それを制限しながら描くことに重きを置きました」と明かした。また映画に影響を与えたフレーズとして「人の心にあるはかりごとは深い井戸の水のようだ」という聖書の箴言を挙げた。

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バイガジンは「ザ・リバー」で監督のほか、脚本、撮影、編集、プロデュースも担当している。撮影時には、監督と撮影の役割を分けないスタイルで制作を行った。「イメージに対する着想には常に想像力を働かせています。それは本能的なもの」とコメント。また、小津安二郎の影響から1本のレンズのみで撮影に臨んだという。「カザフスタンも小さい家が多いので非常に難しかった」とほほえみながら、「この撮影技法は映画のテーマの1つである厳格主義を維持することにも役立ちました」と語った。

第31回東京国際映画祭コンペティション部門の会見レポートはこちらから

リウ・ハオ「詩人」

エドアルド・デ・アンジェリス「堕ちた希望」

ミカエル・アース「アマンダ」

レイフ・ファインズ「ホワイト・クロウ」

マルセリーノ・イスラス・エルナンデス「ヒストリー・レッスン」

ラミン・マタン「シレンズ・コール」

今泉力哉「愛がなんだ」

ガブリエラ・アマラウ・アウメイダ「翳りゆく父」

フルーツ・チャン「三人の夫」

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