ツァイ・ミンリャンの作家性に元黒澤組スクリプターが斬り込む、「計算なの?」

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本日11月27日、ツァイ・ミンリャン監督作「秋日」の上映会とトークイベントが行われ、ツァイ・ミンリャン、リー・カンション、そして黒澤明作品でスクリプターを務めた野上照代が東京・台湾文化センターに集結した。

ツァイ・ミンリャン

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「秋日」

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これは第16回東京フィルメックスの関連イベントとして実施されたもの。約24分の短編「秋日」は、2014年11月にツァイ・ミンリャンがとリー・カンションと来日した際に野上を撮影した作品で、本日が世界初上映となった。ツァイ・ミンリャンは20年にもおよぶ野上との付き合いの中で、2、3年前に突然野上を撮りたくなったと説明し、「この作品は彼女を描いた絵画だと思います」と語る。劇中でメインとなるのは野上と、寺尾次郎ら対談相手の会話。しかしそのシーンはすべて画面が真っ暗で、話し声が聞こえるのみである。野上は完成した作品を観て「びっくりしましたよ! 黒いのばっかりだし、ろくなことしゃべってないじゃない」とまくしたて、また自身の顔のアップも映ることから「これ以外の彼の作品はみんな好き!」と言い放った。

野上照代

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ツァイ・ミンリャンいわく自分を見守ってきてくれた存在だという野上は「彼のよさは客のことを考えず、一切媚びないこと。そして説明しないこと」と言い切る。彼の作風である長回しについて「あれじゃ役者も大変。シャオカン(リー・カンションの愛称)もそうじゃない?」と話を振ると、リー・カンションも「ツァイさんの作品はいつも試練の道。デジタル撮影になったら余計長くなりました」と便乗。それを受け、ツァイ・ミンリャンは「僕は野上さんに会うと批判される。特に長さに関しては。だから『よかった、僕のプロデューサーじゃなくて』って思ったりしてます」と応戦する。

左から野上照代、ツァイ・ミンリャン、リー・カンション。

左から野上照代、ツァイ・ミンリャン、リー・カンション。[拡大]

さらに野上は「正直なところ聞くけど、個性的なのは計算してるんですか? 『まいったか!』みたいに」「『長回しが多い』という特徴を意識するのは、ある意味媚びてるのでは?」とツァイ・ミンリャンの作家性について次々と斬り込んでいく。しかし彼はいずれも否定し、「観客の目がだんだん気にならなくなってきた。つまり僕が映画を作るという行為にリラックスできてきたんだと思います。映画を撮ることが恐くなくなってきました」と清々しい表情に。そして本作の会話シーンについて「雰囲気も画もよかったんですけど、それを画面に出すとドキュメンタリーになってしまうと思って。僕は完全に“映画”の感覚として野上さんを撮ったんです」と言及した。

リー・カンション

リー・カンション[拡大]

劇中にはリー・カンションと野上が並んで座る姿を東宝スタジオの敷地内で撮影したシーンも。ツァイ・ミンリャンは撮影時を振り返って「シャオカンは『ごはんを食べに来ただけなのに、なんで映されなきゃいけないんだ』ってむくれてたよ」と明かしながらも、「僕は僕の作品に彼を登場させたかったから」と出演の理由を明かす。野上を撮影することを「ジャングルの中のライオンを撮りに行ってる気分だった。撮らせてもらえれば、それで満足」と総括するツァイ・ミンリャンに、野上は「大したもんですよ。ツァイさんは個性的で大胆な方だからどこまで行くかわからない。でもそういう人が監督の中に1人いるのはいいことでは?」と賛辞を送った。

第16回東京フィルメックスは11月29日までの開催。なお11月28日から12月4日にかけ、ツァイ・ミンリャンの特集上映が東京・有楽町スバル座で開催される。

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