「今宵も悪夢を」第10回ビジュアル

ホラーを語るリレー連載「今宵も悪夢を」 第10夜 [バックナンバー]

選者 / 野水伊織「テリファー」

腸、“眼窩ゴア”…マニアックな要素を兼ね備えたフェチズムホラー

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ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人にお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。

第10夜は「腸と“眼窩ゴア”が好き」という野水伊織が「テリファー」の魅力を解説。動機不明・純粋悪の白塗りピエロ“アート・ザ・クラウン”が繰り広げる惨劇を、「ハロウィン」のマイケル・マイヤーズも引き合いに出しながら語ってくれた。

/ 野水伊織(コラム)、田尻和花(作品紹介)

「ハロウィン」のマイケルを静とするならば、アート・ザ・クラウンは完全なる動

「テリファー」

「テリファー」

「どんなジャンルのホラーが好きなの?」これはホラー好きなら一度は訊かれたことがある質問ではないだろうか。
「心霊、悪魔、ゴア、スラッシャー……うーん、全部です♡」とハートマーク付きで答える度、私のことをよく知っている人たちが補足する。「腸が好きなんだよね、この人」と。
そう、私は腸が好きだ。某漫画の主人公が腸を首に巻くよりも前から、私は腸マフラーの話を人に熱く語り続けてきたほどに。腸マフラー、腸縄跳びに腸綱引き。腸のバリエーションは実に豊かだ。だって腸には、糞ではなくロマンが詰まっているのだから。
だが、腸と同じくらい興奮するものもある。それが“眼窩ゴア”だ。これは私の造語だが、眼窩(がんか。眼球が収まっている骨の部分)に眼球以外の何かが埋まっていたり、肉が盛り上がって穴の部分が埋まっている描写が好きなのだ。しかしこれはなかなかお目にかかれないレアものでもある。
それでも、そんなニッチでマニアックかもしれない要素を兼ね備えた、素晴らしいフェチズムホラーがこの世にはある。神か。その名を「テリファー」という。

筋書きとしては、ハロウィーンの夜に“アート・ザ・クラウン”という通り名の白塗りクラウン(道化師)が人を殺しまくる、ただそれだけの話である。
薄汚い歯、モノトーンの道化師の衣装、薄笑いを浮かべてはいるが一言も発さない。「ハロウィン」シリーズのマイケル・マイヤーズよろしく、動機不明・純粋悪の殺人鬼だ。
ただ、マイケルを静とするならば、アート・ザ・クラウンは完全なる動。彼のアート=殺しっぷりはその名に恥じない派手さだ。
逆さ吊りの女性を股からじっくり鋸引きして腸を出したり、切り取ったお胸の皮を自分にひっ付けてクネクネ品を作っていい女ぶってみたりと殺りたい放題!
その表情は常にコミカルで、挙動も茶目っ気たっぷり。やってることはとんでもないのに段々可愛く見えてきて、観終わる頃には彼の大ファンになってしまった。

「テリファー」

「テリファー」

そして肝心の“眼窩ゴア”はというと、作品の冒頭から見られるから素晴らしい。訳あって顔がぐちゃぐちゃになってしまった女性が登場するのだが、その眼窩の埋まり具合が最高極まりない……!
右目は、眼球を再現したはずが失敗して目玉焼きのようになってしまっているし、左目は盛り上がった肉で埋まっている。はぁぁ……なんならこのビジュアルをずっと見ていたい。思い出すだけでドキドキするほど私の理想の眼窩ゴアなので、ぜひ一時停止をしつつじっくり堪能してみてほしい。

ちなみに私が「これこそ眼窩ゴアだ!」と思った描写は、この「テリファー」と、ルシオ・ A・ロハス監督の「SENDERO」(かつて「血塗れた道の悪夢」という邦題で配信されていた)でしかまだ出会えていない。もしも「これはどうだ!」というシーンがある作品を見つけたら、私のTwitterまでご一報いただけると幸いだ。

話は変わるが、ハロウィーンにはこれまで様々なホラー映画キャラクターのコスプレをしてきた私だが、今年はそろそろアート・ザ・クラウンに挑戦したい所存である。
どうやら続編の公開も予定されている(日本公開は未定)ということなので、我々も一丸となってアート君を盛り上げていこうではないか。

「テリファー」

「テリファー」

野水伊織(ノミズイオリ)

野水伊織

野水伊織

北海道出身、声優。2009年放送のアニメ「そらのおとしもの」で本格的に声優としてのキャリアをスタートさせ、以降テレビアニメ「デート・ア・ライブ」「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」、ゲーム「艦隊これくしょん-艦これ-」に参加している。現在は配信番組「まろに☆え~るのYouTube LIVE」に出演中。

「テリファー」(2019年製作)

「テリファー」ビジュアル

「テリファー」ビジュアル

ハロウィン・パーティの帰り、ピエロメイクをした男と出会ったタラとドーン。ダイナーでも遭遇したその男は、こちらをじっと見つめてくる。彼女たちが店を出ると、止めておいた車はパンクしていた。タラは姉に電話し迎えに来てもらうことにするも、その裏でピエロ男はダイナーの店員を殺害していて……。
ダミアン・レオーネが監督し、ジェナ・カネル、サマンサ・スカフィディ、デヴィッド・ハワード・ソーントンが出演した。

「テリファー」 配信中

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(c)Dark Age Cinema,LLC

読者の反応

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野水伊織 @nomizuiori

噂をすればなベストタイミング。最ッ高なアート・ザ・クラウン君のフィギュアをお迎えしたので、写真たくさん撮ってインスタちゃんに載せました☺️
https://t.co/rWTOIYwV35

映画ナタリーさんのコラムと併せて何卒。
→今宵も悪夢を 第10夜 「テリファー」
https://t.co/eQqZ9GrKWq
#野水映画 https://t.co/xgZCfjsUCt

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